死ねば死ぬほど最強に?〜それは死ねってことですか?〜

ライオットン

第16話〜出会い〜

 司は寝ることなく街道を歩き続けていた。ゴブリンロードに襲われた森よりも、もっともっと遠くへ。アインにかけられた恩を無駄にしないために。

 あたりが明るくなり始める。朝が来たようだ。どこまで来たのだろうか。街道は一本道ではなく所々で別れている。一晩中街道を歩き続けた司は、今どこにいるのかさえ分からなくなっていた。これなら地図を貰うんだったな。司は心の中で後悔する。

 太陽も高く昇り、時間はちょうど十二時になっていた。そろそろ休憩しよう。街道の端の木に腰掛けリュックから食べ物を取り出す。昨日まで全く食欲が無かったのがウソのように、司は食べ物を口に運んだ。
 半分ぐらい食べたところで、近くの草陰から物音がした。今まで街道を歩いてきてすれ違ったのはほんの数人程度。魔物が出るということが人の行き来を減少させてるようだ。ということは魔物の確率が高い。もしくは国からの追手か。

 司は急いで立ち上がり、持ってきた剣を構える。

「誰だ!」

 司の問いかけに返事はないが、だんだん物音が近づいてくる。剣を握る手に汗が滲み出る。今か今かと集中状態の司の前にそれは現れた。

 チョコンッ

 六十センチほどで一つ目の魔物だった。とてとてと歩く様子からみて、おそらく子供なのだろう。ゆっくりと近づいてくるが、司の置いた食べ物をずっと見つめているだけだ。どうやら、戦闘が目的ではないらしい。食べ物を欲しがっているようだ。司はその様子をみて、書庫で読んだあの本のことを思い出す。

(魔物にも知性がある。人間のように言葉も話す。昔は魔物と人間が理解し合い共存していた)

 司は勇気を振り絞り、魔物との対話を試みる。子供という点も勇気を後押しするのに十分な要因となっていた。

「食べたいのか?」

 木に腰掛け、さっきまで食べていた物を手に取り魔物に見せてみる。

「食べたい!」

 魔物は元気よく返事をし、両手を広げて食べたいアピールをしてくる。ただ外見が違うだけで、まるで人間の子供と同じだ。やっぱりあの本に書いてあったことは正しかった。魔物とも交流ができる。

「じゃあ、あげるよ」

「わーい! ありがと」

 魔物は勢いよくあげた物を食べていく。豪快な食べっぷりに司も驚いた。よほどお腹がすいていたらしく、すぐに食べ終えてしまった。

「おいしかった! ありがと」

 魔物はお礼を言ってさらに司に近づいてくる。距離が距離だけに司も剣を握りしめる。だが、そんなことはお構いなしのようだ。魔物は司の隣によりかかるように腰掛ける。

「人間が怖くないのか?」

 司は疑問に思ったことを質問してみる。

「人間は怖いよ。でもお兄ちゃんは優しいから大丈夫!」

 食べ物の力は偉大らしい。どうやら懐かれたようだ。

「俺が襲ったらどうするつもりだったんだ?」

「泣いておとうちゃんを呼ぶつもりだったよ!」

「名前とかってあるのか? 俺は司って言うんだが」

「テウスって言うんだよ。司お兄ちゃん」

 司とテウスは仲良く談笑を始める。そういえばお父さんって近くにいるのかな? 司が思った瞬間それは現れた。

「テウス何してるんだ!」

 声の方を向くと、二メートルはある巨漢に特徴的な一つ目の魔物がいた。サイクロプス! 司は書庫で見た資料を思い出す。ステータスは平均でC-程度、強い個体はB-にもなる強力な魔物だ。

 司は一瞬で立ち上がり、剣を構える。ステータスが上がった今ならどうにかなるかも。そう思った司の希望は、一瞬で打ち砕かれた。目の前に現れたサイクロプスに反応すらできない。振るわれた拳が司に当たる瞬間、テウスが間に割って入った。

「おとうちゃんこの人いい人だから! 食べ物くれたんだよ!」

「そうなのか! それは失礼した。すまない」

 テウスのお父さんらしきサイクロプスはすぐに謝罪をしてくる。子供の言葉を疑ったりしてない。重度の親バカかな。司が思っていると

「本当に申し訳ない。息子に食べ物をいただいたようで。私はルギスと申します。近くに村があるのでいらしてください。できるかぎりおもてなしさせていただきます」

 急にかしこまった態度になった様子から、礼には礼をといった気高い種族なのだろう。本にもそう書てあった。だがそう簡単に信用はできない。子供ならまだしも、大人の魔物は何を考えているかわからない。司が警戒していろいろと思考を巡らせる。

「心配しないで! みんな優しいから!」

 テウスの一言で、司はついていくことを決心する。ルギスのことを親バカと思ったが、自分も大概だな。司は心の中で笑うのだった。

コメント

  • あ

    違和感しかない

    0
  • メルくん@怠

    すごく物語が面白いです!応援してます!
    あと「食欲が無かった」ではないでしょうか?

    1
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