少年はそれでも戦い続ける

虹ウサギ

2章 青年と魔女.1

「いやー!やめて!!殺さないで!!まだ死にたくな…」

パンッ!

 乾いた銃声が響き渡りその場に先程まで命乞いをしていた女性が崩れ落ちる
 お腹から流れ出た血は地面を真っ赤に染める
流れた血は綺麗に広がり、その血は光を受けキラキラと輝いてみせる、その光景はまるで一輪の真っ赤なバラのようだった

「おい、No.036次の地域に向かえ」

 返り血を浴びて真っ赤になったローブを着た男がいましがた女性を殺害した者へ命令を下す

「また…殺すの…カ?」

 つっかえながら青年は力なき声でこたえる

「あぁそうだな次も魔女だ」

「ナ…ぜ?」

「何だって?」

「殺す…りゆ…シリタ…い」

「そんなことは知らねぇーよ、命令だから殺すそれだけだ、それ以上でも以下でもねぇ」

「……了解」

 No.036と呼ばれる者の見た目は十代半ばの青年の姿をしていた、目を覆うほど長い黒の前髪、だがその奥で覗く瞳には光はなかった、生気が感じ取れない
 No.036は人造人間ホモンクルスだった、彼が所属する部隊は第五研究部隊、またの名を〈不死の部隊〉その理由は明確だった
 その部隊の戦闘員は皆人造人間だった、死亡したとしても新たな代わりの人造人間が作り出される、それが不死の部隊の由来だった

 今彼らに課せられた命令は魔女の抹殺、魔女とはある種族の総称である
 その種族は古来より存在する『赤の魔族』と呼ばれる者たちだった、赤の魔族の子供は女しか生まれない、そのため周りからは“魔女”と呼ばれている、その者たちはある特徴を持つそれは異常なほど魔法適正が高いというところだ
 さらにその魔女たちほとんどが古代魔法を使役する、古代魔法とは失われた魔術
 遥か昔その力は善のために使われ様々な恩恵をもたらしたが、ひとたび悪用されれば抗うすべはない
 古代魔法を善のためだけに使っていた魔女たちは嘆き、当時古代魔法を悪用していたすべての者を殺し、自らも古代魔法をうちの奥に封印した

 だがその古代魔法は子孫たちの体内へと受け継がれた、その事に気づいた帝国はのこる魔女の子孫全てを捕らえ実験をしだした
 もちろん魔女たちは抵抗したが古代魔法を使えない彼女らではただの魔法適正の高い者と変わらなかった、その結果数の勝る帝国の圧勝だった

 多くの魔女が捕らえられ無慈悲な非人道的な実験が日夜続いた、それでも抵抗を続ける魔女の集落を殲滅及び研究サンプル捕獲が第五部隊の仕事だった



「次はあの村だ」

 オールバックの髪型に黒いマントを羽織った中年の男性が命令する

「全てを焼き尽くせ行け!」

「「「了解!」」」

 命令すると木陰に潜んでいた48人の人造人間たちが一斉に行動を開始する
 一人を除いて

「おい!どうした!No.036早く行け!命令だ!」

「なぜ…コロス?」

  No.036は疑問を抱いていた、なぜ自分は彼女らを殺さなくてはならないのかと
 この現象はありえないことだった、本来人造人間はただ命令をこなすだけの操り人形
 そのはずがNo.036には自我が芽生えていた
疑問を持ち、それを追求するその行為は限りなく人間に近い証拠だった
 それが故に製作者にとっては不快以外の感情はなかった
 操り人形が自我を持ち産みの親である自分に逆らうその行為は腹立たしい以外にありえない

「おい、No.036」

「何二カ…?」

「お前はデリートだ」

「どうユウコ…ト?」

バン!バン!バン!

「グッフッ」

 No.036を三発の銃弾が撃ち抜く、膝、横腹そして左肩、衝撃を受けよろめき立つ

「ナ…ぜ?」

「まだわからねぇのか?お前はいらない私が作り出してやったのに逆らいやがって、くそ失敗だったな少し感情を加えれば戦闘に変化があると思ったが、言語障害だけではなくこんな感情を持つとは」

「どうし…テ」

 No.036はよろけながらそのまま川へと落ちた
 No.036が浮上してくる気配がないと確認すると木に持たれながら愚痴をこぼす

「くそ!くそ!なぜうまくいかん!私の緑系統上級戦闘人形創造魔法は完璧だかこれではあいつに追い付けん!あのうざったらしい”ミカゲ“には」

「早く早くサンプルを集めなければ!!」

 燃え盛り悲鳴がこだまする集落の前でぶつぶつと三ツ島はつぶやいていた











第五強襲部隊を第五研究部隊に変更いたしましたご了承を
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