神は思った。人類の7割をアホにして、楽しく見守ろうと

4.1 1.2 4.2

俺たちは思った。嘘は良くないと

 
 今日はエイプリルフール。どんな嘘もこの魔法の言葉を唱えれば許される日。となれば嘘をつく大義名分が出来たこの日に嘘をつかないなんて勿体無い。

 じゃあどんな嘘をつこう。『私、今日転校するの』じゃ  ベタすぎる。そもそも、この前転校してきたばかりでまた転校するなんて、直ぐに嘘だとバレる。

「うーーーん」

 私は喉を鳴らしながら悩む。どのな嘘をついたらみんなに衝撃を与えられ、驚かせる事が出来るか。一頻り悩んだあと、ある面白い事が頭をよぎる

「これなら」と

 独り言を呟いた西園寺  凛花は不気味な笑みを浮かべながら教室へと足を運んだ。

 
 
 

 今日はエイプリルフールとあって、仲間内で軽い嘘をつきあっている。「私、彼氏出来たの!」て言う定番なものから、「俺、実は火星から来た宇宙人なんだ」と言う、すぐに嘘だと分かる嘘が教室中を飛び交っている。

 それはもちろん、工藤  蓮の周囲の人もおなじであった。

「工藤!!  ついに俺にも彼女できた!!」
「へぇー  相原にもいよいよ春が来たか、おめでとう」

 工藤自身も相原が嘘をついているのはわかってる。仮に俺が『今日、エイプリルフールだから嘘ついてんだろ』と言ったとする。すると相原はこう返してくるはずだ。

『今日、4月2日だけど?』と

 結局、この使い古された回避ネタを言われるのがオチであると工藤は考える。ならば、敢えてめんどくさい事に首を突っ込まず、さっきのような感じで流すの1番楽なやり方である。

 しかし相原は騙されてやってる事に気づかず、笑みを浮かべながら工藤にこう言い放った

「ぷっぷーー   今日はエイプリルフールでしたー!!  工藤やつ引っかかってやんの!」

 まったく、俺が騙されてやっているのにアホなやつだ。面倒に巻き込まれないために騙されてるのに、これは これで なにか込み上げてくるものがある。少し反撃するか

「そうか、嘘だったのか。相原に彼女が出来たって言うのは。まあ、そうだよな。お前に彼女は出来ないよな。でも虚しいよな、4月1日エイプリルフール限定の彼女って。てか、自分で言ってて心痛くならないの?  辛くならないの?  それとも新手の自虐ネタなの?  お前の今の心情を俺にもわかるように説明してくれ」

 どうだ、俺の弄りスキルの完成度は。日々 小早川その他に弄られ続ければ自ずとスキルレベルが上がるのだ。

 工藤が言い放ったこの言葉に、相原はなすすべなしと言った感じである。でも引き下がろうとはせず、負け犬のように工藤にこう言うのだ

「お、お、俺だって、作ろうと思えば彼女の1人や2人ちょちょいのちょいだよ!!  このデコッパゲ!  童○!  」

 このチンピラの捨て台詞のように自分の席へと戻る相原をみて、工藤は鼻得意げにならす。その顔は''参ったか!''と言わんばかりに強気な顔だ。

 しかし、この一連の出来事を見ていた小早川はとても不思議そうな顔をしながら、工藤にこう問いかける。

「蓮くんって、M属性とS属性どっちなんですか?」と

 そもそも小早川は大きな勘違いをしている。なんども言っているが俺は一般ピーポーであって、そんな属性付いていない。仮についていたとしてもハゲ属性くらいだ。

 俺はいつものように「ノーマルだと」伝えるも、今回はなかなか食い下がろうとせず、しつこく食いついてくる。

「いやいや、今のは紛れもなくSですよ。本当どの属性かわからないなどですね」
「だからノーマルだって」

「それにさっきのは、なかなかレベルの高い攻めでしたよ」
「攻めとか言うな」

「あれは素人にはレベルが高すぎますね。特に最期の『お前の今の心情を俺にもわかるように説明してくれ』って言うのは西園寺さんレベル人に使う攻め方です」

 なるほど。俺としては軽く弄ったつもりだったが………そうか、さっきのはやりすぎたのか。相原には少し悪い事をしてしまった。あとでさりげなく謝っておこう。

 こうして、この件は一旦落ち着き、ふと時計へと目を向けると時計の針は8時前を指していた。と  なれば、そろそろ来る頃だろう。

 そして案の定、茶がかった髪を靡かせながらは西園寺  凛花は教室に入って来た。そして軽く皆に挨拶しながから自分の席へと向かい座り俺と小早川に挨拶する。

「師匠、優衣様、おはようございます」

「おはよう」
「おはようございます。ところで、聞きましたか?  蓮くんに彼女が出来た事」
「………えっ………」

 唐突に言われたこの言葉に西園寺は固まり、その場に停止する。もちろん俺に彼女が出来たなんて、残念ながら嘘である。しかし凛花は本気で俺に彼女が出来たと信じ込んでいるようで、未だに固まったままである。

 そんな凛花をこのまま放置してたら永遠に固まってそうなので、凛花の止まった時間を動かす魔法を俺は唱える。

「凛花さーん、今日はエイプリルフール。小早川の言った事は嘘ですよー」

 それを伝えると凛花はみるみる涙が溢れ泣き出し、俺に突進したと思えば抱きつきこう言うのだ。

「師匠が………ほかの女の子と……付き合うのは、嫌ですぅ〜〜。それに…それに…」

 まさか、泣くほど俺を思っているとは………こんな おおごとになるとは俺どころか小早川ですら予想していなかったであろう。しかし小早川は俺がアタフタしてる様子を見て楽しんでいる。それにクラスの人達からの視線が気になり始める。

 俺として女子に抱きつかれた、経験をした事ないから、どうすればいいかわからずにいた。アニメとかでは抱きついてくる子をそっと覆うように抱き返したりするが、俺にはそんなレベルの高い事は不可能だ。現在俺は両手を上げたまま、先ほどの凛花同様  固まっている。こんな同様しまくってる俺には出来ない。

 じゃあ、頭を撫でて凛花を落ち着かせるのが1番早くこの状況を打破出るのではないか。これなら妹の千沙子にも昔していたから、抵抗があまりない。

 工藤は上がっていた両手を静かに下ろし、右手を西園寺の頭上へと手が運び、頭を撫でようとした時

「……師匠が私以外の女の子で○貞を捨てるなんていやですぅーー!!」

 この言葉が西園寺の口から発せられた瞬間、頭を撫でようとしていた右手は平行から縦に切り替わり西園寺の頭をチョップする。

「師匠! 何するんですか! 」
「凛花こそ、なに言ってんだよ!  あんな事言ったら俺が童○だってバレるだろう!」

 今更感はあるがああ言われるのは癪に触るので反論してみてが、それでも恥ずかしいものがある。

 そんな俺とは対照的に凛花は特に動揺している様子はなく、寧ろ不敵な笑みを浮かべている。そして凛花はその笑みを浮かべたたままこう呟くのだ。

「大丈夫ですよ。今日はエイプリルフールですから………」
「えっ!?……どうゆうーー」

「オッエッ!!」

 質問の答えが返ってくる前に急にえずき始め口を押さえるのだった。

「凛花、大丈夫か?」
「えぇ、ちょっとつわりが……」

 ??……つわり? つわりとはあれか妊娠初期に現れる症状のことか?  なぜ、凛花にそんな症状が?  いや、これは嘘だ。その証拠にえずく前にエイプリルフールとボソッと言っていた。それならこの妊娠疑惑は嘘で、俺を困らせようとしているのだろう。

 ならば嘘には嘘を。凛花のついた嘘を使わせてもらうぞ。そして小早川、こんな事になったのは小早川にも原因があるからな。小早川もついでに巻き込むか。

「この前、安全日だから大丈夫って言ったじゃないか。だから付けなかったのに」
「……ごめん」

 凛花よ。今日はノリがいいな。これなら小早川を騙せそうだ。このまま押し切ってしまえ

「取り敢えず、保健室行こう。立てるか?」
「うん、大丈夫。蓮くん  ありがとう」

 ここで敢えて、いつのも''師匠''ではなく名前呼びにするとは。これなら付き合ってる風を装うことができる。ナイスだ凛花

 そして2人は肩を取りながら、教室を後にした。

 
 

お手洗いを済ませ、教室に戻ろうとすると、教室から出てくる、工藤と西園寺の姿が津々井の目に入った。その光景は不思議なもので、西園寺が工藤に寄りかかるように肩を組み歩いていたのだ。

津々井は『2人は付き合い始めたのかな?』なんて呑気な事を考えながら教室に戻ると、ただ呆然と一点を見てる小早川が目に入る

「優衣っち、どうしたの? ぼーとして。それに2人も教室から出て行っちゃったし」
「に………」

「に?」
「………蓮くんが西園寺さんを妊娠させたみたい………」

「蓮ちゃんが凛ちゃんを妊娠させた!!!」

 津々井が大声で復唱すると、クラス中の人の時間が止まった

 
 

「いや〜  まさか師匠がここまでノリノリだと思いませんでしたよ。言い出しっぺの私ですらびっくりしました!!」
「いやいや、それは俺も同じだよ。凛花の名演技に小早川もまんざらではない様子だったぞ」

「私たち、いいコンビですね!」

 俺たち2人は教室を出て少し歩いたところで、互いの起点の効いた言い方やとっさに取った判断の素晴らしいを語りあっていた。

 まあ、凛花のつわりも嘘でよかった安心していた。これでほんとだったらシャレにならないからな。

 こんな感じで一通りお互いを称え終えた頃。朝のHRホームルームの時間のため教室に戻る事に、そして小早川にはすぐに嘘だと謝ろうと2人で決め教室へ向かった。

 その道中。2人は小早川に嘘だと言ったらどんな顔をするか、笑いながら教室に向かい扉を開けた瞬間。俺たち2人を見た教室中の人間が、俺たち2人に一気に視線を向ける。凛花もこれには焦り小さな悲鳴をあげる。

 俺たちはそんな視線に耐えながら泥棒のように足音を立てずに自分たちの席へと向かった。

 そして俺たちが座ってもなお、2人を視線は止まず、まだHRが始まる前なのに教室の中は静かで、廊下から聞こえる他クラスの声しか耳に入ってこない

 流石にこの異常事態に耐えかねて、俺は前の席に座っている小早川に聞いてみる事にした。

「あの〜  小早川さん?  この状況について教えて頂けると嬉しいのですが………」
「………………」

 なにも答えず、只々俺を睨むだけであった。俺と凛花の2人に向けられる殺気混じりの視線に嫌な汗をかきながら、HRが始まるのをただ待つのだった。

 
 
 

 さぁ楽しいお昼ご飯の時間!!………と  言う訳にはいかない状態だ。朝のあれ以来、だれも口をきいてくれず、重い空気が漂うだけで、とても居心地が良い空間とは言えなかった。

それで各時間の10分休憩に、この教室の雰囲気に耐えかねて教室から出てみたものの、廊下ですれ違う見ず知らずの生徒からも嫌な視線を感じ、結局教室に戻るのだった。

 そして今はお昼。いつもなら小早川、相原津々井、凛花、俺の5人でお昼ご飯を食べるのだが、俺と凛花の周りに誰一人としていない。こんな状況にどうしたのものかと悩んでいると、俺のスマホにメッセージが届いた。宛先は凛花だ

『師匠!!  この状況なんなんですか?  私たち虐められてるのですか?』
『いや、俺にも全くわからない。そもそもだれも口をきいてくれない』

『ですよね。………まさか、優衣さまに言ったあの嘘が教室に広まった、って事はないでしょうか?』
『それだ!!  寧ろそれしか考えられない!  早く謝ろう』

『わかりました!』

 俺たちは謝る事を決意し、スマホの画面を切った。そして2人同時に立ち、謝ろうとした時

 《ピン、ポン、パン、ポーン》

『連絡します。2ーB組工藤  蓮くん。2ーB組西園寺  凛花さん。至急職員室に来て下さい。繰り返し連絡します。ーー』

 この放送が終わると、またもあの嫌な視線を向けら、俺と凛花はダッシュで職員室に向かった。

 そして、恐る恐る職員室の扉をノックし職員室の扉をあける。そしてノックした相手が先ほど放送で呼んだ2人だと分かると教室同様、嫌な視線が俺たちを襲う。

「君達が工藤くんと、西園寺さんだね。奥の部屋に来てもらおうか」

「はい。失礼します」
「失礼します」

 そして奥の部屋に案内され、先生に単刀直入に聞かれたのが、凛花が本当に妊娠しているのかだった。俺たち2人は事の成り行きを話し、なんと誤解を解いてもらった。

 しかし、この事は既に全校生徒に知れ渡っている事でエイプリルフールについた2人の嘘の域を超えているらしく、反省文を書くことになり、その反省文を校内掲示板に貼る事で誤解を解いていくようだ。もちろん5時間目開始時に、各クラスの教科担任に俺たちの事は嘘だと伝えられる事になった。

 そして俺たち2人は罰として、5、6時間目の授業を欠席し反省文を書く事になった。

 
 
 

 反省文を書き終え学校から出ると、既に陽はしずまりかけていた。

「師匠、ごめんなさい。私があんな事言ったばっかりに………」
「俺だって、悪ふざけが過ぎたよ。寧ろ俺が流しとけばここまで大ごとにならなかった事だし」

「 それでも……私が言わなければ……」

 珍しく凛花が落ち込み、下を向いている。

「はぁー、これはどっちか1人だけが悪いわけじゃなくて、俺ら2人が悪いだよ。だから考えすぎるな!」

 そう凛花をはげますと、クスッと笑い前を向き歩き始めた。

「じゃあ、はじめての共同作業ですね!!」
「なぜに、そうなる」

「それとも、ベットの上の共同作業の方がいいですか?」
「こりないな」

「えへへへ、また一緒におこられましょうね!」
「怒られる前提かよ」

 なんとか丸く収まった、エイプリルフールに起きた妊娠事件。2人は今日4月1日の事は忘れる事はないだろ。そして2人の心にはしっかり刻まれるのだ。

 嘘は良くないのだと

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