金木犀

貧弱な女子大生

1.

 

 人の脳、心臓、細胞、見えることのない感情や思考それは不思議なものだ。漫画やアニメ、イラストでもあるキャラクターの頭上などに登場する口に出さない言葉。人には聞こえない。各々、自分の中で潜めている(隠している)本心。これほど不思議なものはあるだろうか。

 私は、私の中の自分が話す時間が大嫌いだ。

 私は、私の中の自分が私が普段しない口調で私の事を分かっているような口ぶりで話しているのが大嫌いだ。そして、それを創り出しているのが、その大嫌いだと主張する私であるということも気味が悪い。友は言った。
「何もすることのない日、暇な日に何もせずぼーっとしている時間がとても好きだ」と。本当に気味が悪い。
 私は分からない。何も考えない時間が1秒でもあると、すかさず私の中の私が喋り出すのだ。その時間を好きだ?笑わせるな。少しでもそんな時間を与えたくない。





 「ほら!小夜起きてるの?お母さん先に仕事行くから家出るわよ!スーツ出しといたから後は大丈夫ねー!」

今、何時?春休みなんだからもう少し寝かせて……え?スーツ?待って!もしかして!
急いでベッドから起き上がり、横に置いていたスマホを見る。

「え~!!!!」
「何よ!玄関まで行ってたのに大きな声出して!ほら!やっぱり起きてなかったんでしょう!早く着替えて行くのよ!大学生になったんだから、入学式は来なくていいって自分で言ったんでしょ?じゃあね!」

「ん、分かったー。いってらっしゃい!」

本当に竜巻のような人だ。母は、昔から声も大きければ喋るのも早い。とてもテキパキとしていて、何故あの母からマイペースな私が産まれたのか本当に今世紀最大の謎だ。
 とにかく急がないと……あ、でも、後10分寝てもいける気がする。いや、いつもなら寝るけど、今日は今日だけは遅刻できない。急ごう。
バタバタと用意済ませて、電車に飛び乗る。乗り換えなしの15分。大学は家から近いのと私の学力にだけ合わせて決めた。これを学びたい!なんて考えるほど何か1つに、のめり込めていなかった。

♪ プシュー

大学まで走って5分……いける!扉が開くと共に飛び出した。

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