不器用プラトニックラブ

風吹雪華

22話 貴方に伝えたい

そして当日-

この日がやって来た。

緊張するなぁ。

「はるちゃん」

「穂架…」

「…頑張って。」

「(…有難う。)」

穂架は直ぐに行ってしまったけど、内心では応援してくれてたんだ。

「琴嶺さーん、もう行って下さーい。」
              
「はい。」



体育館-

「では始めに、審査の説明をします。
  審査員は校長先生、教頭先生、学年の先生となります。
  評価は、5段階で決められます。
  以上、生徒会からでした。」

5段階か…結構きついなぁ。

まぁ、頑張るしかないか。

最初って、比羅匡君だったよね?

「では最初に、比羅匡綺騾君で、『未来の自分』です。」

「僕は、将来…」

結構喋れてるなぁ。

やっぱり慣れてるからだね。

次は祇鴨さん。

「私は、実家でやっている店を継ぎたいと思っています。…」

へぇ、自営業をやってるんだ。

ここでは有名なんだ。

あ、笛蕗君だ。

「ぼ、僕は、えっと…」

これはダメだね。

緊張で噛み噛みだし、もじもじしてる。

「私は、両親が作り上げてきた…」

円風さんって、意外にはきはきと喋るんだなぁ。

見た目はギャルっぽく見えるけど、実は普通にしっかりしている人なんじゃ…

「琴嶺さん、次だよ。」

「あ、有難う、円風さん。」

「あたしね、あんた見てると、羽瀬北を思い出すの。」

「え、何で?」
  
「あんた達って、似た者同士じゃん?
  だから、放っとけないの。
   …噂で聞いたけど、羽瀬北、まだ来てないんでしょ?」

「うん…」
  
「…あたし、他のことを目指しているの。
 表では、あんな風にいい子ちゃん振ってるけど、ホントは、自分で決めたい。
 誰かに指図されたくない、未来は自分で決めるものだから。
 あんたも、自分で決めた夢、思いっ切り羽瀬北に伝えなさい。
 ね?」

あぁ、円風さんは、私の気持ち分かってるんだ。

「うん、頑張って伝えるよ。」

「最後に、琴嶺永さんで、『貴方に伝えたい』です。」

「皆さんは、大切な宝物はありますか?
  沢山あったり、無かったり、人それぞれです。
  今年の夏休みに、衝撃的な出来事がありました。
   …私の大切な人が、病気を抱えてしまったのです。
  誰にも治せない、一生眠ったままの。
  彼はとても明るく、不器用な性格で、私と同じ部活に所属しています。
  そんな彼が、突然部活に来なくなったのです。
  皆で様子を見に行きました。
  だけど、何も返事がない状態で、引き篭っていたのです。
  ある時、私は彼の家に行き、部屋に入りました。
  そこには、痩せ細った彼が倒れていたのです。
  急いで病院に連れて行きました。
  担当の先生が言うには、手術をするには脳を移植しなければならない、ずっと夢を見ている状態だと言っていました。
  この前見舞いに行った時、先生が『大切な宝物を失った夢を見ていたよ。』と言っていました。
  彼が夢を見ることで、Dream Of Sleep 通称DOSという装置を付けると、容態が分かると言っていました。
  しかし、DOSは発達していません!
  何も進歩も遂げていません!
  私は、彼を救いたい!
  生きてほしい!
  だから私の夢は、先端技術開発者になりたいです!
  私が作った先端技術を世に出し、病院の手術で使用することで、難病の患者が少しでも寿命が伸びると思っています。
  この言葉は、皆さんに伝えているのではありません。
  羽瀬北結生に伝えています。
   …ご清聴有難うございました。」

皆唖然としている。

そりゃあそうだよ。

はぁ、馬鹿なことをしたな…。

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