選ばれし100年の最弱剣士~100年前まで最強でしたが今や最弱採取係です~
第23話 信じる者は救われる?
通信が切れて、クリシュタルスには疑問を浮かべるレイの顔が反射したが、彼女はすぐに表情を引き締めて振り返った。
「なんか、結構急ぎの用みたいだし、とりあえず行ってみよう。」
「まぁ、そうだな。イールがあんなに苛立ってるのも久しぶりに見たし。」
そんな双子の会話を聞き、エイナは苦笑いを浮かべる。
「えと、私も行くんですか?」
「そう。きっと役に立てる。」
珍しく表情を曇らせたユキが、ライをどけて立ち上がった。
彼女は賢い。イールの様子から、様々な可能性を考えているのだろう。
そこへ今の声を聞いたハルが、自室からリビングへと入ってきた。
「どうしました?って、あれ?イールさんが帰って来たのかと思ったのですが…」
「色々あってね。」
手短にレイが説明した。
「フラートさん。多分すぐにレイが来るから、それまでなんとか頑張ってくれ。」
ギルドの沈黙など目もくれず、処置室を覗いたイールの表情は極めて冷静だった。
ただ、何かを覚悟した目をしていた。
「ああ、お前はどうする?」
「今から13層に向かう。他の奴らも合流する予定だ。だから君、教えて欲しい。」
そう言ってイールは女を連れてきた男に視線を移した。
「モンスターはどんな技を使った?」
「えっと、たしか暗闇の鋭爪みたいな技だ。」
そこで1つ引っ掛かる。
女の出血量を見て、ブレスを受けたのではないのは分かっていた。
しかし、まさかでかいムルットやらが鋭い爪や牙を持っているとは思わなかったからだ。
「なるほど。そのモンスターがいつ13層に現れたか知っているか?」
男が狐につままれたような顔をする。質問の意図が汲み取れない様子だ。
だが、イールの真剣な表情を見て男は口を開く。
「多分、5日くらい前から噂があった。」
その答えに、イールは1つの可能性を見出だし、絶句した。
そのまま数秒、彼の脳内は『まさか』という言葉で埋め尽くされていた。
「フラートさん、行ってくる!」
イールは額に滲んだ汗を拭い、踵を返して走り出した。
ギルドを出て真っ直ぐダンジョンの方へ向かう。次なる犠牲者が出る前に、一刻も早く辿り着きたかった。
途中で嫌な視線を向けられたが、いちいち反応している暇もなかった。
ダンジョンの前に着くと、反対側からちょうど四人が走ってきているのが見えた。
イールは自分の位置を知らせるため、大きく手を振る。
それに気付き、四人は真っ直ぐ走ってきた。
一通りの説明を終え、全員が状況を把握したのを確認すると、イールは珍しく指揮を執って入り口へ向かった。
13層には一見普段と変わらない風景が広がっていた。
だが、よく考えればたしかに違和感もあった。
「モンスターがやけに少ないなぁ。」
その違和感を口にしたのはライだった。
普通ならフロアに入った途端に姿を現すモンスターが、今回は一匹もいなかったのだ。
「じゃあ、言った通りライは俺と一緒にここで捜索。ハルとエイナは13層に人を入れないように見張りを。ユキは隠し部屋の落とし穴を塞いでほしい。」
イールが考えていた作戦を伝えると、四人は頷いて自分の持ち場に向かった。
「ねぇ、イール。なんであんたまで来たの?アタシ一人で十分なのに。」
イールの先を行くライが、髪を縛りながら振り向いた。
しかしイールは答える前に、彼女に前へ向くよう促す。
彼女の前には既に黒い影が迫っていたからだ。
「さっきはみんなが混乱するかもしれなかったから言わなかったんだが」
徐々にその影は近付いてくる。
そしてライの目が、その鋭い爪をとらえた。
彼女は髪を縛り終え、剣の柄に手をやる。
「このフロア、普通は爪に闇属性をもったアルマジラが生息してるだろ。だからムルットがそれを食べたなら」
一歩、また一歩と接近してきた影は、遂にその全貌を露にした。
全身真っ黒で4mほどのそれは、四足歩行で移動していた。
鋭い爪、牙、赤く光った目。
とてもムルットとは思えないものが、二人の前に現れたのだ。
「ご覧の通り、モンスターは進化する可能性がある。」
ライは思わず息を呑んだ。
そして目の前のモンスターを見て、それが事実だと確信した。
「気をつけろ。」
「うん、分かってる!」
ライが腰の剣を勢いよく抜き、剣先を向けると、モンスターは咆哮した。
これから始まる戦いのゴングと言わんばかりに。
次回は久しぶりに戦闘シーンがあります(多分)!
描写に自信はありませんが頑張りますので、是非ご覧下さい。
「なんか、結構急ぎの用みたいだし、とりあえず行ってみよう。」
「まぁ、そうだな。イールがあんなに苛立ってるのも久しぶりに見たし。」
そんな双子の会話を聞き、エイナは苦笑いを浮かべる。
「えと、私も行くんですか?」
「そう。きっと役に立てる。」
珍しく表情を曇らせたユキが、ライをどけて立ち上がった。
彼女は賢い。イールの様子から、様々な可能性を考えているのだろう。
そこへ今の声を聞いたハルが、自室からリビングへと入ってきた。
「どうしました?って、あれ?イールさんが帰って来たのかと思ったのですが…」
「色々あってね。」
手短にレイが説明した。
「フラートさん。多分すぐにレイが来るから、それまでなんとか頑張ってくれ。」
ギルドの沈黙など目もくれず、処置室を覗いたイールの表情は極めて冷静だった。
ただ、何かを覚悟した目をしていた。
「ああ、お前はどうする?」
「今から13層に向かう。他の奴らも合流する予定だ。だから君、教えて欲しい。」
そう言ってイールは女を連れてきた男に視線を移した。
「モンスターはどんな技を使った?」
「えっと、たしか暗闇の鋭爪みたいな技だ。」
そこで1つ引っ掛かる。
女の出血量を見て、ブレスを受けたのではないのは分かっていた。
しかし、まさかでかいムルットやらが鋭い爪や牙を持っているとは思わなかったからだ。
「なるほど。そのモンスターがいつ13層に現れたか知っているか?」
男が狐につままれたような顔をする。質問の意図が汲み取れない様子だ。
だが、イールの真剣な表情を見て男は口を開く。
「多分、5日くらい前から噂があった。」
その答えに、イールは1つの可能性を見出だし、絶句した。
そのまま数秒、彼の脳内は『まさか』という言葉で埋め尽くされていた。
「フラートさん、行ってくる!」
イールは額に滲んだ汗を拭い、踵を返して走り出した。
ギルドを出て真っ直ぐダンジョンの方へ向かう。次なる犠牲者が出る前に、一刻も早く辿り着きたかった。
途中で嫌な視線を向けられたが、いちいち反応している暇もなかった。
ダンジョンの前に着くと、反対側からちょうど四人が走ってきているのが見えた。
イールは自分の位置を知らせるため、大きく手を振る。
それに気付き、四人は真っ直ぐ走ってきた。
一通りの説明を終え、全員が状況を把握したのを確認すると、イールは珍しく指揮を執って入り口へ向かった。
13層には一見普段と変わらない風景が広がっていた。
だが、よく考えればたしかに違和感もあった。
「モンスターがやけに少ないなぁ。」
その違和感を口にしたのはライだった。
普通ならフロアに入った途端に姿を現すモンスターが、今回は一匹もいなかったのだ。
「じゃあ、言った通りライは俺と一緒にここで捜索。ハルとエイナは13層に人を入れないように見張りを。ユキは隠し部屋の落とし穴を塞いでほしい。」
イールが考えていた作戦を伝えると、四人は頷いて自分の持ち場に向かった。
「ねぇ、イール。なんであんたまで来たの?アタシ一人で十分なのに。」
イールの先を行くライが、髪を縛りながら振り向いた。
しかしイールは答える前に、彼女に前へ向くよう促す。
彼女の前には既に黒い影が迫っていたからだ。
「さっきはみんなが混乱するかもしれなかったから言わなかったんだが」
徐々にその影は近付いてくる。
そしてライの目が、その鋭い爪をとらえた。
彼女は髪を縛り終え、剣の柄に手をやる。
「このフロア、普通は爪に闇属性をもったアルマジラが生息してるだろ。だからムルットがそれを食べたなら」
一歩、また一歩と接近してきた影は、遂にその全貌を露にした。
全身真っ黒で4mほどのそれは、四足歩行で移動していた。
鋭い爪、牙、赤く光った目。
とてもムルットとは思えないものが、二人の前に現れたのだ。
「ご覧の通り、モンスターは進化する可能性がある。」
ライは思わず息を呑んだ。
そして目の前のモンスターを見て、それが事実だと確信した。
「気をつけろ。」
「うん、分かってる!」
ライが腰の剣を勢いよく抜き、剣先を向けると、モンスターは咆哮した。
これから始まる戦いのゴングと言わんばかりに。
次回は久しぶりに戦闘シーンがあります(多分)!
描写に自信はありませんが頑張りますので、是非ご覧下さい。
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