選ばれし100年の最弱剣士~100年前まで最強でしたが今や最弱採取係です~
第18話 確信はまだまだ先に。
ゲートから手を引き抜いた一人のエルフは、深い溜め息とともに肩を落とした。
「完了だ。ほれ、早く通れ。」
表情から、早く自分の家に帰りたいということが分かりやすく伝わってくる。
それほど仕事が嫌いであるようだ。
「そうイライラするでない。お主のミスじゃろう、ユーリ。」
そう言われると、緑の髪のエルフは何かを言いかけたが、すぐに口を閉じて再び溜め息をついた。弁解を諦めたのだろう。
アスフィはイール達の方を向き、腕を組んで笑った。
「またいつでも来ると良い。エイナは難しいじゃろうが。」
その言葉に、エイナは苦笑いを浮かべたが、イールは大きく頷き柔らかく微笑む。
「ああ。落ち着いたらまたな。」
「ではイールさん、行きましょう。イギアの皆さんも待っています。」
ハルは真っ先にゲートへ向かい、振り返って一礼した後、ゲートに踏み出した。
続いてライ、ユキ、レイ、エイナの順にゲートへ入っていった。
「イールさん。今度来たときも、また昔の師匠の話してくださいね。」
満面の笑みでヴィアナがイールにねだったが、その後ろではアスフィが鬼の形相を浮かべていた。
「お主……何を話した…?」
気のせいだろうか、彼女の背後に暗いオーラが見える。
それに気付くと、ヴィアナはイールに表情で助けを請うたが、
「い、いやぁ、色々だよ、色々。なあヴィアナ?んじゃ、俺行くわ。」
逃げるようにイールはゲートへ潜った。
「あ!イールさん!待ってえええ!」
ヴィアナは急いでイールを追ったが追い付かず、遂にはゲートの前で盛大に転んだ。
「いってぇ。はぁ…。師匠、これでいいですか?」
起き上がってズボンに付いた土を払いながら、呆れたような声でヴィアナが問う。
アスフィも先程のような表情は浮かべておらず、口角が上がっている。
「上出来じゃ。ワシも確認したくてウズウズしていたからのぉ。」
そして真剣な表情になり、ユーリの方に目を向ける。
「決まりじゃな、ユーリ。あの子は普通の人間ではない。」
ユーリもアスフィの方へ顔を向けた。
「ああ、やはりミスなどではなかった。」
「どうするんですか、師匠?」
弟子に問われた師匠は、少々考え込む。
「ややこしくなりそうじゃな…。」
その小さな焦りに反応する声はなく、三人の髪を揺らす風と共に沈黙がやってきた。
その間三人は、何も変えられていないゲートを凝視していた。
「やっぱりこの壁、癖になるよな。」
「ええ、同感です。」
銀髪と茶髪が立ち止まってトンネルの壁を撫でている。
二人は真顔だが、頬に若干の赤みが見える。
「置いてくぞ!死にたくなきゃ離れるな!」
彼らの前方約20m程から放たれた警告に、二人は同時に背筋を伸ばす。
ライが顔をしかめて仁王立ちしているのが見えた。
「わーったよ。行くよ行く行く。」
やれやれと言ってイールとエイナはペースを速めた。
「既に隠し部屋の入り口は開いてるのよ。このトンネルにもモンスターが入ってきてることだって考えられるんだから、気を緩めないように。」
追い付いた先で妹さんからも注意を受けた。
はーいと息ぴったりに返事をすると、分かればよろしいと返された。
その後は数分歩き、無事隠し部屋へと戻ることができた。
幸いモンスターも居らず、ハルはエイナを抱え、身体強化を駆使して隠し部屋の壁を登っていき、残された四人はワープで戻った。
地上へ戻ると一週間前のような野次馬の姿はなく、特別騒ぎにはならなかった。
六人は報告のためギルドへ向かい、その途中では何度か「お疲れ様」と言われた。
ギルドへ入るとフラートとエイナの母親と思われる人が、涙目で駆け寄ってきた。
二人とも精神的にギリギリだったらしい。
イールはフラートに事の経緯を話し、それを聞いて彼も安心したようだった。
エイナと彼女の母親と別れ、五人は今、帰路についたところだった。
既に日が落ち始めている。
彼らを照らすその美しい赤は、彼らの帰還を祝福しているようにも見えた。
「そういえば」
話を切り出したのはユキだった。
彼女は続ける。
「落とし穴に落ちたときは風魔法でなんとかなるとしても、」
そこまで言ったとき、イール以外の三人は続きが何なのかを悟った。
「風魔法で700mも昇れる…?」
一瞬だけ、美しい赤が嘲るように笑った気がした。
「完了だ。ほれ、早く通れ。」
表情から、早く自分の家に帰りたいということが分かりやすく伝わってくる。
それほど仕事が嫌いであるようだ。
「そうイライラするでない。お主のミスじゃろう、ユーリ。」
そう言われると、緑の髪のエルフは何かを言いかけたが、すぐに口を閉じて再び溜め息をついた。弁解を諦めたのだろう。
アスフィはイール達の方を向き、腕を組んで笑った。
「またいつでも来ると良い。エイナは難しいじゃろうが。」
その言葉に、エイナは苦笑いを浮かべたが、イールは大きく頷き柔らかく微笑む。
「ああ。落ち着いたらまたな。」
「ではイールさん、行きましょう。イギアの皆さんも待っています。」
ハルは真っ先にゲートへ向かい、振り返って一礼した後、ゲートに踏み出した。
続いてライ、ユキ、レイ、エイナの順にゲートへ入っていった。
「イールさん。今度来たときも、また昔の師匠の話してくださいね。」
満面の笑みでヴィアナがイールにねだったが、その後ろではアスフィが鬼の形相を浮かべていた。
「お主……何を話した…?」
気のせいだろうか、彼女の背後に暗いオーラが見える。
それに気付くと、ヴィアナはイールに表情で助けを請うたが、
「い、いやぁ、色々だよ、色々。なあヴィアナ?んじゃ、俺行くわ。」
逃げるようにイールはゲートへ潜った。
「あ!イールさん!待ってえええ!」
ヴィアナは急いでイールを追ったが追い付かず、遂にはゲートの前で盛大に転んだ。
「いってぇ。はぁ…。師匠、これでいいですか?」
起き上がってズボンに付いた土を払いながら、呆れたような声でヴィアナが問う。
アスフィも先程のような表情は浮かべておらず、口角が上がっている。
「上出来じゃ。ワシも確認したくてウズウズしていたからのぉ。」
そして真剣な表情になり、ユーリの方に目を向ける。
「決まりじゃな、ユーリ。あの子は普通の人間ではない。」
ユーリもアスフィの方へ顔を向けた。
「ああ、やはりミスなどではなかった。」
「どうするんですか、師匠?」
弟子に問われた師匠は、少々考え込む。
「ややこしくなりそうじゃな…。」
その小さな焦りに反応する声はなく、三人の髪を揺らす風と共に沈黙がやってきた。
その間三人は、何も変えられていないゲートを凝視していた。
「やっぱりこの壁、癖になるよな。」
「ええ、同感です。」
銀髪と茶髪が立ち止まってトンネルの壁を撫でている。
二人は真顔だが、頬に若干の赤みが見える。
「置いてくぞ!死にたくなきゃ離れるな!」
彼らの前方約20m程から放たれた警告に、二人は同時に背筋を伸ばす。
ライが顔をしかめて仁王立ちしているのが見えた。
「わーったよ。行くよ行く行く。」
やれやれと言ってイールとエイナはペースを速めた。
「既に隠し部屋の入り口は開いてるのよ。このトンネルにもモンスターが入ってきてることだって考えられるんだから、気を緩めないように。」
追い付いた先で妹さんからも注意を受けた。
はーいと息ぴったりに返事をすると、分かればよろしいと返された。
その後は数分歩き、無事隠し部屋へと戻ることができた。
幸いモンスターも居らず、ハルはエイナを抱え、身体強化を駆使して隠し部屋の壁を登っていき、残された四人はワープで戻った。
地上へ戻ると一週間前のような野次馬の姿はなく、特別騒ぎにはならなかった。
六人は報告のためギルドへ向かい、その途中では何度か「お疲れ様」と言われた。
ギルドへ入るとフラートとエイナの母親と思われる人が、涙目で駆け寄ってきた。
二人とも精神的にギリギリだったらしい。
イールはフラートに事の経緯を話し、それを聞いて彼も安心したようだった。
エイナと彼女の母親と別れ、五人は今、帰路についたところだった。
既に日が落ち始めている。
彼らを照らすその美しい赤は、彼らの帰還を祝福しているようにも見えた。
「そういえば」
話を切り出したのはユキだった。
彼女は続ける。
「落とし穴に落ちたときは風魔法でなんとかなるとしても、」
そこまで言ったとき、イール以外の三人は続きが何なのかを悟った。
「風魔法で700mも昇れる…?」
一瞬だけ、美しい赤が嘲るように笑った気がした。
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