噂の殺戮者に出会ったので死刑執行しますby死神
89 激突! 尖兵団班長vs織田五大将 その1
明けましておめでとうございます!
自分の味方が誰一人いない中、彼が選択した道は……
「はぁ……参った。降参だ。捕虜にしてくれ…」
両腕をあげ、力無く諦めたように笑う桜夜。そしてその彼の選択を見届けた未智咲は冷たく言い放つ。
「命を乞うか、神々の尖兵。貴様それでも男か?」
「……なんとでも言え…俺は我が身が可愛いただの裏切りもんだよ」
それ以上は両者とも何も口に出さず、未智咲は近くにいる臣下の一人を呼ぶ。家臣は縄を持って現れ、少しずつ桜夜に近づきながら命じる。
「武器を静かに降ろし、地面に置け…」
「……わかった」
桜夜は右に持っていた刀をそのままゆっくりと地につける。置き終われば、先程と同じ様に両腕を頭の上までもっていった。
「よし……」
完全に刀が地面に置かれたのを確認して、さらに歩を進める。しかしこの時、この臣下の男は一つ致命的なミスを犯していたのだ。
(刀を遠ざけないとは、愚の極みだ…ぜっ!!)
―キンッ
「なっ!? ……グッ」
桜夜が無言のまま、刀の柄頭をつま先で真っ直ぐ蹴り飛ばすと金音が短く鳴り、刀は水平に飛んでいき臣下の左足を薄くだが裂く。男は突然の痛みに表情を歪ませるが、すぐさま桜夜を確保するべく動き出す。
だがそれよりも早くいろんな角度から矢が飛んでくる。もちろん想定済みだ。
(主人公補正…第一、第二補正…発動!!)
心中で彼がそう呟いた瞬間、時間の進みが遅くなったかのような感覚にその場にいた全員が囚われる。その長いようで短い刹那の間に、飛んでくる数々の矢を運と直感を頼りに回避し続けている桜夜。
常人なら決して不可能な体の捻りも、数多くの修行を積んだ彼なら造作もない。
「フッ!!」
短く息を吐き、顔すれすれに矢を避けながらも華麗に着地する、と同時に懐にある拳銃を抜き撃ちし、先程の臣下を確実に仕留める。
「ガハッッ…」
乾いた銃声が鳴った後、盛大に口から血を吐き、地に伏せる臣下の男。彼の血は今なお道路を赤黒く染め上げている。この出血量から判断するにあと数分も保たないことは確実だ。
しかし誰も彼を助けようとはしない。その証拠に未智咲は既に桜夜の背後に回り込み得意の槍術で仕留めようとしている。他の臣下もその男を特に気にした風なことはなく矢を弓につがえはじめていた。
ギリギリのところで刀に手が届いた桜夜は振り向きざまに一閃。
「フゥ!!」
「はぁぁぁぁああ!!」
―キィィィンンンンン
刀と槍が互いに互いを削り合い、甲高い金属音が二人の間に響き渡る。
「この人数を相手に不意打ちとは、なかなか度胸があるようだなっ!!」
「見直してもらえたようで何より…だっ!!」
刀の鍔と三叉槍の又の部分で競り合い、互いに睨み合う。数秒後、またもあらゆる角度から矢が飛来し、桜夜は間合いを取らざるを得ないが、どんなに刀を振るっても槍から離れられない。
何処までも執拗に絡んでくる槍と迫り来る数多の矢。判断を下すのに躊躇はしていられない。
「チィッ…」
短く舌打ち。桜夜は仕方なく刀を諦め、そこから飛び退きさらにバックステップで矢を回避していく。
―ズドドドドドドドッ
連射機能も追尾機能もあるはずがないのに、そう錯覚させてしまうほどの弓術と流れを先読みし的確なタイミングで突いてくる槍術。
99人の弓兵と1人の槍兵。その絶妙なコンビネーションで生み出される究極の袋叩きに、ただ一人立ち向かう主人公。
「う…うぉぉぉぉぉぉぉ!!」
「はぁぁぁぁ……ああ!」
気迫とともに矢を避け、気迫とともに繰り出される槍をすんでのところで回避する。止まれば射抜かれ、気を抜けば串刺し。そんな圧倒的に不利な状況をどうやって覆すのか…
(刀は槍で向こうに捨てられ使えず。俺には残弾4発の拳銃が一丁とナイフ。これでどうやって切り抜ける? 応援を待つか?叢雲を待つか?いや、そんな希望的観測なんてやめろ。やれることを探してとにかくやるしかない!)
(何を? そんなもん知るか!!)
後ろへと下がりながら避けるのをやめ、道を外れ山へと入る。だが矢の速度が落ちることはなく、さっきまでと同様に迫り来る。少し違うのは何本かが先程と違って真っ直ぐに飛んでくることぐらいだ。
それと今のところ槍による追撃がない。斜面に足を取られたのだろうか。
「まぁちょうどいいか。おっ見つけたぜ! 弓兵!」
槍兵の事を一旦頭の隅に置き、取り敢えず直感を信じて草木を掻き分け前進すると、そこには1人の兵士がいた。
「な、なに!? き、貴様どうやって迷いの結界を…」
「勘だ…」
「は?」
まさか結界が通用しないとは思わなかった織田の家臣。彼は桜夜の答えに唖然としつつも剣を抜く。
さらに味方が近くにいるからなのか、この時既に無数の矢はなりを潜めている。
「お、俺の前に姿を現した以上、死んでもらうぞ!」
「一応、捕虜にしてって頼んだんだが?」
「そ、そんなものあの時、俺達の仲間を殺した時点で無効だ! 馬鹿かお前は!?」
全くもって弓兵さんの言うとおりである。
「ま、次に死ぬの君だから、さっきの彼によろしくな?」
「ふ…ふざけるのもいい加減にしろぉぉぉぉ!!」
桜夜の煽りに激昂した弓兵は剣を振りかぶって切りかかってくる。
「おっっと!」
「くっ!」
桜夜は左斜め上から切り下ろされた剣を軽々と避け、すぐさま剣を踏みつけ行動を一拍遅らせる。その間に叩き込まれる拳打、拳打。
「喰らいやがれっ!」
「…ボフッ!!」
最後に体を捻り勢いをつけ渾身の右ストレートを放つ。桜夜の拳は綺麗にヒットしたらしく弓兵は、背後にあった木に後頭部を打ち、意識を失った。
「ふぅ…久しぶりに殴ったせいか手が痛い。ま、そんなことはどうでもいいからさっさと、とどめを刺しちまおう」
桜夜は自分の足で踏んづけていた剣を手に取り、弓兵に止めを刺す。
―グチャッ
そんな気色の悪い感覚が手の中に広がるのを感じつつ、心臓を突き引き抜いて、一息つこうとしたその時…
―シュンッ―
一陣の風が吹いたと思ったら…
―グシャァ―
隣にあった弓兵の死体が血を撒き散らしながら切り刻まれる。
「これはっまさか… フッ!!」
何かを直感したらしい桜夜は数十分前と同じ様にすぐさま地面に倒れ込み、斜面を転がる。
―ズドドドドドドドッ―シュンッ―ズドドドドドドドッ―シュンッ
次の瞬間、約60本もの矢といくつもの流麗な切断面が桜夜が先程までいた場所を彩っていた。もし桜夜が気付かなければひとたまりもなかったことだろう。
「くっ!…ウグッ! ガハッッ!! ………ハァハァ なんとか無事に降りれたか」
もちろん、斜面を転がり降りた桜夜も無傷ではないが…
「あれよりはマシだ」
そう納得して次を見定める。
「やっぱあんたを先に殺らなきゃ、いけねぇようだな」
「殺れるものならってセリフ一度言ってみたかったけど、それどころじゃなさそうね」
今、桜夜の手にあるのはさっきの弓兵から奪った剣と懐にある拳銃。これで彼にもやっと一つだけ勝算ができたといったところだろう。
今年もよろしくお願いします!
さてやっとバトルらしいバトルが書けて、なんとか戦争っぽくなったかと思います。
初戦は桜夜vs織田軍
これからもドンドン書いていきますのでお楽しみに!
自分の味方が誰一人いない中、彼が選択した道は……
「はぁ……参った。降参だ。捕虜にしてくれ…」
両腕をあげ、力無く諦めたように笑う桜夜。そしてその彼の選択を見届けた未智咲は冷たく言い放つ。
「命を乞うか、神々の尖兵。貴様それでも男か?」
「……なんとでも言え…俺は我が身が可愛いただの裏切りもんだよ」
それ以上は両者とも何も口に出さず、未智咲は近くにいる臣下の一人を呼ぶ。家臣は縄を持って現れ、少しずつ桜夜に近づきながら命じる。
「武器を静かに降ろし、地面に置け…」
「……わかった」
桜夜は右に持っていた刀をそのままゆっくりと地につける。置き終われば、先程と同じ様に両腕を頭の上までもっていった。
「よし……」
完全に刀が地面に置かれたのを確認して、さらに歩を進める。しかしこの時、この臣下の男は一つ致命的なミスを犯していたのだ。
(刀を遠ざけないとは、愚の極みだ…ぜっ!!)
―キンッ
「なっ!? ……グッ」
桜夜が無言のまま、刀の柄頭をつま先で真っ直ぐ蹴り飛ばすと金音が短く鳴り、刀は水平に飛んでいき臣下の左足を薄くだが裂く。男は突然の痛みに表情を歪ませるが、すぐさま桜夜を確保するべく動き出す。
だがそれよりも早くいろんな角度から矢が飛んでくる。もちろん想定済みだ。
(主人公補正…第一、第二補正…発動!!)
心中で彼がそう呟いた瞬間、時間の進みが遅くなったかのような感覚にその場にいた全員が囚われる。その長いようで短い刹那の間に、飛んでくる数々の矢を運と直感を頼りに回避し続けている桜夜。
常人なら決して不可能な体の捻りも、数多くの修行を積んだ彼なら造作もない。
「フッ!!」
短く息を吐き、顔すれすれに矢を避けながらも華麗に着地する、と同時に懐にある拳銃を抜き撃ちし、先程の臣下を確実に仕留める。
「ガハッッ…」
乾いた銃声が鳴った後、盛大に口から血を吐き、地に伏せる臣下の男。彼の血は今なお道路を赤黒く染め上げている。この出血量から判断するにあと数分も保たないことは確実だ。
しかし誰も彼を助けようとはしない。その証拠に未智咲は既に桜夜の背後に回り込み得意の槍術で仕留めようとしている。他の臣下もその男を特に気にした風なことはなく矢を弓につがえはじめていた。
ギリギリのところで刀に手が届いた桜夜は振り向きざまに一閃。
「フゥ!!」
「はぁぁぁぁああ!!」
―キィィィンンンンン
刀と槍が互いに互いを削り合い、甲高い金属音が二人の間に響き渡る。
「この人数を相手に不意打ちとは、なかなか度胸があるようだなっ!!」
「見直してもらえたようで何より…だっ!!」
刀の鍔と三叉槍の又の部分で競り合い、互いに睨み合う。数秒後、またもあらゆる角度から矢が飛来し、桜夜は間合いを取らざるを得ないが、どんなに刀を振るっても槍から離れられない。
何処までも執拗に絡んでくる槍と迫り来る数多の矢。判断を下すのに躊躇はしていられない。
「チィッ…」
短く舌打ち。桜夜は仕方なく刀を諦め、そこから飛び退きさらにバックステップで矢を回避していく。
―ズドドドドドドドッ
連射機能も追尾機能もあるはずがないのに、そう錯覚させてしまうほどの弓術と流れを先読みし的確なタイミングで突いてくる槍術。
99人の弓兵と1人の槍兵。その絶妙なコンビネーションで生み出される究極の袋叩きに、ただ一人立ち向かう主人公。
「う…うぉぉぉぉぉぉぉ!!」
「はぁぁぁぁ……ああ!」
気迫とともに矢を避け、気迫とともに繰り出される槍をすんでのところで回避する。止まれば射抜かれ、気を抜けば串刺し。そんな圧倒的に不利な状況をどうやって覆すのか…
(刀は槍で向こうに捨てられ使えず。俺には残弾4発の拳銃が一丁とナイフ。これでどうやって切り抜ける? 応援を待つか?叢雲を待つか?いや、そんな希望的観測なんてやめろ。やれることを探してとにかくやるしかない!)
(何を? そんなもん知るか!!)
後ろへと下がりながら避けるのをやめ、道を外れ山へと入る。だが矢の速度が落ちることはなく、さっきまでと同様に迫り来る。少し違うのは何本かが先程と違って真っ直ぐに飛んでくることぐらいだ。
それと今のところ槍による追撃がない。斜面に足を取られたのだろうか。
「まぁちょうどいいか。おっ見つけたぜ! 弓兵!」
槍兵の事を一旦頭の隅に置き、取り敢えず直感を信じて草木を掻き分け前進すると、そこには1人の兵士がいた。
「な、なに!? き、貴様どうやって迷いの結界を…」
「勘だ…」
「は?」
まさか結界が通用しないとは思わなかった織田の家臣。彼は桜夜の答えに唖然としつつも剣を抜く。
さらに味方が近くにいるからなのか、この時既に無数の矢はなりを潜めている。
「お、俺の前に姿を現した以上、死んでもらうぞ!」
「一応、捕虜にしてって頼んだんだが?」
「そ、そんなものあの時、俺達の仲間を殺した時点で無効だ! 馬鹿かお前は!?」
全くもって弓兵さんの言うとおりである。
「ま、次に死ぬの君だから、さっきの彼によろしくな?」
「ふ…ふざけるのもいい加減にしろぉぉぉぉ!!」
桜夜の煽りに激昂した弓兵は剣を振りかぶって切りかかってくる。
「おっっと!」
「くっ!」
桜夜は左斜め上から切り下ろされた剣を軽々と避け、すぐさま剣を踏みつけ行動を一拍遅らせる。その間に叩き込まれる拳打、拳打。
「喰らいやがれっ!」
「…ボフッ!!」
最後に体を捻り勢いをつけ渾身の右ストレートを放つ。桜夜の拳は綺麗にヒットしたらしく弓兵は、背後にあった木に後頭部を打ち、意識を失った。
「ふぅ…久しぶりに殴ったせいか手が痛い。ま、そんなことはどうでもいいからさっさと、とどめを刺しちまおう」
桜夜は自分の足で踏んづけていた剣を手に取り、弓兵に止めを刺す。
―グチャッ
そんな気色の悪い感覚が手の中に広がるのを感じつつ、心臓を突き引き抜いて、一息つこうとしたその時…
―シュンッ―
一陣の風が吹いたと思ったら…
―グシャァ―
隣にあった弓兵の死体が血を撒き散らしながら切り刻まれる。
「これはっまさか… フッ!!」
何かを直感したらしい桜夜は数十分前と同じ様にすぐさま地面に倒れ込み、斜面を転がる。
―ズドドドドドドドッ―シュンッ―ズドドドドドドドッ―シュンッ
次の瞬間、約60本もの矢といくつもの流麗な切断面が桜夜が先程までいた場所を彩っていた。もし桜夜が気付かなければひとたまりもなかったことだろう。
「くっ!…ウグッ! ガハッッ!! ………ハァハァ なんとか無事に降りれたか」
もちろん、斜面を転がり降りた桜夜も無傷ではないが…
「あれよりはマシだ」
そう納得して次を見定める。
「やっぱあんたを先に殺らなきゃ、いけねぇようだな」
「殺れるものならってセリフ一度言ってみたかったけど、それどころじゃなさそうね」
今、桜夜の手にあるのはさっきの弓兵から奪った剣と懐にある拳銃。これで彼にもやっと一つだけ勝算ができたといったところだろう。
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