噂の殺戮者に出会ったので死刑執行しますby死神

鬼崎

51 世界主神首脳総会

第二章スタートです!
よろしくお願い致します。


 殺戮者の死神大殺戮事件から二日後、世界調停機関の本部がある、調停艦【信濃】では緊急の世界主神首脳総会が開かれていた。世界主神首脳総会とはその名の通り、国際神話連合に属している神話の主神または代表神と各国の首脳の一斉会合だ。

 因みに国際神話連合には、全世界の神話及び国が属しているので、前時代のような非所属国はない。まあ各神話、各国にテロ組織がいたりいなかったりして未だ完全統治には至っていないが。それと、前国連の常任理事国的立場の神話は、決まっていない。各神話がそれぞれ主張したことにより、現在は保留となっている。

 そんな世界主神首脳総会だが、今回は少し異色の雰囲気だ。第一に議題が異常すぎるのだから仕方ないかもしれないが…
もちろん今回の議題は殺戮者についてとその対策だ。先の事件で殺戮者が神話に対抗できる戦力と判明した以上、放っておく訳には行かないだろう。実際、死神本部では多大な被害を被り、現在では通常業務をギリギリこなせている状態なのだから。そんな中、壱月が世界調停機関から呼び戻されないのは、木戸のおかげだったりする。
 話を戻すが、この状況でこの会談が一番最初にやることとは一体なんだと思うだろうか?答えは明白だ。

責任の追求である。実にくだらない。こんな内容では今までの国連となんら変わらないだろう。
 まあ、そんな感じで責任が最終的に問われるのは日本神話だ。自国が招いた災厄なので仕方ないだろう。最も神々が再降臨しなければこんな事にはならなかったかもしれないが、それは過ぎたことだ。今更どうにもならない。

「それで、日本はどう責任をとられるおつもりですかな?」
そうわざとらしく丁寧語で発言したのは、ギリシャ神話のゼウスだ。腕を組みながら、実に嫌らしい笑みを浮かべている。現在のギリシャ神話の勢力はかなり広く、ヨーロッパ諸神話を結構な数併合している。ヨーロッパ地域で対等な神話はケルトと北欧ぐらいだろう。

「我が国では現在、殺戮者を殺しえる戦士を2名育てており、」
ゼウスの問いに答えたのは、日本神話から代表神として出席している大国主オオクニヌシ。彼はついこの間、出雲に来た少年を思い出しながら、説明を始める。
「そのうちの1人は今、建速須佐之男命スサノオノミコト様が師匠についておられ、修行をなさっています」
なんと、桜夜の師匠はヤマタノオロチ退治で有名なスサノオノミコトだったのだ。多分今頃は鬼のような修行になっているに違いないだろう。
「残りの1人はどうしたのかね?」
当然、もう1人の方も聴かれる。
「そちらは今、世界調停機関で鍛錬をしていると報告されています」
本来、死神である壱月は正確には日本神話所属にならないのだが…この場では何故かそうなっている。

 日本の対応に各国は難しい顔をし、瞑目する。どうやらこの機会に日本神話を抑え込みたかったようだ。それを承知でオオクニヌシが今の対策案を並べ立てたのなら、その辺についてはもう流石としか言いようがない。
だがしかし、それでもまだ諦めていないところがあった。ギリシャだ。
「オオクニヌシ君、君は殺戮者をたった2人で本当に殺せると思っているのかね?」
ゼウス自身は、殺戮者と会ったことは無いはずなのだが、随分知った風なことを言う。何か根拠でもあるのだろうか?あるいはただの冷やかしかもしれないが。
そんなギリシャに迷いなく返す日本、オオクニヌシ。
「殺せますよ、彼等なら。そして皆さん、我々が考えねばならないことは、その先の筈です」
オオクニヌシは立ち上がり、むしろ大切なのはこれからだ、と演説を始める。これにはギリシャも黙るしかなく、各国と同じようにオオクニヌシの言葉に耳を傾けている。
「殺戮者を殺害後、人類の中に彼の後継者を夢見る者達が出現するはずです。
 何せこれほどの伝説を刻んだ人間ですから、後継者が出てこない方がおかしいでしょう。
  我々がそれに対してとる選択は二つです。
 まず、一つは出てくる前に人類の完全統治を完了させること。二つ目は今回と同じ様な殺害です。
 これは私的な意見ですが、後継者は世界各地に多数現れると予想できるので、二つ目の選択肢はあまりおすすめできません。
  皆さんはどう判断されますか?」
世界各国はオオクニヌシの話を表向きは静かに聴いていたが、半分ほどの国は聞き流していたに違いないだろう。一番楽観視しているのは案の定ギリシャで、逆に危機感を持っているのがエジプトとメソポタミアだ。
 どうでも良いと、聞き流していた国々は後継者が出現するなどあり得ないと思っているのだろう。出現する理由もオオクニヌシは述べていたが、覚えてなさそうだ。出て来たとしても本家よりは弱いだろうと高を括っているのかもしれない。
 
 一方、オオクニヌシの意見に関心を示し、素直に考え始めている国々もある。
「オオクニヌシ様の仰った通り、二つ目の選択肢は除外した方が良いかもしれませんね
 ですが、この僅か数年の間に、完全統治を成し遂げるのもなかなか難しいのではないでしょうか?」
日本の意見を肯定し、修正も視野に入れるエジプト神話の代表神イシス。
「そうですね。確かに完全統治に至るのは困難でしょう。しかし、非神話勢力の縮小ならある程度実行可能なはずです。
 要は、第二第三の殺戮者になりうる可能性を排除していけば良い、ということです。」
オオクニヌシの修正案を聴いたイシスは、
「なるほど、それならばまだ簡単ですね。帰国後、この案件については本国で検討させて戴きます。」
納得し、早速国会で決議したいと申し出てくれた。
「よろしくお願い致します」
オオクニヌシは頭を下げ、感謝を示す。


 この日の世界主神首脳総会はこれでお開きになった。何せ緊急時のため、そんなに長居は出来ないらしい。
結局、日本はオオクニヌシのおかげで他国に介入されず、自国の国力だけで、殺戮者問題を解決することになった。


いつもお読みいただき誠にありがとうございます。
第二章の始まりにしては、少し微妙な感じかもしれませんが、これから頑張って行きますので、ご容赦ください。
あと言語についてですが、そこはご都合主義をとらせていただこうと思っています。もちろん設定はあるのですが、ちょっと無茶があるので、そう解釈していただければ、幸いです。

これからもよろしくお願い致します!

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