噂の殺戮者に出会ったので死刑執行しますby死神

鬼崎

45 殺戮者は九州へ

 壱月が《最剣》と真剣勝負を始める数時間前、殺戮者は九州、鹿児島県桜島に来ていた。
徒歩で姫路から5日かかったようだ。
もちろんその間にも人は殺しているので、被害者は増える一方だ。もう具体的な数は数えていないようだが…
そんな殺戮者が桜島に何用かというと、
「武器商人の工房はこの辺だったっけ?」
先程から桜島周辺をぶらぶら歩き殺しながら、武器商人ウェポン・マスターの隠れ家を探しているのである。
「確か…この辺に…隠し扉があったはず…」
そう言って殺戮者は地面をペタペタ触りながら調べ、
「お!これだこれ」
どうやら見つけたようだ。

「ポチッとな」

そんな擬音と共に、隠し扉のスイッチを押す。すると、
ッゴゴゴゴゴゴゴ
小規模な地響きと同時に近くの斜面がスライド式の扉のように開き、ダクトのような通路を現出させる。
「よっと!」
中に入りそこを這って移動する。匍匐前進すること約3分、そこからまた新たな光景が目に入る。
「さて、次は…あれか」
殺戮者の視線の先にある物、それはトロッコだった。いかにもブレーキが壊れていそうな感じの…
だが、これしか移動手段がないので乗るしかない。
「………」
恐る恐るといった感じでトロッコに乗り込み、発進させる。
最初は、
「まあ、快調だな」
もちろん、そんなことが続くはずもなく、どんどんスピードはあがっていき、
「まあ、お約束だよな…」
殺戮者に待っていたのはトロッコアクションにつきものの、
「やっぱり、ブレーキきかねぇ!」
止まれない、トロッコはその間もスピードを問答無用であげていく。

そしてレールが終わる、50メートル前から殺戮者は飛び降りる準備と着地場所の確認を行い…
「時は来た!」
トウッ!というかけ声と一緒にトロッコから飛び降りた。
あとはシュタッと着地するだけなのだが、それを許さないのが武器商人クオリティだ。
しかし、殺戮者はそれを知らない。
「よし着地!…え?」
着地と同時に落下し始める殺戮者。これは落とし穴だったのだ。

「あああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ…!」
悲鳴と共に哀れな殺戮者は落ちていった。


「いてて…」
しばらくして、殺戮者が目を開けるとそこには武器商人が立っていた。ニヤニヤしながら。
「よう!久し振りだな、異常者」
「あんな罠仕掛けやがって、お前の方が絶対おかしいぞ!」
「別におかしくはない。ただの嫌がらせだ」
「な、堂々と言いやがったな…」
そんな挨拶代わりの罵り合いから始まり、武器商人に案内されて工房へ行く殺戮者。
ここでやっと本題に移る。
「武器商人、あの時の約束憶えてるよな?」
「なんのことだ?」
すっとぼけられた。だが諦めずに再挑戦。
「忘れたとは言わせないぜ?」
「悪いな俺の仕事は多いから忘れちまうんだよ。契約書とかないのか?」
忘れられていた…。だが諦めずに再々挑戦!
「契約書は……これか!」
バンッ
殺戮者が机に叩きつけたのは一枚の紙、内容は…
「どれどれ…あ~これか~材料は揃ったのか?」
どうやらやっと思い出してくれたようだ。
「ああ!揃ってるぜ!」
そう言って次に懐から出したのは、3週間程前に錬金術師に錬成してもらったインゴットだった。
それを武器商人に手渡し、
「それで刀を打ってくれ」
「アダマンタイトか、これ?」
「ああ」
何か問題でもあるのだろうかと首を傾げる殺戮者。
「多少時間がかかるが、それでもいいか?」
「頼む!」
どうやら問題は時間だけのようだ。
「わかった。刀を打ってやる、この前みたいに大人しく待っとけよ!」
「わかってるよ。」

そう言って武器商人は奥の鍛冶工房に行き、殺戮者は近場にあったソファで寝始めるのだった。



いつもお読みいただき誠にありがとうございます。

本当なら壱月vs《最剣》を書くべきなのですが、殺戮者側も書いておかないと話が進まないので書かせていただきました。
壱月vs《最剣》を楽しみにしていた方々すみません。

こんな作者ですが今後もお願い致します。

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