噂の殺戮者に出会ったので死刑執行しますby死神

鬼崎

39 死神は頂を知る

 一触即発の空気の中、最初に剣を振るってきたのは、《最強》でも壱月でもなく《最速》だった。
「シッーーーーーー!」
世界調停機関の中で最も速い細剣が目に留まらぬ速さで壱月を襲うが、
(人類にとっては最速だろうが、俺にとってはまだ遅い!)
『ドレッドノート』による知覚強化も上乗せされた壱月の洞察力は凄まじいものだ。
《最速》の細剣が壱月の間合いに入る瞬間、抜刀術を繰り出し、

キィィン!

短い金属音と共に、壱月の【死雨】は細剣の剣先を断ち切る。剣先は会議室の壁に刺さり、皆がそちらに注目する中、
「ハァァァァァア!」
壱月の大上段からの切り下ろしが《最速》を狙う。本来この程度の攻撃はかわせるのだが、《最速》は自分の速さが通用しなかった事に動揺し、固まっているため気付いたときには、もう遅いと思われたが、
「させません!」
とっさに《最速》の前にでて剣で受け止める《最善》、最善の行動とはまさにこの事だろう。
「しっかりしろ、《最速》!あなたが止まって何ができるというのです!動きなさい」
「はっ!」
我に返る《最速》、彼はもう一回速さで勝負を仕掛けるつもりだ。その間も最善の一手を考え続ける、《最善》。
壱月は二人から距離をとり、元の位置へ戻る。

次に斬りかかってきたのは、《最強》だった。
「セイァァァァァァ!」
斬りかかるというよりは叩きつけるの方が的を射ているだろう。それは気合いと共に壱月へと向う。
壱月はしっかりと【死雨】で防御するが吹き飛ばされる。
椅子や壁などにぶつかるが、その反動で転げ起きる。受け身をとったおかげでダメージは少ない。
「クソッ!いてぇじゃねぇか…」
悪態をつきながらも、構え直す。その構えは、
「【死神剣術式・牙突ー壱ノ型】!」
腰を落とし両脚を前後に開いて、右手を突き出し刀を支え狙いを定める。壱月の得意技だ。
「あぁ?なんだそのふざけた構えは」
「行くぞッ《最強》!」
牙突が高速で放たれ、その刃が《最強》に突き刺さろうとする瞬間、
「【剣在】」
《最剣》が静かに紡がれたその言葉と同時に、【死雨】のすぐ上に剣が出現し、牙突を叩き落とす。

ガキィィン

またも壱月は椅子の上を転がる羽目になり、
「何だ今のは!」
だが、その問いは無視され、《最剣》が叫ぶ。
「今だ!《最術》《最封》!」
まるで最初からわかっていたかのように、《最術》《最封》の二人は迷わず動きだしていた。
「龍神の魔導書、第四巻・最上位拘束魔法!発動」
《最術》の魔法行使で壱月はすぐさま拘束され動けなくなる。
次に、
「高密度封印開始!」
《最封》は壱月を立方体の中に閉じ込め、誰も干渉できないように封印する。
「状況終了!」
《最善》のその言葉とともに、警戒が解かれる。このときすでに、巴音も封印結界の中だ。

全て終わったと判断した《最強》が口を開く、
「残念だったな、斎藤。この弱さがお前の正義だ。」
「チッ……」
壱月は舌打ちし《最強》を睨みつけている。
「この者達はこれからどうしますか?」
「死神本部にはこいつらの身柄を条件にして、新しい条約でも認めさせよう。それまでは牢屋だ」
「わかりました…この者達を牢屋に連れて行く、《最封》頼めるか?」
「ええ、任せてください」
《最封》は封印結界を強制的に動かし、二人を牢屋まで連れて行った。

「ふぅ、これで一段落着いたな、各自解散」
「「「「「はっ!」」」」」
調停官達は今度こそ会議室を立ち去っていったのだった…



お読みいただき誠にありがとうございます。

今回の反省
壱月が未だに対人戦で勝っていませんが、壱月は十分強いんです。経験が足りないだけで。
これまでの敗北はこれからの勝利の布石だと思ってくだされば幸いです。(次回から勝つとは言ってない)

それと巴音の描写が全然書けませんでした、すみません。
言い訳させていただくと、彼女は後方支援中心なので近接戦は得意ではありません。
そういった描写も書けるように努力します!

これからもよろしくお願いいたします。

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