噂の殺戮者に出会ったので死刑執行しますby死神

鬼崎

35 奥義VS必殺技

 死神が反撃策を模索している頃、錬金術師は残り3本の触媒用の剣を錬成していた。
「形作れ…聖海!」
聖海の錬金術を使い、速度は遅いが精密に造っていく。そして闇で影を作り、心壁で境界を形成する。
これで残り2本。錬金術師の奥義の下準備は着々と進んでいく。
その間にも固定砲台を造り、死神を牽制し、こちらの思惑に気づかせないようにしている。

すると、

ドドドドドドドドドドッ―――――――――――――――

不意に死神側の自律機関銃が銃撃をやめたのである。
「何が起きた?」
もちろんこの問いに答える者は錬金術師側にはいない。
錬金術師は自身が理解し思考するため言葉に出し、結論を出す。
「巴音さんが援護を開始したのは、つい先ほどの銃声で理解できるが…今のは……」
考えつつも手を動かし、剣を錬成していく。向こうの状況がわからない以上、早いうちに勝負にでたいのだろう。
クオリティは落とさず、また1本出来上がる。

そして、最後の1本に取りかかろうとした瞬間…

ダッッ

岩場を蹴ったような音とともに、死神が空を跳んでいた。
しかも普通なら放物線を描くように落下するはずが……そんなことはなく空中で立っている。
そこから何やら構えをとり、刀の切っ先をこちらに向けてくる……
「あれは一体、なんの構えなんだ?」
自然と口から疑問がでる。

その答えはもちろん、【死神剣術式・牙突ー弐ノ型】だ。
牙突にはいくつか型わけがある。通常の壱ノ型、斜め上から突きおろす弐ノ型、対空迎撃用の参ノ型。今回はその中の弐ノ型だ。る○剣の斎藤一曰わく、正真正銘の牙突だ。
それと空中に立っているトリックは、『ドレッドノート』である。自律機関銃を回収し自身の足場として用いているのだ。

「ウァァアアアアアアア!」
凄まじい気迫とともに、牙突が繰り出される。
「クッッ!」
距離は一気に縮まり、刃が届くほんの少し手前で、
「空素錬成!」
突如、空中に錬成された鉄板によってわずかにタイムラグが生じる。それでも鉄板は貫かれるが、錬金術師はギリギリの回避で間合いの外にでることに成功する。
しかし、

ドパァァァン!

遠くで銃声が聞こえ、高速の弾丸がこちらに向かってくる。
「聖海に還元せよ!」
その一言で跳んでくる弾丸を消し去る。
「なんだと!?」
突然の出来事に動揺し、慌てて刀を構え直すが、時すでに遅し。

最後の触媒用の剣が完成していた。

錬成された剣は全部で12本。そして錬金術師はついに奥義を発動する。
剣を自身を中心とした円上に突き立て、
「今ここに、円卓の騎士は集った。
               騎士達よ、卿らの王を向かい入れよ。」
周囲の剣が光り出し、剣の内部にある部品の一つが中心へと向かってくる。次第に、中心地には1本の剣が数多くの歯車で形作られ、突き刺さっていた。
それを錬金術師は抜き放ち、両手で胸元に持ち上げ、

「錬金術複合奥義-〈機会仕掛けの神聖剣システム・エクスカリバー〉ーーーーーーーーーーーーーー!」

大上段から振り下ろし、神格を伴った一撃を死神に向けて放つ。

「ッ!」
対する死神は、とっさに【死神剣術式・牙突ー壱ノ型】を放ち……

数秒後…

壱月はその場に倒れていた。
「負けた、のか?」
「ああ、僕が勝ったからな」
「まさか、あんな大技が飛んでくるなんて思いも寄らなかった」
「その割にはお前、無傷だけどな」
「へ?」
その通り、壱月は無傷だ。原因は【死雨】、致死概念が機会仕掛けの神聖剣の斬撃にも適応され、壱月を守ったのだ。

この戦いに決着が着いたことによって、やがて世界は崩れ始める。
「これで僕の強さは証明できたかな?」
「いちいち言わなくてもいいだろうに……あぁ強かったよ」
壱月は峰影の強さをぶつぶつ文句を言いながらも認め、峰影は満足したように頷いた。
「じゃあ、知床に戻ろうか」
「そうだな」

三人は崩壊する幻想的な世界を眺めながら、知床への道を歩いていくのだった。




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