噂の殺戮者に出会ったので死刑執行しますby死神

鬼崎

18 再挑戦

 最大魔力量を増やすためダンジョンで修行をしていた斎藤壱月は、今19階層の最後の部屋で最終調整をしていた。調整が終わり次第、20階層にいるフロアボスを倒すつもりだ。

「さて、ここまででだいぶ魔力量が増えたと思うから、もう一回【死雨】のマスター登録をやってみるか」

 そして壱月は前回のように【死雨】に魔力を込め始める。

「はぁあああああ!」
(前回より手応えが…ある!)

 壱月の魔力が半分のところで、【死雨】があの時のように輝きだした。今回はまだまだ余裕がある。

「鍛えた成果を見せてやる!お…おぉぉぉおおお!」

 低いうなり声を出しながら、壱月は更に魔力を込めると、またもや【死雨】に変化が起こった!
 一際輝きながら、赤い閃光が放たれはじめそれがどんどん青に染まりつつあるのだ。これは魔力の上書きがされている証拠である。残りの魔力量3割…

「まだだ…」

 魔力残量2割…

「まだ…」

 残量1割5分…

「うおぉぉぉぉぉぉ」

 気合いとともに残りの全魔力が注ぎ込まれる!
 すると…

『魔力の上書きを確認、マスター登録を更新します』
「…!やった…上書き…出来た…」

 【死雨】から機械的音声が鳴り響き、マスター登録が完了する。だが壱月は全魔力を使ったため、ぶっ倒れるのだった。


 それから約数時間後、魔力が少し回復した壱月は目を覚まし、起き上がって【死雨】を確認する。

「【死雨】…」
『はい、何でしょうか?マスター』
(マスター登録出来てる、夢じゃない!)
「もう抜刀しても、俺は死ぬことはないんだよな?」
『はい、いつでも抜刀可能です』

 早速、壱月は【死雨】を鞘から抜いた。その刀身は漆黒で、今にも呑み込まれてしまいそうだ。刀身の色は『ドレッドノート』と同じだが、【死雨】の方が…

「綺麗だ。」
『お褒めに与り、光栄です。マスター』

 …思わず声に出てしまった。

「これが致死概念付与武装…」
『はい、刃部分に概念付与がなされていますので、生物を斬った場合は必ず致命傷になり、他にもいくつか誓約がありますが万物の完全切断が可能です』
「なるほど、凄まじいな」

 どうやら想像以上の化け物武装らしい、さすがは神が造った武装ということだ。そこで壱月は一つ試したいことができた。

「なぁ次の階層に住むフロアボスも瞬殺できるのか?」
『基本的には可能です。マスターが実力不足でなければ、ですが』
(地味に煽ってきやがる)
「そうか…わかった、じゃあさっさと殺して帰るとするか」
『仰せのままに、マスター』

 そうして、20階層に降りていき、フロアボスとの戦いが始まった。
 相手は巨大ゴーレムだ。【死雨】との相性はかなりいいだろう。何せ核以外を完全切断でき、核を攻撃できたら、致命傷を負わせられるのだから。

 ドシン…ドシンと近づいてくるが、壱月は身構えていない。おそらくどれだけ楽に斬れるのか試すつもりだろう。刀を持ち上げ刃をゴーレムに向ける。刃とゴーレムの脚が触れ合い、そのまま静かに刀は脚を切断した。斬られたことでバランスを崩し、胸部にある核が露わになった。すると壱月は核に向かって突きを放つ、とても軽い一撃だ、通常なら弾かれるだろう。だが刀は核に深く刺さっていく、そして3秒後核が二つに割れて、ゴーレムが活動を停止した。

「簡単だったな」
『はい、【死雨】を用いれば、こんな敵はただの雑魚です』

 フロアボスが雑魚同然とは、この武装は本当にヤバいらしい。それと、一つ気付いたことがある。それは刀を振ってみてわかったのだが、実はこの刀かなり重い、今のままでは【死神剣術式・牙突】は撃てないだろう。まだまだ鍛えなければならないようだ。
 しかし、これ以上ダンジョンに潜るつもりはない。これからもう一度支部長室に行き木戸に報告して、殺戮者を追うため人間界に戻るつもりだ。だから鍛えるのは人間界で殺戮者を追いながらになるだろう。

 俺はそんな事を考えながらモンスターを倒しつつ、ダンジョンを上って行くのだった。

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