発展途上の異世界に、銃を持って行ったら。
65話
「……来たか」
「おう……久しぶりだな、エクスカリドさん」
翌日の早朝―――俺たちは、『騎士国』にやって来た。
俺は1人で来るつもりだったんだが……こいつらが付いて行くと言って聞かないため、仕方がなく連れてきたのだ。
「しかし……なかなか面白いやつが一緒にいるではないか?」
「お久しぶりですわね、エクスカリド」
「……『水鱗国』の女王を連れているとは……何があったんだ?」
不気味に輝く『魔眼』がフォルテを捉える。
「ワタクシが誰と一緒にいようと、ワタクシの勝手ですわ♪ご主……この方は、ワタクシの望みを叶えてくれる方ですから♪」
「ふざけろ変態マーメイド……誰がお前の望みを叶えるって?」
「あ、はぁ……変態マーメイドだなんて……♪」
ああ、こいつの望みってこれか。
「……まあいい。話を聞かせてもらおうか……イツキ」
おっと、初めて名前で呼ばれたな。
「んー……どっから話すかな」
「簡単にで良い……こっちに来い。続きは客間で話すとしよう……何故フォルテが一緒なのかも知りたいしな」
そう言って席を立つエクスカリドさん……その後を追った。
―――――――――――――――――――――――――
「そうか……『森精国』が……」
「ああ。シャルはしっかり取り返したし、被害は俺の右腕が吹っ飛んだ程度だ」
「………………なるほど。その妙な右腕は、本当の右腕の代わりという事か」
思いのままに動く義手を見せつけ……奇妙な物を見るように、エクスカリドさんが眉を寄せる。
「『森精国』での出来事は理解した……それで、フォルテが一緒にいるのは何故だ?」
「……なんか付いてきた」
「……俺は、あいつの本当の性格を知っている……正直に話して構わん」
「なんか罵倒したら喜んで付いてきた」
「だろうな……何となくわかっていたが」
腕を組み、苦笑を浮かべる。
なんだ、エクスカリドさんはフォルテの性格を知ってたのか。
「1年ほど前の事だったか……俺が『水鱗国』に行った際、フォルテと出会った」
「……1年も前なのか」
「ああ……爽やかに挨拶をして、常に笑みを絶やさないフォルテは……第一印象としては、かなりのものだった」
俺もだよ。俺も第一印象は完璧な女だなーって思ってたんだよ。
「だが……なんというか……俺が部下に厳しい言葉を浴びせているのを見ると、嬉しそうに頬を赤らめてな……」
「1年前から変態だったのか」
「聞こえてますわよ、ご主人様……そ、そうやってコソコソ悪口を言われるのも、なかなかそそりますわね……うへ、うへへへ……♪」
なんか……もう……大丈夫じゃないな、こいつ。
「……お前も大変そうだな」
「わかってくれるか……」
なんだよ。めっちゃ良い人じゃないか、エクスカリドさん。
「……それで。どうするつもりだ?」
「んあ?何がだ?」
「『森精国』のバカ王子だ……おそらく、あいつはシャルロットの事を諦めないだろう……もしかしたら、『種族戦争』に発展するかも知れないぞ?」
「『種族戦争』……?なんだそりゃ」
「は?……お前、『種族戦争』を知らないのか?」
いや、んな事言われたってサッパリだっての。
「『種族戦争』……他種族同士で対立し、戦争する……その名の通りですわ♪」
会話を聞いていたらしく、フォルテが俺の後ろから説明してくれる。
「……って事は……あいつは、『ゾディアック』やら『魔王』やらで忙しいこの時期に、わざわざ戦争を起こそうってのか?」
「はい、そういう事ですわ♪……しかし、『種族戦争』となっても、特に問題はないかと」
「は?なんで?」
「簡単な話ですわ。『人国』は、『森精国』と『妖精国』、それと『鬼国』を除く、4国と同盟を結んでおります……しかし、あの森の猿どもは、他国との接触を好まず、どことも同盟を結んでおりません。もしも戦争となれば……おわかりですわよね♪」
確かに……こっちには他国の援助があるが、『森精国』にはない。
もしも戦争になっても有利って事か。
……ってかこいつ、前々から思ってたけど、エルフの事、嫌いすぎだろ。
「なあ、『水鱗族』って『森精族』と何かあったのか?仲悪いのか?」
「……あ、ご主人様は知りませんでしたわね……実は3年前、『魔王』が現れる寸前まで『水鱗国』と『森精国』は、『種族戦争』していたのですわ♪」
「……そうだったのか」
「はい♪あ、そういえば『獣国』と『竜国』も『種族戦争』をしていましたわ♪」
……なるほど。
ライガーさんとバハムートさんが仲が悪かったのは、それが原因だったのか。
「『ゾディアック』や『魔王』が現れて、『鬼国』が簡単に滅ぼされてしまい、『戦争している場合ではない。今こそ力を合わせるべきだ』となったのですが……もちろん、つい先日まで戦争していた国が仲良くできるわけもなく……そのままズルズルと、お互いに警戒しあっている……というわけですわ♪」
「……なんか面倒臭いな、異世界」
「はい♪とても面倒臭い状況でございますわ♪」
「……異世界……だと?お前、今異世界と言ったか?」
俺の何気ない言葉に、エクスカリドさんが食いついた。
「あー……まあ、そのままの意味だ」
「異世界……まさか、お前が伝承の『勇者』なのか……?!」
「ん、そんな感じだ」
驚愕に目を見開くエクスカリドさん……まあそれもそうだろう。
だって、今まで謎に包まれていた『勇者』を自称する者が現れたのだから。
「……フォルテ」
「はい。ご主人様は『勇者』ですわ♪……『種族戦争』を知らないなんて……それこそ、異世界から来ない限り、そんな人はいないですもの♪」
「……確かにな……お前と手合わせした時、妙な名前だと思ったが、異世界では普通の名前なのか」
「んー……まあ、全国探せば百鬼 樹なんてたくさんいると思うけど」
「イツキさんっ、構ってくださいっ!」
と、かなり真面目な話をしている所にシャルが飛び付いてくる。
さすがに振り払う事はできず―――左腕に抱き付くシャルを、無言で受け入れる。
「えへへ……イツキさんの態度が優しいです……この調子だと、夜の営みも―――」
「ちょっと黙ってな。真面目な話をしてるから」
俺の言葉に、むくれたように頬を膨らませ……ギュッと力を入れる。
無視してエクスカリドとフォルテと話を続けようとして―――ズシッと、義手に重さが乗った。
なんだ?と思って見れば……ランゼが顔を真っ赤にしながら抱きついている。
「……何してんの?」
「別に」
いや、別にじゃねぇよ。
「……では、ワタクシは背中を……♪」
どこか興奮したようなフォルテが、俺の背中に―――
「……あら♪」
「悪いなフォルテ……我に譲ってくれ」
抱き付く前に、ウィズが俺の背中に飛び付いた。
「ふん……罪な男だな」
「……うるせえ」
「顔が真っ赤だぞ?」
「……黙ってろ」
茶化すようなエクスカリドさんの言葉に、即座に反抗する。
……いや、自分でも顔が赤いのがわかる。だってめっちゃ顔面熱いもん。
「しかし……俺的には、フォルテの立ち位置がわからぬのだが?」
「それは……どういう事でございますか?」
「……お前がイツキの事を、どう思っているのかがわからん。お前の性格は……少々特殊だからな」
……言われてみれば。
フォルテと出会って……まだ2週間経ったか、経っていないくらいだ。
だが、フォルテの俺に対する態度は……1、2週間程度の態度ではない。
まるで、心の底から信じているような―――
「そうですわね……エクスカリドは、『英雄』を覚えています?」
「……忘れられるわけ、ないだろう……嘘偽りしかないあいつでも、『騎士国』を救ってくれた『英雄』なのだから」
「……あの人が……『騎士国』の『英雄』、ソラ・ヴァルキリアが死んだのは……ワタクシのせいですの」
全員の視線が、フォルテに集中する。
「……ワタクシは……彼に、恋していました」
「……まさか、あいつが頻繁に『水鱗国』に行っていたのは……」
驚きに震えるエクスカリドさんの声に、フォルテが無言で頷いた。
「……あの日……『騎士国』に『蠍座』が攻めてきた日……ワタクシは、『騎士国』にいましたわ」
「なっ……そんなの、俺は聞いていない―――」
「はい……お忍びでソラ様に会いに行ってましたので……」
いつものニコニコ笑顔はどこへ……表情を黒く染めたフォルテが、絞り出すように続ける。
「『ゾディアックセンサー』が鳴り響く『騎士国』の中……ワタクシが出会ったのは、ソラ様ではなく、あの忌々しい『蠍座』の『スコーピオン』でしたわ……」
「……そうか」
「ソラ様は懸命に戦いました。しかし、相手の持つ毒にやられてしまい……」
その時の事を思い出したのか、どんどん顔が青くなっていく。
「……死ぬ寸前、彼はワタクシと約束してくれましたわ」
「……ほう……どんな約束だ?」
「『オレは、必ず、お前に会いに戻ってくる……この『冥刀』に誓って……』と」
「……いや待て」
思わず突っ込んでしまった。
「どうかされましたか?」
「なんでそこで『冥刀』が出るんだよ」
「……『冥刀』を使えるのは、ソラ様だけでしたので……『冥刀』を使える者が現れれば、それはソラ様ですわ」
……なるほど。
そういや『光魔法』って使える人がほとんどいないんだったか。
『冥刀』は『光魔法』が使える人しか使えない。
だから『冥刀』を約束に出したのだろう。
「……そうだったのか……あいつは、フォルテのために戦ったのか」
「……その後、ワタクシはずっとソラ様を待ち続けました……そして、とうとう見つけたのですわ!」
ウィズに割り込むようにして、フォルテが後ろから抱きついた。
「『冥刀』を携えた、黒髪黒目の方……そう、ご主人様を見つけたのです」
「……………」
―――恋は盲目、という言葉がある。
相手の良い所ばかりに目が行って、悪い所が見えなくなる……って感じの意味だった気がする。
今のフォルテは、まさにそれだ。
刀と黒髪、そして黒目……それだけでソラってやつと同一視するなんて……
お前は間違っている。人違いだ。そう言ってやりたかった。
だけど―――
「もう二度と……二度と離れませんわ、ご主人様っ」
嬉々とした笑みを見せるフォルテを前に。
―――誰が『人違い』なんて言えるだろうか。
「おう……久しぶりだな、エクスカリドさん」
翌日の早朝―――俺たちは、『騎士国』にやって来た。
俺は1人で来るつもりだったんだが……こいつらが付いて行くと言って聞かないため、仕方がなく連れてきたのだ。
「しかし……なかなか面白いやつが一緒にいるではないか?」
「お久しぶりですわね、エクスカリド」
「……『水鱗国』の女王を連れているとは……何があったんだ?」
不気味に輝く『魔眼』がフォルテを捉える。
「ワタクシが誰と一緒にいようと、ワタクシの勝手ですわ♪ご主……この方は、ワタクシの望みを叶えてくれる方ですから♪」
「ふざけろ変態マーメイド……誰がお前の望みを叶えるって?」
「あ、はぁ……変態マーメイドだなんて……♪」
ああ、こいつの望みってこれか。
「……まあいい。話を聞かせてもらおうか……イツキ」
おっと、初めて名前で呼ばれたな。
「んー……どっから話すかな」
「簡単にで良い……こっちに来い。続きは客間で話すとしよう……何故フォルテが一緒なのかも知りたいしな」
そう言って席を立つエクスカリドさん……その後を追った。
―――――――――――――――――――――――――
「そうか……『森精国』が……」
「ああ。シャルはしっかり取り返したし、被害は俺の右腕が吹っ飛んだ程度だ」
「………………なるほど。その妙な右腕は、本当の右腕の代わりという事か」
思いのままに動く義手を見せつけ……奇妙な物を見るように、エクスカリドさんが眉を寄せる。
「『森精国』での出来事は理解した……それで、フォルテが一緒にいるのは何故だ?」
「……なんか付いてきた」
「……俺は、あいつの本当の性格を知っている……正直に話して構わん」
「なんか罵倒したら喜んで付いてきた」
「だろうな……何となくわかっていたが」
腕を組み、苦笑を浮かべる。
なんだ、エクスカリドさんはフォルテの性格を知ってたのか。
「1年ほど前の事だったか……俺が『水鱗国』に行った際、フォルテと出会った」
「……1年も前なのか」
「ああ……爽やかに挨拶をして、常に笑みを絶やさないフォルテは……第一印象としては、かなりのものだった」
俺もだよ。俺も第一印象は完璧な女だなーって思ってたんだよ。
「だが……なんというか……俺が部下に厳しい言葉を浴びせているのを見ると、嬉しそうに頬を赤らめてな……」
「1年前から変態だったのか」
「聞こえてますわよ、ご主人様……そ、そうやってコソコソ悪口を言われるのも、なかなかそそりますわね……うへ、うへへへ……♪」
なんか……もう……大丈夫じゃないな、こいつ。
「……お前も大変そうだな」
「わかってくれるか……」
なんだよ。めっちゃ良い人じゃないか、エクスカリドさん。
「……それで。どうするつもりだ?」
「んあ?何がだ?」
「『森精国』のバカ王子だ……おそらく、あいつはシャルロットの事を諦めないだろう……もしかしたら、『種族戦争』に発展するかも知れないぞ?」
「『種族戦争』……?なんだそりゃ」
「は?……お前、『種族戦争』を知らないのか?」
いや、んな事言われたってサッパリだっての。
「『種族戦争』……他種族同士で対立し、戦争する……その名の通りですわ♪」
会話を聞いていたらしく、フォルテが俺の後ろから説明してくれる。
「……って事は……あいつは、『ゾディアック』やら『魔王』やらで忙しいこの時期に、わざわざ戦争を起こそうってのか?」
「はい、そういう事ですわ♪……しかし、『種族戦争』となっても、特に問題はないかと」
「は?なんで?」
「簡単な話ですわ。『人国』は、『森精国』と『妖精国』、それと『鬼国』を除く、4国と同盟を結んでおります……しかし、あの森の猿どもは、他国との接触を好まず、どことも同盟を結んでおりません。もしも戦争となれば……おわかりですわよね♪」
確かに……こっちには他国の援助があるが、『森精国』にはない。
もしも戦争になっても有利って事か。
……ってかこいつ、前々から思ってたけど、エルフの事、嫌いすぎだろ。
「なあ、『水鱗族』って『森精族』と何かあったのか?仲悪いのか?」
「……あ、ご主人様は知りませんでしたわね……実は3年前、『魔王』が現れる寸前まで『水鱗国』と『森精国』は、『種族戦争』していたのですわ♪」
「……そうだったのか」
「はい♪あ、そういえば『獣国』と『竜国』も『種族戦争』をしていましたわ♪」
……なるほど。
ライガーさんとバハムートさんが仲が悪かったのは、それが原因だったのか。
「『ゾディアック』や『魔王』が現れて、『鬼国』が簡単に滅ぼされてしまい、『戦争している場合ではない。今こそ力を合わせるべきだ』となったのですが……もちろん、つい先日まで戦争していた国が仲良くできるわけもなく……そのままズルズルと、お互いに警戒しあっている……というわけですわ♪」
「……なんか面倒臭いな、異世界」
「はい♪とても面倒臭い状況でございますわ♪」
「……異世界……だと?お前、今異世界と言ったか?」
俺の何気ない言葉に、エクスカリドさんが食いついた。
「あー……まあ、そのままの意味だ」
「異世界……まさか、お前が伝承の『勇者』なのか……?!」
「ん、そんな感じだ」
驚愕に目を見開くエクスカリドさん……まあそれもそうだろう。
だって、今まで謎に包まれていた『勇者』を自称する者が現れたのだから。
「……フォルテ」
「はい。ご主人様は『勇者』ですわ♪……『種族戦争』を知らないなんて……それこそ、異世界から来ない限り、そんな人はいないですもの♪」
「……確かにな……お前と手合わせした時、妙な名前だと思ったが、異世界では普通の名前なのか」
「んー……まあ、全国探せば百鬼 樹なんてたくさんいると思うけど」
「イツキさんっ、構ってくださいっ!」
と、かなり真面目な話をしている所にシャルが飛び付いてくる。
さすがに振り払う事はできず―――左腕に抱き付くシャルを、無言で受け入れる。
「えへへ……イツキさんの態度が優しいです……この調子だと、夜の営みも―――」
「ちょっと黙ってな。真面目な話をしてるから」
俺の言葉に、むくれたように頬を膨らませ……ギュッと力を入れる。
無視してエクスカリドとフォルテと話を続けようとして―――ズシッと、義手に重さが乗った。
なんだ?と思って見れば……ランゼが顔を真っ赤にしながら抱きついている。
「……何してんの?」
「別に」
いや、別にじゃねぇよ。
「……では、ワタクシは背中を……♪」
どこか興奮したようなフォルテが、俺の背中に―――
「……あら♪」
「悪いなフォルテ……我に譲ってくれ」
抱き付く前に、ウィズが俺の背中に飛び付いた。
「ふん……罪な男だな」
「……うるせえ」
「顔が真っ赤だぞ?」
「……黙ってろ」
茶化すようなエクスカリドさんの言葉に、即座に反抗する。
……いや、自分でも顔が赤いのがわかる。だってめっちゃ顔面熱いもん。
「しかし……俺的には、フォルテの立ち位置がわからぬのだが?」
「それは……どういう事でございますか?」
「……お前がイツキの事を、どう思っているのかがわからん。お前の性格は……少々特殊だからな」
……言われてみれば。
フォルテと出会って……まだ2週間経ったか、経っていないくらいだ。
だが、フォルテの俺に対する態度は……1、2週間程度の態度ではない。
まるで、心の底から信じているような―――
「そうですわね……エクスカリドは、『英雄』を覚えています?」
「……忘れられるわけ、ないだろう……嘘偽りしかないあいつでも、『騎士国』を救ってくれた『英雄』なのだから」
「……あの人が……『騎士国』の『英雄』、ソラ・ヴァルキリアが死んだのは……ワタクシのせいですの」
全員の視線が、フォルテに集中する。
「……ワタクシは……彼に、恋していました」
「……まさか、あいつが頻繁に『水鱗国』に行っていたのは……」
驚きに震えるエクスカリドさんの声に、フォルテが無言で頷いた。
「……あの日……『騎士国』に『蠍座』が攻めてきた日……ワタクシは、『騎士国』にいましたわ」
「なっ……そんなの、俺は聞いていない―――」
「はい……お忍びでソラ様に会いに行ってましたので……」
いつものニコニコ笑顔はどこへ……表情を黒く染めたフォルテが、絞り出すように続ける。
「『ゾディアックセンサー』が鳴り響く『騎士国』の中……ワタクシが出会ったのは、ソラ様ではなく、あの忌々しい『蠍座』の『スコーピオン』でしたわ……」
「……そうか」
「ソラ様は懸命に戦いました。しかし、相手の持つ毒にやられてしまい……」
その時の事を思い出したのか、どんどん顔が青くなっていく。
「……死ぬ寸前、彼はワタクシと約束してくれましたわ」
「……ほう……どんな約束だ?」
「『オレは、必ず、お前に会いに戻ってくる……この『冥刀』に誓って……』と」
「……いや待て」
思わず突っ込んでしまった。
「どうかされましたか?」
「なんでそこで『冥刀』が出るんだよ」
「……『冥刀』を使えるのは、ソラ様だけでしたので……『冥刀』を使える者が現れれば、それはソラ様ですわ」
……なるほど。
そういや『光魔法』って使える人がほとんどいないんだったか。
『冥刀』は『光魔法』が使える人しか使えない。
だから『冥刀』を約束に出したのだろう。
「……そうだったのか……あいつは、フォルテのために戦ったのか」
「……その後、ワタクシはずっとソラ様を待ち続けました……そして、とうとう見つけたのですわ!」
ウィズに割り込むようにして、フォルテが後ろから抱きついた。
「『冥刀』を携えた、黒髪黒目の方……そう、ご主人様を見つけたのです」
「……………」
―――恋は盲目、という言葉がある。
相手の良い所ばかりに目が行って、悪い所が見えなくなる……って感じの意味だった気がする。
今のフォルテは、まさにそれだ。
刀と黒髪、そして黒目……それだけでソラってやつと同一視するなんて……
お前は間違っている。人違いだ。そう言ってやりたかった。
だけど―――
「もう二度と……二度と離れませんわ、ご主人様っ」
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