あえて鈍感のふりをしてみた

山田太郎

第4話


〈春視点〉

「あれ、父さんと母さんいない…」

私たちは体育館をでて兄さんの教室前まで来てました。
兄さんはホームルーム中で、私はその様子を見てたんですが、父さんと母さんが居なくなってしましました。
さっきまで隣にいたはずなんですが…

「はぁ、何か一言言って欲しかったです。」

すると、私のスマホが震えました。
どうやら母さんからLINEが来たようです。

[ごめん!]
[母さん父さんと一緒に今日の夜ご飯の材料買ってくる!]
[春は裕太と2人で一緒に帰って!]
[お昼は適当に食べてね]

なんなんですか本当に…
ま、まぁ兄さんと一緒に帰るのも久しぶりなので、それは楽しみですが…

そして私が母さんにLINEを返していたところに兄さんが来ました。

「おっ春、待たせちゃってごめんね。父さんたちは?」

「今日の夜ご飯の準備で先に出ました。私たちで帰ってとのことです。あと、昼は何か適当に食べてとのことです。」

「ん、了解。じゃ、帰ろうか。」

兄さんは嫌な顔1つせずにそう言ってくれました。
せっかくの兄さんの入学式なのに家まで歩くのは疲れるでしょうに。

「兄さん、クラスの人と交流とかいいんですか?」

周りを見ると何人かはなにやら友達と喋っているようですが。

「いや、俺のクラス知り合い1人もいないし、さすがに今日いきなりで仲良くなった人も残念ながらいないからね。」

まあ初日でいきなり仲良くなるのはなかなかないですよね。いきなり喋りかけてそこから親友ポジになるのなんてドラマの中だけですもんね。

「あと、春待たせてもいけないしさ。」

な!…もう、兄さんはいきなりこういう事を言います。これに私がどれだけ舞い上がってしまうのかわかっているんでしょうか。

「…兄さんのばか。」

「え!なんで俺怒られたの?」

「鈍感、ばか、もういいです。」

ほんと兄さんは鈍感です。少しは気づいてくれてもいいじゃないですか…

「えぇ…まあもう帰ろうか。」

ほんと、いつになったら兄さんは気づいてくれるんでしょうか。
そしていつになったらあの気持ち悪いにやけグセが治るのでしょうか。






実は兄さんの行く高校は私の通っている中学校の少し奥へ行ったところで、かなり近いのです。
年に一回、札幌高校と私の通っている学校で交流があるくらいです。
なので、帰り道も私の通学路とさほど変わりません。

「もうさ、春ほんとに俺のこと見すぎ。あと、はしゃぎすぎ。」

「な、何言ってるんですか!別に、兄さんのことずっと見てたわけでもないですし!あと、はしゃいでないですから!」

ほんとになんでみんな同じこと言うんですか!

「ふーん。まあいいけどさ。」

なんですかその何か言いたげな目は…

きゅるるる

うっ…お腹なってしまいました。兄さんに聞かれてませんよね。
うん、大丈夫そうです。聞かれてたらすごい恥ずかしいので。

「あ!ねえ春、そこのカラオケ行かない?久しぶりに春と行きたいな。俺の入学祝いだと思って、ね?」

兄さんとカラオケですか。確か去年は1回も行けてませんでしたから本当に久々ですね。

「はい、いいですよ。」

「よし、じゃあ行こっ!」

なんか兄さん子どもみたいです。こういう兄さんかわいいですね。空腹はまあなんとかしましょう。





〈裕太視点〉

入学式が無事おわり、あとはあやっちのホームルームが終われば家に帰れる。
春たち待たせてるから早く終わって欲しいが、我慢我慢。

「以上でホームルームを終わります。みなさん、また明日から頑張りましょう!」

お、終わったな。てかやっぱみんな初日は静かだな。誰も何も喋らないもんな。

「春たちはーっと…おっ春、待たせちゃってごめんね。父さんたちは?」

「今日の夜ご飯の準備で先に出ました。私たちで帰ってとのことです。あと、昼は何か適当に食べてとのことです。」

あー、なるほどな。車で帰れないのは残念だけど、春と帰れるからいいか。久しぶりだな、春と帰るのも。

「ん、了解。じゃ、帰ろうか。」

なぜか申し訳なさそうな顔をしてるけど、春は仕方ないじゃん。あと俺春と2人で帰るのもけっこう楽しみだし。

「兄さん、クラスの人と交流とかいいんですか?」

おおっと唐突ですね。なに、俺にぼっちざまぁとか言いたいの?まあ春はそんなこと絶対思わないだろうけどさ。

「いや、俺のクラス知り合い1人もいないし、さすがに今日いきなりで仲良くなった人も残念ながらいないからね。」

ここ前通ってた中学の近所なのに、元同級生でここに通う人めちゃくちゃ少ないもんな。あと、ここで春に爆弾ぶつけてみるか。

「あと、春待たせてもいけないしさ。」

おっと春顔がすごい赤くなった。かわいいなほんと。

「…兄さんのばか。」

安定の照れ隠し罵倒だね。ほんとかわいすぎ。まあ、ここは鈍感なふりをして

「え!なんで俺怒られたの?」

春は少し呆れた顔をして俺を見た。
俺にやけてないよね?大丈夫だよね?

「鈍感、ばか、もういいです。」

もういいっていったのに、まだなにかブツブツ言ってるけどまあ俺への罵倒及び惚気だろうね。罵倒2割惚気8割ってとこかな?

「えぇ…まあもう帰ろうか。」

あ、いつ気付くんだろうって聞こえた。もう気づいてるよ。気づいてないフリしてるけど。むしろいつ気付くの?あ、にやけちゃった。






これさ、もしかしたら春と一緒に登校もできるよね。下校は時間合わないかもだけど。通学路全く同じだもん。
まあそれは今度提案してみるか。今は春にあの時のこと言わなきゃな。

「もうさ、春ほんとに俺のこと見すぎ。あとはしゃぎすぎ。」

「な、何言ってるんですか!別に、兄さんのことずっと見てたわけでもないですし!あと、はしゃいでないですから!」

あれがはしゃいでないはちょっとね。俺の隣に座ってた人もなんか微笑ましそうに春のことと俺のこと見比べてたもん。恥ずかしいわ…

「ふーん。まあいいけどさ。」

まあ多分俺も春の卒業式に同じことしそうで怖いけど。いや、やっぱあそこまでではないわ。うん、あれはない。

きゅるるる

ん?あぁ、もう昼過ぎてるしね。俺も腹減ってきたし。こんな時間まで春につき合わせちゃってるしな。っていってもこの通りって店ないんだよね。
あ、そこにカラオケあるな。そこでなんか色々頼んで春に食べさせよっか。

「あ!ねえ春、そこのカラオケ行かない?久しぶりに春と行きたいな。俺の入学祝いだと思って、ね?」

昼ごはんカラオケって、どうなんだろう。まあ、気づかないよね?いや、さすがに露骨すぎたかな?いやでもカラオケだよ?

「はい、いいですよ。」

「よし、じゃあ行こっ!」

春とカラオケほんと久しぶりだな。昼ごはんのために見つけたカラオケだったけど、けっこう楽しみになってきた。

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