異世界転移で無能の俺 ─眼のチートで成り上がる─

ユウ(ゲーム好き)

第18話 温まる心

ここは樹海の中。しかも入ってすぐというわけではなくそれなりに深い。目的がなければ大人でも入りはしないだろう。しかも、王女と言うだけあって服装もかなり綺麗なドレスだ。

女騎士の鎧も綺麗に装飾されており、騎士団のように見える。そんな二人が樹海の中に入るほどの用があるとは思えない。しかも、土が顔や服など様々なところについている。

俺達もそれなりについてるが、彼女達ほどではない。おそらく、急いで駆け込んだ。樹海の樹木を掻き分ける暇などないほどに。そして、さっきの盗賊。まぁここまで来たら予想はつくが一応聞いておく。


「私はここ近辺の調査に来ました。すると、王女も近くの村や町の様子を見たいと言い出し一緒に行くことにしました。王女はこう言ったら止まらない人なので。」
「ちょっと!私を我儘みたいに言わないでよ!」
「実際そうじゃないですか。」


すると、王女は開いた口が塞がらないような顔をし、女騎士はその顔を見て不思議そうに首を傾げている。ああ、この人少し天然か。そう思った。


「で、帰りの馬車の途中盗賊に襲われ、私達は振り切ろうと馬車を捨ててこの樹木に駆け込んだのですが振り切れず囲まれた時あなたに助けられました。」
「説明ありがとう。えーと名前まだ聞いてなかったな。」
「も、申し訳ありません。私はプルム・インペリアル様の直属の護衛ミールと申します。以後お見知りおきを。」
「そうか、じゃあそろそろ樹海から抜け出すとしますか。」


時間は分からんが、そろそろ夜になりそうな気がした。とはいえ根拠はなくただの勘だかな。


「でもどういけばいいの?」
「安心しろ。地図はあるから。で、外はこっちか。離れてろ。」


すると、ルクスが二人を俺から少し離してくれた。さっきと同じ方法でやるが彼女達に危害がある可能性があるからな。俺は瞳の色をルビーレッドにして、焼き尽くす。


「さて、行くか。」
「えっ!?今どうやったの!?魔方陣も出てないのに魔法が。」
「ああ、これ魔法じゃないから。」
「はっ!?」


これは能力だから魔法ではない。ゆえに魔方陣は発動しない。戦闘ではこれはメリットになる。能力発動時瞳の色が変わることさえ気づかれなければ初見殺しが可能だからな。無論説明する気はない。

俺とルクスの目的は神達との全面戦争。敵になる可能性なら普通にある。無論彼女達と戦いたくはないがな。

樹海から出た頃には、太陽は夕陽となり向こうの山に沈もうとしていた。そして、傷だらけの馬車が俺達を待っていた。すると、プルムはその馬に抱きついた。


「ローシャ!待っていてくれたの。」


大粒の涙を流しながらしがみつく。この馬はローシャというらしい。ローシャはなついているようで、プルムの涙を舐めていた。


「皆、この馬車に乗って帰りましょ。」


嬉しそうに笑いながら振り返った。俺は瞳の色をエメラルドグリーンにしローシャの傷を治した。すると、プルムは驚いた。プルムは声を発さなかったが、俺が乗ろうとすれ違ったとき。


「ありがとう。ユウ」


小声で囁いた声だったが心は温まった。俺は何も言わず口角を上げた。



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