悪役令嬢は趣味に没頭します
閑話 ノアvsルーフィス
 
*ルー視点
僕はこいつが気に入らない。
黒猫の形をした精霊。存在として見れば何か大きな違和感があり、その整いすぎた顔は恐怖させ感じる。
なんなんだこいつ。
そんな意味不明な生物が、少し抜けてて、馬鹿みたいに優しくて、綺麗で、たった一人の姉の近くにいる。
イライラする。
いつの間にかリア姉様は先に部屋で寝てしまったようだが、まだ俺たちは扉の前で睨み合っていた。
「お前、なんでリア姉様にしたんだよ。助けられたからか?でも、それだけの理由で盟約なんか結ばないだろ。何を企んでる」
こんな力のある精霊が何故、公爵令嬢を選ぶ必要があったのか。
他にも権力の強い王族や、魔力が高い魔導師に付けばいいものを。
「…お前になんか分からない。リアは俺の唯一だ。」
くそ…わかりたくもない。
なんでリア姉様はこんなやつを近くに置くのか。
「………盟約してしまえば、俺とリアは死ぬまで一緒だ。それは絶対に変えられないこと。諦めろチビ」
確かにこいつの言う通り。盟約を結んだものは死ぬまで精霊と居ることになる。
「俺はチビじゃない。……お前、絶対にリア姉様を傷つけないか?泣かせないか?守れるのか?」
「当たり前だ。誰からも守ってみせる。」
自信満々に答える猫は嘘はついてないようで。腑に落ちないが、仕方がない。
まだ、今の自分にはリア姉様を守る力も、頭脳も、魔法もないのだから。
俺は今、家庭教師に勉学を学び、騎士に剣術を習って体力をつけ、魔力もあるらしいから、いずれは魔導師を呼んで魔法も学ぶつもりだ。
だが、それでリア姉様を守ることが出来るようになるのは数年先だろう。
その間、その間だけこいつがリア姉様の近くにいることに目をつぶろうと思う。
まだ、今の俺じゃダメなんだ。
リア姉様に何かあった時、助けられるのは今の自分では無理だ。
そう自分に言い聞かせ、拳に力を込める。
「…わかった。」
そうして俺は自分の部屋に静かに入る。
ベットにはスヤスヤと眠るリア姉様が見えた。
「おい、入るならさっさと入れクソ猫。」
スルッと扉から入ると当たり前のようにリア姉様の隣に飛び乗る。
急に淡く光ったかと思えば奴は人間になっていた。
愛おしそうにリア姉様を見つめている。
くっそ…胸糞悪い。
腹が立つが仕方がない。こいつはリア姉様の盟約した精霊なんだから。
さて、寝るかと自分もベットに入ろうとする。が、俺が寝ようとしている場所をクソ猫が陣取っていた。
「おい、お前は床で寝ろ。」
「お前が寝ろよ」
この野郎…まじで殴りたい。
憤慨する理性を抑え、俺のベッドで眠るリア姉様を見つめる。
リア姉さまは少し寝返りを打ち、クソ猫とは逆の壁方向へ体を向けた。
その瞬間を見逃さなかった俺は、すぐさま姉様の横からベッドに潜る。
舌打ちが聞こえたが気にしない。
目の前の姉様を見つめる。
人形のように色白で、銀髪が月明かりに照らされてキラキラしているリア姉様。
なんだか見ているだけで、先程まで荒れていた心が癒されてくるようだった。
思わず少しばらけた前髪を梳くように整える。
すると、刺さるような視線と地べたを這いずり回るような唸り声が聞こえた。
「触るな」
「うるさいクソ猫、静かにしろ」
リア姉様を起こさないように小声でだがまた、言い合いが始まる。
しばらくそうしていたらリア姉様は起きてしまったようで、銀に縁どった瞼が少し開かれた。
その瞬間俺も、クソ猫も静かになる。
リア姉様はぼぉーっとした後、クソ猫の頭に手をやって自分の横に寝かせ、俺の手を握ってきた。
「ふたりとも……ねるよ」
俺は手を繋がれたまま、クソ猫はリア姉様の体にぴっとりとくっつきながら。
そのまま眠りに落ちてしまった。
☆
「なんで、ノアは人間の姿なの?」
「…なんとなく」
「ふーん、まぁどっちでもいいのだけど。ベットも広いから子供が2.3人寝ても狭くないし…」
ぼんやりとした視界からリア姉様とクソ猫の会話が聞こえる。
「あっ、ルー。起きた?」
「おはよう、リア姉様」
「おはようっ」
朝日よりも眩しい笑顔だった。
あぁ、俺はこの笑顔を守れるようになりたい。
そう思って今日も頑張るのだ。
「……あ、リア姉様!こいつと風呂入ったってどういうことなの?」
「うわっ、思い出しちゃった……」
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コメント
病んでる砂糖
ノアもルーくんも可愛すぎだろ