異世界に転生したのでとりあえずギルドで最高ランク目指します

りゅうや

戦闘、そして失態

 
 動きが鈍くなったガーズを全員で警戒をおこたらずに攻撃を仕掛ける。
 違和感がないように気をつけながら能力を使うことが出来たかを男たちの方を千里眼で確認する。
 男たちの表情は全員唖然としている。
 どうやらバレずにいるようだが、まだ気をつけながら攻撃を続けないとな。

「おらぁっ!」
「ぐぁっ ︎」

 そんなことを考えながら全力で剣を振り下ろしてガーズの片方の牙を切り落とした。

「う、うがぁぁぁっ!」
「うおっ ︎」

 牙を切り落としたら急に暴れ出し突進し始めた。
 能力のおかげで鈍い状態が続いているらしく突進のスピードは最初に比べてかなり遅い。そのため容易に避けることが出来た。
 ブルスさんたちはその突進を無事に避けてからすぐに追いかけ、まだガーズが口にくわえている縄を掴みに走る。
 俺も先読みをして剣を構える。
 遅くなっているとはいえ逃げ続けられると面倒だし、脚を狙うか。
 突進してきたガーズとすれ違う際にまず左前脚を左から右上にかけて入り横八の字斬りを三回、次に後ろ足のけん辺りを深めに斬る。
 これで少なくとも後ろ左足は使えないだろう。
 とりあえず突進を、良ければさらなる動きを封じることが出来たと思う。
 ほぼ勝ちが確定したな。
 ..... ︎

「ぐはっ ︎」

 そう安心していると横から何かを感じてそちらの方を向いたと同時に苦痛の声が横から聞こえた。
 最初に感じた何かの方にはニコルがどこから取り出したのか弓矢を構えていた。
 それに嫌な予感を覚え声のした方を見ると片膝を突いているワオルさん。彼の右腹部に矢が突き刺さっている。

「あ....くっ、てめえ!どういうつもりだ ︎」
「......」

 ニコルは黙って次の矢を引っ張る。
 標的は....アルか!
 分かったと同時に糸から手を離し、矢がアルの方へと飛んで行った。間に合わない!

「あ ︎...ひっ ︎」

 アルもニコルの方を向いていて自分が狙われると分かって逃げようとし石につまずいて転んでしまった。
 だがそのおかげでニコルの放った矢は倒れたアルの顔の横へと刺さった。
 アルが何ともないのを確認してから手に魔力を多めに流し、地面を蹴りニコルの元へ近づく。
 相手も当然俺のことに気がつき矢で狙ってきたが動きや動体視力などは俺の方がまさっているらしく当たらない。予想して放っても俺も相手の動きを見ているため躱せる。
 五回ほど飛来してくる矢を避け、ニコルの元まで辿り着いた。

「....ふっ、だからどうした?ここまで辿り着いたからと言って勝てるのか?」
「「「「「へへへへ」」」」」

 武器を抜いて下卑た笑みを浮かべながら俺を取り囲むように陣形を並べて行く。

「さあこうなってはどうしようもあるまい?」
「小僧 ︎」

 ニコルはゆっくりと弓を上げ、糸を引く。

「自分の無計画の行動で命を落とす事を後悔しながら死、ぐぁっ ︎」

 グダグダとしゃべっているので地面を蹴り低い姿勢でやつの腹めがけて右ストレートを決めた。
 ニコルは十数メートルほど吹っ飛んでからさらに地面を掘りながら四メートルほど飛んで行った。結構強めに殴ったから内臓にもかなりのダメージがいっているかもな。

「無計画?…そうだな、確かに計画してなかったよ。お前が邪魔して来るのは想定外だった。だから仲間が危ない目に遭った。そういうのは俺が一番配慮しておかないといけなかったのにしてなかった。だからあんたの言う通り、無計画な行動だったよ」

 思わず歯ぎしりを立ててしまった。
 背後でニコルの仲間たちがジリジリと寄って来ている。
 俺は剣を鞘に納め、宝物庫にしまう。そしてクレアウッドマンの木材をエデルさんに頼んで加工して作ってもらった木刀を取り出す。

「死ね!小僧!」

 剣を構えて振りかぶろうとしている男たちの空いた胴へ木刀で突きを入れる。
 三人はそれを躱したが、残り四人はまともに喰らって腹を抑えて転げ回っている者たちや気を失った者、吐いている者と別れた。
 そして突きを躱した三人にはさらに追い討ちを数回かける。その三人はそれなりの腕だったようだがそれでも俺の方が速さや多少の技量でうち勝った。
 キリに剣術などを教わっておいたのが功を成したようだ。

「なっ ︎ああっ....」
「手加減はしたから死にはしない。後はお前だけだ」
「ひっ ︎」

 木刀をいまだ座っているニコルの顔面まで持って行ってそう脅す。
 女性の方は別にいいだろう。警戒していればすぐに対処出来るだろうし。

「...くっ!俺に歯向かえばどうなるか分かっているのか ︎れ!ガーズ!こいつらを殺せ!」

 ニコルがそう叫んでガーズの方を向く。しかしガーズは動こうとしない。

「?何をしてる!早くこいつらを殺せ!」
「無駄だ、完全に動けなくしたからな」
「な、何を言っている?動けなくした?そんな馬鹿なことがあるか!貴様はずっとここにいたじゃねえか ︎それなのにどうやってあそこにいるガーズを、んぐっ ︎」

 しゃべり続けるニコルの口を左右の頬を右手でわし掴んで黙らせる。

「出来るんだよ、つべこべ言ってないでガーズを倒したんだから俺らをとっととボスの所へ連れて行け」

 手に力を入れる。

「ふぁ、ふぁかった」

 手を離し、ニコルをひと睨みしてからブルスさんたちの元へ行く。

「大丈夫か、小僧 ︎」
「ああ、ガーズ倒せたからボスの所まで案内してくれるとさ」
「本当かっ ︎」
「よっしゃあ!」
「す、凄い...です」

 俺の報告に全員が喜びの声を上げる。
 ワオルさんはすでに刺さった矢を抜いて、傷は渡しておいた治癒核で治したとのこと。どうやら急所が外れていたそうだ、良かった。


コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品