異世界に転生したのでとりあえずギルドで最高ランク目指します

りゅうや

勧誘、そして出発

 
「う、嘘だ....こんな....こんな簡単にボクチンの部下が負けるなんて、何かの間違いだ.....」

 十分ほどで襲いかかって来たドゥクルの部下全員が気を失って、辺りに倒れている。
 その光景を入り口で観ていたドゥクルは青ざめ、驚きの表情でこちらを見ている。
 聞いていた話と違うな。
 確かイデルさんの話だとボアアガロンのメンバーは全員青ランクだと聞いている。その割には簡単に倒せた。
 ワオルさんもブルスさんも「骨がねえなぁ!」と言っていたから多分同じ気持ちだろう。
 アルは怯えていながらもしかし手早くしっかりと一人を気絶させていた。
 使用していた武器はそれなりに良い武器だったが、言っては悪いが実力は青ランクというよりかは黄ランクくらいに思えた。
 剣技のことは詳しくはないのだが素人目線でも振りが大きかったり、反応が遅かったりというのは分かった。
 他の武器でも然り。
 冒険者だからと言って全員が武器だけを使って戦っている訳ではないが、それでも襲って来た全員の腕がそれくらいなのだ。

「おい!あんだけデカい口叩いた割にはてんで弱いじゃねえか」
「お前ら本当にボアアガロンか?コイツらと同じで、口から出任せ言ってんじゃねえだろうな?」

 ボアアガロンのメンバーの強さについて疑問を浮かべていると、ブルスさんとワオルさんがいつの間にか俯いているドゥクルに嘲笑いと疑問をぶつける。

「.....くっ、ぶあぁっはっはっはっ!」

 少ししてドゥクルは顔を上げて高らかに笑った。

「気に入ったぞ!どうだ、ボクチンの部下ならないか?なんならボクチン直属の護衛にしてやる!そうすれば金も女も手に入るぞ⁈」

 ドゥクル以外の全員が呆れた顔になっていたのは言うまでもない。

「ひひ、そうだよ。こんな雑魚どもはボクチンの部下には必要ないんだよ。はぁー、はっはっはっ!」

 そう言って倒れている自分の部下の一人を蹴り、踏みつけ始めた。

「このっ!役立たずっ!どもがっ!」
「.... ︎」

 予想外の行動だったため誰も動けなかった。そんな中背後から悪寒を感じた。振り返るが背後にいたのは驚いた顔でドゥクルを観ているアルだけ。気のせい....か?
 だけどそのおかげで我に返ることが出来た。俺はゆっくりとドゥクルに近づく。
 背後からワオルさんとブルスさんが止めようと声をかけているが悪いが無視させてもらう。
 近づいて来る俺に気がついたドゥクルはニヤリと口角を上げ喜びと何かを企んでいる表情を浮かべた。

「ふっ、どうやら貴様は利口なようだな。名は何と言...」
「早速だけどあんたらのアジトに俺ら全員を連れて行ってくれ。仲間は俺が説得する」
「あ?」

 俺の申し入れに不快そうな顔になるドゥクル。
 そして俺の胸ぐらを掴み、油汗がにじみ出ている顔を近づけて来た。

「ボクチンに命令するな!お前はボクチンの部下なんだから、ボクチンの言う事を素直に訊いていれば良いんだよ!」

 そう言い終えてから左頰をグゥで殴られた。
 しかし全然痛くない。本当にこいつも青ランクなのかが怪しくなってきた。

「ふんっ....だけどまあ、ボクチンは偉大な漢だからね。新しく入った部下のわがままの一つも訊いてやれなくもない。今回は特別に叶えてやる。感謝しろ」

 そう言ってきびすを返すドゥクル。
 意外にも成功してしまったため少しの間固まってしまったがすぐに我に帰る。
 俺も踵を返してブルスさんたちの方へと歩く。

「行こう」
「いやいや、そんなの無理に決まってるだろ!」
「そうだぞ、小僧。いくら弱かったからってそれは無謀だぞ」
「はあ、何言ってんだよ」
「は?」
「あ?」
「ぼ....僕は、賛成....です.....」

 どうやらブルスさんだけが理解していないのだろう。
 それとワオルさんの言い分も分かるが、ギルドからまたボアアガロンの捕縛を依頼されても面倒だしな。

「説明は移動中にでもするから、今は一緒に来てくれ。この機会を逃すのは惜しい」
「....分かった。行こう」
「っ!まあ確かにこれを逃すのは惜しいな。うまくいけば大金が手に入るしな」

 ブルスさんは渋々、ワオルさんはちょっと笑顔で納得してくれた。
 再びドゥクルの方へと向かう。ドゥクルはすでに外で派手な人力車のような物に乗っていた。
 人力車と言っても馬車の荷台を改造したような造り。

「決まったかね?」
「ああ」
「おい、貴様!ドゥクル様に向かってその口の利き方は何だ!」

 そうドゥクルの乗っている人力車を引っ張る所から言ってきた。

「....申し訳ございませんでした。決まりましたので、お願いします」
「ふんっ、気をつけろ」

 仕方がないので従った。

「おい!手伝え!お前らのせいで人手が足りないんだよ!」

 再びさっきの男が叫ぶ。
 え ︎この男を引くの?百キロはあるように見えるけど...

「早く来い!」
「おう、分かったから待っとけ」
「お前ら二人はやらんで良いぞ」
「ヒョロいもんな」

 そう言って男のいる方へブルスさんとワオルさんは走って行った。
 そして人力車は走り出した。

「行こう」
「は...はい....」

 俺とアルは走って人力車を追いかける。途中アルがスタミナ切れになったので背負って追いかけることになった。


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