異世界に転生したのでとりあえずギルドで最高ランク目指します

りゅうや

準決勝、そして不正

 
 キリの試合が第十一試合だったがその試合が終わる数分前にベスト八最期の(第一二)試合が終わっていたらしくすぐに準決勝の相手が発表された。
 サナの対戦相手はアシュだった。
 それを聞いた時のサナの表情は恐怖でもうろたえでもなく、やってやると言わんばかりの覚悟を決めた表情だった。
 そして互いに「頑張って」と言って別れた。キリは観客席で俺らのことを応援してくれるとのこと。
 準決勝はすぐに始まる訳ではなく一五分ほどの休憩がもらえるそうだ。
 その休憩の間に舞台がまた変形されるそうだ。さっきの鎧を着た人が出て来てあの魔道具の刀を使って舞台を叩いた。
 すると舞台だけがれだし舞台を四つに分けていた壁の左右が沈下ちんかし、さらに舞台が一、二百メートルほども沈下し始めた。
 地震が止むとしばらくして司会者が「選手は舞台に登って下さい!」と叫んだので言われた通り登った。
 俺の対戦相手はまたも最初の方で気になっていた舞台端で腕を組んで立っていた男だった。名前は“ゲノム”と呼ばれていた。
 彼は今も腕を組んで俯いている。しかしこちらを警戒しているのは何となくで分かる。

「それでは、始め!」

 始まりの宣言を叫んだが互いに動こうとしない。様子見をしているが相手は全く動こうとしない。
 このままじっとしているとまた観客から不満を言われると思う。仕方ない、気になっていたこともあるから様子見がてら行ってみるか。
 そう思い地面を勢いよく蹴る。

「ふっ」
「.....」

 相手の懐くらいまで入ったところで強めのアッパーを放つ。しかし相手はそれを顔を後ろに引き避けた。
 さらに背後へ飛びバク宙をした。その際に今度は俺のあごへ向かって蹴りも入れて来た。
 俺も相手と同じように顔を少し引いてそれを避ける。
 うん、やっぱり強いな。
 少し背後へ飛んで相手との距離を取る。
 こちらの攻撃を容易に避けなおかつ反撃して来た。普通だが今までほぼ一発で倒せてこれたから少し意外だった。
 にしても腕を組んだまま避けと反撃をされるとは。もう一度試してみるか?まだあのことも気になっているしな。
 そう思いもう一度地面を勢いよく蹴る。
 ゲノムの右真横で止まり左足を軸に右足で裏回し蹴りをゲノムの顔面目掛けて蹴り込む。

「ふっ」
「....」
「んっ」
「ぐっ ︎」
「?」

 しかしそれも横に一歩退いて避けられた。だが避けられることは俺も分かっていた。
 だから蹴りの威力をそのまま回転に利用し、相手の横っ腹に蹴りを入れる。しかし変な感触が足から伝わって来た。
 蹴りによってなのかようやく腕組みを辞めた。

「くっ!」
「逃すか」

 一旦距離を取ろうと後方へ飛ぶ相手を地面を蹴って追いかける。

「...ふっ!」
「っ、はっ!」
「んっ ︎」

 相手が少し飛んだ辺りで着地すると追いかけて来る俺に右貫手ぬきてで突いて来た。狙いは目か。
 顔を横にズラしてそれを避け、左ボディーブローを撃つがギリギリのところで左手でガードされてしまった。
 少し鈍い音とともにゲノムは十メートルくらい吹っ飛んだ。
 しまった、手加減を誤った。骨にヒビが入ったか最悪砕けただろう。

「うっ ︎...ふっ!」

 手の痛みを耐えながら右拳の小指側、鉄槌てっついと呼ばれるところで鉄槌打ちをして来た。
 その拳の中に何かあるな。

「ふっ」
「(ニヤ)」
「っつ ︎」

 鉄槌打ちを正面から右の手のひらで受け止める。するとゲノムは若干だが口角を上げた。
 受け止めたとほぼ同時に俺の手のひらにチクっと痛みが走った。

「...ふっ!」
「がぁっ ︎」

 右手でゲノムの拳を掴み逃げられないようにして、手首辺りを強めに殴る。殴ったと同時に手を離す。
 両手の痛みで怯んでいるゲノムの腹に蹴りを入れて吹っ飛ばす。受け身も取れずに身体を打ったようだがすぐに起き上がった。
 痛みが走った手のひらを見ると真ん中やや下辺りに小さな穴が開いている。さらにそこから血が流れ出ている。
 魔眼に多めに魔力を流す。

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 クロシオモ草の粉
 特殊:速攻性の毒
 効果:神経麻痺
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 毒 ︎え?大丈夫なのか⁈てかいつ?.....
 しばらく混乱していたが、一向に効果が現れない。
 上手く身体に回らなかったのかとも考えたが血が流れ出ていることから血管まで刺されている可能性が高いと考えられる。
 ならなぜ?......あ!神様あいつの加護か!
 確か『状態異常無効』だったよな?本当に効くんだな。
 そう考えると毒の効果が現れないのにも納得がいった。
 理由が分かると急に冷静になって来た。そして刺された手から微弱だが紫色の霧が出ているのに気がついた。
 その霧を辿たどるとゲノムの右手に伸びている。
 不正行為か。これで今まで彼に攻撃しに行って返り討ちにっていた人たちの身体に残っていた傷跡の謎が解けた。
 これって審判に報告すれば負けに出来るよな?
 でもどうせなら勝ってから報告するか。てられても俺なら目で捜せるしな。

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