異世界に転生したのでとりあえずギルドで最高ランク目指します

りゅうや

勝利、そして軽蔑

 
 こちらに勢いよく走って来たハクが自分の間合いに入り攻撃してきたのは右ストレート、それを腹部に決めにきた。

「ふっ!」

 俺はその攻撃を難なく受け止め、さらに拳を握っている手の少し強めに握る。

「っ...離せ、よ!うおっ ︎」

 左フックをしてこうとしたがその前に身体を横にやりながら手を引いてハクのバランスを崩す。
 しかし倒れる前に宙返りしてから体勢を整えた。
 俺は地面を勢いよく蹴り、一気に間合いを詰める。

「くっ!このっ」

 ふところ近くに入った俺に殴りかかろうとしたが腕が俺に届く前に払い退けて相手の脚裏に脚を入れて裏から足払いをする。
 この攻撃は予想外だったようで体勢を崩した。
 そこへさらに追い討ちをかけようとしたが完全に倒れる前に左手腕を置きそこにほとんどの衝撃などを左腕に集中させて、俺の追い討ちが届く前に横に転がって避けた。
 だが、俺の初めからの狙いを見据みすえていなかったためそれをギリギリで掴むことが出来た。
 ハクこいつがずっと着けている忍者のような覆面を狙っていたのだ。
 覆面が取れ、ハクの素顔が表に現れる。灰色の毛並み、犬のような耳だが先は少しとがっている。狼の獣人だ。

「はあ...はあ...なかなかやるじゃねえか」

 そう言いながらも彼の鋭い目つきが睨んで来る。

「だけど、そんな事じゃあ俺には勝てねえぞっ!」

 そう言って突っ込んで来る。興奮しているせいなのか状況をちゃんと飲み込んでいないようだ。
 しかしそんな彼に状況を伝える者がいた。

「そこまで!帯をアズマ選手が獲得。よって勝者、アズマ!」
「え?」

 審判がそう叫んだ。しかしハクはその言葉を理解するのに多少時間がかかった。それは自分が負けるはずがないという自信を抱いていたがゆえにだった。

「は?え?負け?俺が?....ああぁぁぁぁ!てめえ!いつ俺の帯を取りやがった!てめえの攻撃は確かに避けたぞ!」
「...避けた、か。これを見ても避けたと言い張れるか?」

 そう言ってあいつの覆面を投げる。

「....な ︎いつの間に ︎てことは今....マズい、サナにバレたら」
「もうバレてるわよ」
「サナ ︎」
「お、そっちは終わってたのか」
「ええ、何とかね。当然アズマも勝ったんでしょ?」
「ああ、キリは次の試合からだっけ?」
「そうよ、さ行きましょう」
「おいっ!俺を無視するな!というかお前!俺のサナに気安く話しかけてんじゃねえ!てか離れろ!」

 試合が終わったので舞台から降りてサナと一緒にキリの応援に行こうと思っていたら背後から猛ダッシュで俺たちの前に出てきた。

「何よハク、あんたは負けたんだから早く帰りなさいよ」
「何だよサナ、久々に会ったんだから付き合えよ」
「あのねえ、私は今から友達の応援に行くの。だから退いて」
「嫌だね、それにこいつにはまだ話があるしな」
「話し?」
「そうだよ!お前いつ俺の帯と覆面取ったんだよ!お前が取ったせいでサナにもバレたじゃねえか!どうしてくれる!」
「知るか」
「何ぃー」
「お前が出した勝負内容で俺が勝ったんだ。それのどこに問題がある?」
「くっ....うるせえ!俺が負けるなんてあり得ないんだよ!どんなズルをし..」
「いい加減にしなさいよ!あんたが自分で言った規則ルールでアズマは勝ったんでしょ。あんたも漢なら自分の負けぐらい認めなさいよ。それにあんたが参加してたの知ってたわよ」
「えっ ︎いつから ︎」
「最初からよ、匂いで分かるわ」
「うっ!で、でもこいつ、こいつの事はどうなんだよ?」

 話を変えやがった。

「どうって?」
「こんな子ずるい手で俺に勝ったり、サナをたぶらかして俺から奪ったんだぞ!こんな男と一緒にいてどう思うって事だよ」
「奪ったって、いつからあんたと恋人になったのよ」
「は?だって昔からよく遊んでたし」
「近所だったからよく遊んでたのよ、港街で同い年だったのハク入れて四人だけだったし」
「えーっと、じゃ、じゃあ!よく俺と腕試ししたのは ︎触っても良いと思ってたからだろ?」
「は ︎そそ、そんな訳ないでしょ!同い年で強かったのがあんただったからやってたのよ。てかハク、そんな事考えて付き合ってくれてたの?最低」
「いや、今のは違っ!」
「....別に良いわよ、もう昔の事だし。ただ、今度からあんまり近寄らないでね」
「がっ!!!」

 ハクが膝から崩れ落ちた。何だろがーんっていう効果音が聴こえた気がした。

「くっ!こんな事になったのも全部その男のせいだぁっ!」
「ふっ」

 そう言って殴りかかって来たのでその腕取り、背中を向け一本背負いで投げ飛ばす。

「っと!このっ!」
「ふっ」
「ぐえっ ︎」

 投げられたが宙返りし、着地したとほぼ同時に地面を蹴りまた殴りかかって来た。
 しかし俺に拳が届く前に俺のボディブローが決まり、ハクは腹を抑えながら後退する。

「ん」
「ぐあっ ︎」

 そして後退したハクの背後へと飛び、脚を払ってから腕を掴み脇固めをする。
 高校で柔道習ってて良かった。

「何だよこいつ、普通に強え」
「当然でしょ?アズマは銀ランクの冒険者よ」
「なっ ︎銀ランク ︎」

 ハクが驚愕の表情になる。

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