異世界に転生したのでとりあえずギルドで最高ランク目指します
怪しい男、そして賞品扱い
「それでは第一区画第一試合、アズマ対ハク!始めっ!」
そう審判が上げていた手を勢いよく下ろし、叫んだ。それと同時に観客席からの声はさらに威勢を上げた。
俺と対面しているハクと呼ばれた人、その姿は忍者のように覆面を被った人物。服は動きやすそうな見た目で、袖が肩のあたりで千切られている。
相手は身体をやや屈め、いつでも攻防が出来るように腹横に手を構えている。
互いに何をするでもなくただ互いの様子を伺っているうちに他のブロックでも開始の合図が聞こえた。
これではさっきと同じように客が騒ぎそうだとも思ったが、それよりも相手がどれくらい強いのか知りたいという欲求もあった。
少し挑発してみるか....
漫画などでありそうな手をクイックイッとやって「かかって来い」と挑発する。
その意味が通じたらしく、相手はこちらを睨んでからこちらに突っ込んで来た。
「くっ!...ふっ!...ふっ!...」
次々と俺の帯目掛けて手を伸ばして来るのを後ろに飛びながら首を横にずらして全ての攻撃を避ける。
攻撃のスピードや身体の動きは最初の大人たちより良いのだが攻撃のパターンが決まっているのか、それが分かってからはさらに避けが簡単になった。
「はあ...はあ....はあ...」
数分ほどほぼ休むことなく攻撃をし続けたのでスタミナ切れで膝に手を置き身体を支えながら荒い息を整えている。
勝ちたいのは分かるけどそんな必死で来たら逆に隙も作ると思うけどな....
「はあ...はあ...っ、避ける...事しか、出来ねーのか!...はあ...」
息が絶え絶えながらもそう言ったのを確かに耳にした。
「そんなのこっちの勝手だろ?今みたいに疲れたお前から帯を取ることだって出来るようになるんだからな」
「けっ....はぁ.....そんな小ずるい考えでサナを騙したのか! ︎」
「は?何だよ、それ。てか何でサナのこと知って...」
「うるせえ!サナは俺の女だ!それをサナが俺から離れた隙に言い寄って、しばらくベガのどこかへ行ったかと思えば大会に来てたから声をかけようとしたら隣にお前みたいな野郎がいるし、挙げ句の果てにそれを俺の前で見せつけやがって!絶対にぶっ殺す!」
...何言ってんだ?こいつ。
「くたばりやがれ!」
とりあえず状況整理でもしてみるか。
えーと、まずハクはサナのことを知っている。それでサナは自分の女だと思っている。
こいつが離れた隙とかベガに行っているっていうのはサナとニーナがベガに来たことで良いのか?
んで、サナが帰って来たら隣に俺がいて「何、人の女とイチャイチャしてんだ!ぶっ殺す」と思ったのかな。
こんな感じで良いと思うけど、結局よく分からん。
サナとはまだ数ヶ月の付き合いだが、彼女が色んな男に寄って行くとも考えられない。ましてや彼氏などがいるなら尚更だ。
ということをハクの攻撃を避けながら考えていた。さっきも言ったがパターンが決まっているので簡単なのだ。
「ふっ!」
「 ︎ぐっ!」
状況整理が終わった(未解決だけど)のでハクの攻撃を避けてから初の反撃を繰り出した。
避けるしか出来ないと思っていたのか反撃の回し蹴りを何とかガードした今も少し驚いているようだ。
加減はしてあるしガードも出来ているからダメージもそんなにないだろう。
さて、こいつどうしたら良いだろうか?多分勘違いしているのだろうけど言ったって聞かないんだろうな....
というか観客席にさっきの会話がだだ漏れだったようでさっきからその噂がちょくちょく耳に入って来るし、何なら近くに審判の人もいるけど審判も驚いて俺らを交互に見ている。
神様、俺何か悪いことしたか?
「...ぉぃ!.....おぃ!.....おい!訊いてんのか!」
「あ?ああ、考えごとしてたわ。何だ?」
「どうせまたずらい事でも考えてたんだろ、まあいいや。お前に勝負を挑む!」
「は?勝負?」
「ああ、もちろん逃げても構わないけどそんな男にサナは相応しくねえからどっかに行け!まあ、逃げなくても相応しくねえけどな」
今すぐ帰りたいけど、何となくこいつに負けるのはそれはそれで嫌だな。
「勝負内容は?」
「そうこなくっちゃた。勝負はルール通り相手の帯を先に取った方が勝ち!勝者はサナを手に入れられる!敗者はとっとと帰れ!良いな!」
「....おい、その言い方だとサナが賞品みたいなんだが?」
「その通りだが?サナは勝った者の女になる。つまり俺のな!それは勝った者の特権なんだよ、だから賞品みたいなもんだ。もともとサナは俺が目を付けていたんだ、それを横から来たお前にも機会をやるんだから有りがたく思え!」
「......」
「何だ?怖気づいたのか?まあいいや。おらっ、始めだ!」
そう言ってハクはこちらに走って来た。
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