異世界に転生したのでとりあえずギルドで最高ランク目指します
父親の頑張り、そして到着
ディグリーさんが馬を操り始めてから二日が経過した。
ディグリーさんはほぼ寝ることもなく馬を走らせている。これ以上やらせる訳にはと思い代わろうとしたが大会に出るのだからと止められた。
食糧は荷馬車にだいたいの量を貯蔵しておいたそうで、食事は走らせながら済ませていた。
たまにちゃんとした食事をするためやトイレのために止まることはあったがそれ以外はほぼずっと走っている。
ディグリーさんが寝るのは俺たちが眠っている間に少しだけとい感じだ。俺たちが寝てと頼んでも「ありがとう、もう少ししたら寝るとするよ」と言うだけで寝ずに走らせている。
無理矢理寝かせることも出来るのだが、それではサナのために頑張っているディグリーさんに悪いと思い実行していない。
サナやキリもそれを分かっているから心配しながらも何も言わないようだ。 
せめて疲れを軽くするためにコルチィコと言う木の実を磨り潰して、コルツと呼ばれる魔獣の乳(ちゃんと煮てある)を混ぜて作ったドリンクを渡した。
コルチィコは黄色のピンポン玉ほどの大きさなのだが、それはコルツという牛のような魔獣。温厚な性格で牛のように乳を出す。味は牛乳と違い酸っぱくほろ苦い。が、主食としている木の実で混ぜると相性が良いのだ。
そのドリンクは眠気覚し、疲労回復の効果があるので今回はちょうど良いだろう。
「ディグリーさん、これどうぞ」
「おお、ありがとうね」
ディグリーさんがそれに少し口をつける。
「 ︎...け、結構...変わった味だね」
「まあ慣れないとキツイかもしれないのは分かるけど、今はぐいっと一気に飲んだら?」
「そうするよ」
本当に苦かったようで顔を引きつらせながら話している。そしてディグリーさんは覚悟を決めて一気に飲み、また辛そうな顔をする。
このドリンクの味はほぼコーヒーに似ている。コルチィコの実はいわば砂糖のような物なのだ。ただしそんなに甘くない。
この魔獣を見つけてから速攻でギルドに行ったがこの魔獣の討伐クエストがなかった。仕方がないので自分で探しに行き、数時間ほどかけてようやく一頭見つけた。
目の前に現れても襲って来なかったのでコルツの目の前にゲートを開いて押して行こうとしたが重くてなかなか動かなかった。数十分かけて何とか家まで連れて来た。
と、コルツの話はここまでにしておこう。
そろそろ日が暮れかけている。夕食を宝物庫から取り出し、揺れる馬車の荷台でそれを食べる。
アルファックというダチョウのような鳥の手羽先を残り少なくなったソウチョウバナの葉で巻いて特製ソースをかけたやつと数日前にローレアさんが試作した漬け物のような物。まずこの世界に糠が存在していないから漬け物なのか分からないが味が似ているので漬け物とすることにした。
あとは水と米を出して食べ始める。
「お父さん」
「おお、すまない。はむ....んんー、いつも思うがアズマ君は料理が上手だね」
「いや、だいたいはうちの料理人が作った物だから」
「おや、そうだったのかい。では美味しかったと伝えておいてくれるかい?」
「ああ、もちろん」
そんな会話をして微笑み、食事を取りながらも馬を操り続ける。
______________
「大会の受け付け、もう時期終了でーす!参加なさる方はお急ぎ下さーい!」
そう兎耳のお姉さんが大声で皆に知らせている。
それを耳にしたディグリーさんはラストスパートということもあり馬の手綱を上に上げてから下に下ろし波を起こしてパンッと音を立てて馬のスピードを上げた。
耳にしたと言ってもディグリーさんも獣人だ。そのお姉さんとの距離もまだかなりある。
ちなみに俺は聞こえていない。
結局ディグリーさんは食事を終えてからもほぼ休まず馬を走らせた。多分ディグリーさんが休んだ時間て十四時間くらいじゃないか?馬の休憩も兼ねて。
会場があるのは王都。この会場や大会は国王の命で出来たそうで、この国では特別な日ともされているそうだ。
俺らはディグリーさんにお礼を言ってから急いで受け付けで受け付けを済ませる。
受け付けを終え、ディグリーさんの元へ行く。
「私はその辺に馬車を止めて少し休ませてもらうよ」
「本当にありがとうございました」
「ありがとうございました」
「ありがとうね、お父さん」
「ふふ、さ存分に楽しんで来なさい」
「「「はい」」」
ディグリーさんは再び馬を走らせ(歩いてだが)会場から少し離れたところで止まった。うーん、大丈夫だとは思うけど念のため監視を置いておいた方がいいな。
そんなことを思い、誰に監視を頼むか考える。多分長時間は観ていなければならない、それで尚且つ監視人に選んでも信用出来る人で頼めそうな人...うちの門番のどちらかに、いや彼らにも仕事がある。なら....お!そうだ。
『おーい、神様』
『ん?どうしたんだい?』
『どうせ俺の行動は把握してんだろ?』
『まあね。今コロッセオに着いたところだろ?』
『ああ、それでなんだが...』
『?』
俺は少し間を置いてから再び口(念話だけど)を開く。
『ディグリーさんと馬車が誰かに襲われないか監視しといてくんない?』
『......』
『んで、ないとは思うけどもし襲われそうだったら連絡してくれ』
『....アズマくん』
『ん?』
『一応私は神様であり一国の王様もやっているんだよ?その私に一人の民を監視をしろって...』
『分かってるさ。確かに普通はしないだろうけど....その神であり一国の王が一般市民である俺を監視しているのは普通なのか?』
『はは、それを言われるとこちらとしては何とも言えないね。分かったよ、今回は特別にアズマくんの頼みを聞くとするよ。こちらも依頼している身だからね』
『ああ、頼む』
俺はそう言って念話を切った。
「間もなく、開会式が始まりまーす!参加される方は中へ、見物される方は観客席へ進んで下さーい!」
受け付けにいた人ではない違う人がそう叫ぶ。
「行くか」
「ええ」
「うん」
ぞろぞろと中へ入って行く列に入り俺たちも中へと進む。
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