異世界に転生したのでとりあえずギルドで最高ランク目指します

りゅうや

脱出、そして売買

 ______________

「うぅ...ううぅぅぅ...」

  目を開けると一番最初に木々の葉の間から青い空が見えた。
  俺は仰向けになっていた身体を起こし、まだはっきりしない意識を整える。
  十秒くらいで意識がはっきりしだした。
  辺りを見回すが、右を向いても左を向いても木、木、木ばかりだ。
  どうやらここは森の中らしい。

「神様も町の近くに...って、人に見られたらいきなり人が現れたのだから驚かれるか...」

  人の気配がないのでこの近くには誰もいないのだろう。
 ん?なんで人の気配が分かるんだ?前はそんなこと、出来なかったのに...
  出来なかったと言っても試した訳ではない。
  疑問を持ち神様に聞いてみたくなったが、いるはずがない。

「うぅぅん...まずは、この森を出ないとな」

  そう思い俺は、適当な方向を決め歩き出した。

 ______________

「はぁ、はぁ、はぁ...」

  どのくらい歩いただろうか。
  どう進もうと視界には、木、草、木、草と同じ光景(こうけい)しか入ってこない。
 下り坂のようなものもあったので多分ここは山であることがわかった。

「どんだけ広いんだよ、この森は」

  森の愚痴(ぐち)を漏らしながら、前へと進む。
  いっそ木に登ってみるか?いや、俺にそんな運動神経はない。
  もう自問自答(じもんじとう)でもしていないと、頭がおかしくなりそうだ。

「くそっ!神様め、どんな嫌がらせだ!」

  これだからイケメンは信用出来ん。
  と、イケメンへの偏見を抱きながらも俺は、前へ前へと進んで行き、ようやく木々の並びが開けて来た。

「おお!出口だ!」

  俺は走ってそこまで行く。しかしそこに着いた俺の喜びが一瞬にして通り過ぎて行った。
  俺が出たのは坂になっているところに少し開(ひら)けただけの森の中だった。

「 広過ぎるだろ!この森!」

  上を見ると太陽が頭のてっぺんの位置にまで来ていた。どうやら昼らしい。
  少し休憩することにして、開けたところの真ん中くらいまで歩いて行き立ち止まる。

「 ︎」

  俺は目を見開いた。
  坂になっていたとはいえ木々がここだけ異様に小さいおかげで、遠くを見ることができた。
  町が見えた。
  俺は再び喜びを抱き、疲れを忘れて急いで坂を下って行く。

 ______________

「はぁ、はぁ、はぁ...おお!出られた!」

  俺はようやく森を出ることができた。
  目の前には沢山の建物が広がっている。
  俺は早速町の中へ足を踏み入れた。
  町の中には人があっちへこっちへと行き交わしている。
  普通の人の中に、頭に耳のある人も行き交わしている。
  最初はコスプレなのかとも思ったが、耳がピクピク動いたりしていたので、多分本物なのだろう。
  確か、ああ言うのを「獣人(じゅうじん)」って言うんだっけ?本で読んだことがあったが、本物を見ることができるとは。
  俺はここに来てようやくここが異世界なのだと思った。

「(さて、まずは泊まるところを...ってよく考えたらここ異世界なんだから、俺金もないし、言葉も話せないし、読み書きも出来ないじゃん!)」

  自分の無能さに呆(あき)れを感じたが、原因は神様でもあるのだから完璧に無能という訳ではない。
 そう自分に言い聞かせて言い訳している時だった。
  何かが耳に入ってきた。

「それでさぁ、昨日の夜かみさんに怒られちまってよぉ」
「「ハハハハハ」」

  どこからか、低い声が聞こえたので、そちらを振り向いて見る。
  そこには、獣人の男たちが三人集まって楽しそうに話していた。

「(えっ ︎)」
「さ、安いよ!安いよ!」
「これ下さい」
「まいど!」
「(えっ ︎)」
「それでねぇ...」
「待てぇぇぇ!」
「キャハハ」
「(えぇぇぇぇぇ ︎)」

  物を売る人、それを買う人、俺の前を笑顔で走り去って行く子供の獣人たち。
  こ、言葉が分かる...
  ふと、さっきの威勢の良い物売りの方を見ると、赤いトマトのような品物の下に文字か何かが紙に書いてあった。

「(やっぱり、読めな...いぃ ︎)」

  少しの間、その紙を凝視(ぎょうし)していると、そのよく分からない文字のようなものの横に日本語が現れ出した。
  「トメイト 小銀貨三」
  と、書いてあった。
  読めた...
  辺りを見回すと次々とよく分からない文字の横に日本語が振られていく。
  「服屋 トレビアン」「食屋 ビリシオン」「防具屋 ガントツ」「武器屋 オニテツ」「質屋 ペルガス」
  など、店の名前が読めた。
  ん?質屋?
  
「(質屋ってあの、物とかを預けてお金を貸してもらって、利子を得るって言うあの質屋?)」
  
  社会で習ったことがこんなことで役に立つとは。
  とりあえず行ってみよう。
  俺はそう思い、質屋と書かれた店を目指して歩き始める。
  扉の前まで来て暖簾(のれん)を潜(くぐ)り抜けて店の中へと入った。

「いらっしゃいませ!」

  元気の良い女性が大声でレジのようなところから出迎えてきた。

「今日は何しに?」
「えっと...物を預けたいのですが?」
「かしこまりました。して、その品物は?」

  あ!考えてなかった!
  何かないかと、手当たり次第に身体をチェックする。
  しかし、制服だったので学校の身分証明書や、ハンカチなどしかなかった。あ、あと腕時計もか。
  慌てながら店員さんを見ると、店員さんは俺が出した証明書と腕時計とハンカチを凝視している。
  やっぱりふざけているように見えるのだろう。

「しょ、少々お待ちください!」

  そう言って店員さんは店の奥へと行ってしまった。
  しばらくして、さっきの店員さんはガッチリとした男の人を連れて来た。やば、殺される!

「お待たせしました。私、店長のボルグと申します」
「は、はぁ...」

  店長って、そんなにダメだったか?
  俺はそう思い慌てて出していた物をしまおうとした。

「お待ちください!」
「え ︎」

  いきなり店長さんが俺の腕を握ってきた。

「是非、それを売ってはくれませんか ︎」
「...はい?」
「このような珍しい物は三五年間見たことがありません!是非、売ってはいただけないでしょうか ︎」
「え、でも...」

  ただの革細工の証明書と、百均で買ったハンカチと腕時計だよ?
 でも、この迫力は断ったら後が怖い気がする。

「わ、分かりました。こんなので良ければ」
「本当ですか ︎ありがとうございます!」

  そう言い、店長さんはその場にしゃがみ込んで何かを探して、再び立ち上がった。
  彼の手には革袋が握られていた。
  革袋の縫い目が微妙だな。あまりこう言うのは発達していないのかな?

「それではこちら、金貨一枚と銀貨三枚になります」
「は、はぁ...どうも」

  金貨や銀貨と言われても価値がよく分からない。
  とりあえず革袋を持って店を出た。

「「ありがとうございました!」」

 2人の声を背に扉を閉め適当な方向へと歩き出す。

「(さてと、お金も無事手に入ったし、次はどうしようかな?)」

 そう思いながら適当に町をブラついていた。
 じぃぃぃぃ
 じぃぃぃ

「(ん?何だかさっきから視線を感じる気がする?)」

 そう思い視線を感じる方を振り返る。
 町を行き交わしている人たちが俺の方を見ている。
 俺と目が合った人はスタスタと立ち去って行った。
 何で?

「ねぇお母さん!あのお兄ちゃん変な服着てるよ!」
「シィ!見てはいけません!... ︎行きますよ!」

 声のした方を振り向くと、小さな女の子が左手でお母さんと呼ばれた女性のスカートを掴(つか)み、右手の人差し指で俺の方を指している。
 その女の子を叱(しか)りつけている女性が俺の視線に気が付いたようで、逃げるように去って行った。

「(しまった!制服のことをすっかり忘れていた!)」

 周りの人たちが着ているのは、ドレスのような立派な服を着ている女性や休日の公園にいそうな軽い服を着た人などが行き交わしていた。

「(そう言えばさっき、服屋があったような!)」

 辺りを見回すと左に一七メートルくらい離れたところにさっきの服屋が見えた。
 急いで服を変えたいから走っても良いのだが、余計に目立つ気がするので、目立たないように歩いて行こう。

 ______________

 カランカラン!
 扉に付いていた鐘が音を立てる。

「いらっしゃいませ!」

 元気の良い女性が大声でレジのようなところから叫んだ。
 金色の髪を後ろの方で団子のように丸めて止めている。

「すいません。服を探しているのですが!」
「はい、それでどのような服をお探しですか?」

 ....あ。まだ決めてない。

「ええっと...俺に似合うの選んでもらえますか?」
「はい、かしこまりました!」

 そう言い店員さんは並べてある服の方へ行った。
 おお!図々しいことを言ったと思ったけど案外大丈夫だった。
 ....

「お待たせしまた!」

 数分くらいしてさっきの店員さんが手に服を持って走って来る。
 店員さんが持って来たのは、半袖の青色の薄い服に黒色のジーパンだった。
 俺は早速それを受け取り、更衣室のような部屋へ入った。
 さっ!
 少しして俺はカーテンの変わりの布を開いた。
 そこにはさっきまでの学生服姿ではなく、彼女が選んでくれた服に身を包んでいる。

「いかがでしょうか?」
「はい、気に入ったので、買います」
「はぁぁ....ありがとうございます!」

 店員さんは感動した声を上げて大きく一礼をする。

「それでは、アクレアシャツとガーデンズボンの二点で銀貨八枚と小銀貨五枚になります」
「はい、ではこれで足りますか?」
「え ︎...あ!は、はい!金貨一枚お預かりします。...こちら、お釣りの小金貨九枚と銀貨一枚と小銀貨五枚になります」

 店員さんは俺が足りるかを聞いたことよりも金貨を凝視して驚いていた。
 なんで?
 カランカラン!
 俺はお釣りを受け取り店の扉を開ける。

「ありがとうございました!」

 店員さんの声を背に店を出る。

「(さて、これで目立たないはずだけど、制服を持っていても使う機会がないと思うしなぁ...あ、そうだ!さっきの質屋に持って行こう!)」

 そう思いまた質屋へと向かう。

「いらっしゃ、あ!さっきのお客様!」
「どうも」

 暖簾を潜って店に入るとさっきの女性が俺のことを覚えていてくれた。って、つい数分前なのだから当然か。

「また何か?」
「ああ、はい。実はこの服を売りたいのですが?」
「ん?お客様かい?」
「ああ、店長!」
「おや?君はさっきのお客様。何か?」
「実はこの服を売りたいのですが?」

 そう言い俺は制服をレジのような棚の上に置く。
 俺の制服は茶色のブレザーとズボンだけどこれも売れるかな?
 そう思っていると店長さんが制服を手に取って、触ったりしている。

「これもなかなか珍しい!一体君はこんな物をどこで?」
「えっと...そのぉ...た、旅の途中で旅の物売りから買った物で...」
「...そうかい」

 適当に思いついた嘘を言ったが信じてくれたようだ。
 そう言えば俺が着ているこの服、あんまり手触りとか良くないな。これもあんまり発展していないのかな?

「あのぉ、それでどれくらいになりますか?」
「はい!これなら銀貨二枚になります」
「では、お願いします」
「かしこまりました」

 店長さんはそう言いしゃがみ込んでまた何かを探している。
 そしてまた革袋を持って立ち上がった。

「では、金貨二枚になります」
「どうも」
「また何かありましたら」
「はい....あっ、そうだ?」

 お金を受け取り店を出ようとしたところで、俺はあることを思い出した。

「どうかしましたか?」
「すいませんが、この近くに宿(やど)はありますか?」
「宿ですか?でしたら、店を出て左にまっすぐ行くと、甘味(かんみ)と言う看板が出ている店がそうですよ」
「ありがとうございます」
「「ありがとうございました」」

 俺は二人にお礼を言って店を出た。




コメント

  • イルシオ

    何故銀貨2枚なのに金貨2枚なの?

    1
  • マサ

    三五年間、何て読むの?普通は三十五年間だと思うけど?

    0
  • 小説書いてみたいけど内容が浮かばない人

    転生というか転移というか…その中間だね

    0
  • ばど

    読み仮名を振るのは有難いんですが、
    ()を使うんじゃなく、ルビを振ってほしいです。

    1
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