うちのお嬢様が破滅エンドしかない悪役令嬢のようなので俺が救済したいと思います。

古森きり【Twitter@2kag5fb1】

魔宝石と女神エメリエラ



1週間というのは早いもので、夏季休みは瞬く間に終わってしまった。
以前の生活のなんと幸福なことか。
結局お嬢様に、レオの事をどう思っているのか聞けずじまいだったのが惜しまれる。
…いや、意外と聞きにくくて…。
ではなく、そんなこんなで本日からまたアミューリア学園にて学生生活が復活したわけだ。

そして……。



「はあ…」
「なんだその深い溜息。辛気臭い」
「ヴィンセントはホント、ミケーレが苦手だね〜」

なにが悲しくて戻ってきて早々にまた変態(ミケーレ)から呼び出されなければならない?
しかも今度はレオだけでなく何故かエディンまで。

「そういえばエディン様、お嬢様との婚約解消の件はどうなったんですか? ちゃんとご両親にお話しくださったんですよね?」
「…………」
「なんですかその顔」

燃え尽きた某ボクサーみたいな顔になってるぞ。

「……祖父様が来た…」
「うえ ︎ エディンのお祖父様 ︎」
「?」
「ああ…婚約解消話どころじゃない……1週間地獄だ」

魂が抜けたような顔。
しかもレオまで「うわぁ」とばかりに引いた顔してるし…!

「…ど、どんな方なんですか?」
「ディリエアス前公爵だよ。今は爵位をエディンの父に譲ってセントラルの地方で隠居生活してるけど………先代の騎士団総帥で、口より先に手が出るタイプ…。とにかく厳しいし、風邪は滝に打たれて治せっていう感じ」
「ほ、ほほう…」

…………どんなだよ……。
治らないよ、悪化するよ…!

「あれかな、根性論が服を着て歩いてる、みたいな」
「ヤバイ人ですね」

エディンの祖父ヤバイ人。
決定的に俺の中でインプットされた。
うちの兄貴(前世だけど)も結構そういうとこある人だったけど、あれはヤバイよ?

「僕も小さい頃、エディンのお祖父様に泳ぎや崖登りを叩き込まれたんだよね」
「が、崖登り?」

俺もロッククライミングは同僚に誘われて二、三度やったことがあるが…あれ、結構どころでなくハードだぞ?
小さい頃がどの程度小さい頃なのかは知らないが、子供には間違いなくきつい。
というか、単純に危ないよ。
この世界、俺の前の世界よりも明らかに装備品とかのレベルが違うんだから!

「気合いでなんとかなるって」
「ならない事もありますよね」
「まぁね。でも、エディンのお祖父様はそういう人だから〜」

ガチでヤバイ人なんだな。

「それは大変だったね、エディン…。今回はなにをやらされたの?」
「森に取り残された。ナイフ1本で、1人で1週間生き抜けと…」

サ、サバイバル ︎
1人でナイフ一本は流石にやったことない…!
兄貴(前世の)に付き合って2人で1週間はある。
でもあれサバイバルというより遭難を前提とした自力脱出を試みるものだったからサバイバルとは言えない。
さすがに1人で、しかもナイフ一本は…!
しかも1週間は…き、キツ…。

「…母上は倒れるし、父上は母上の看病で屋敷に戻ってこないし…死ぬかと思った…」
「1週間で良かったね」
「ああ…夏で寒くもなかったしな…」
「………それは、確かに婚約解消話どころではなかったのですね…。こ、公爵夫人の容態は…」
「屋敷には帰ってきたがまだ寝込んでいる…」
「…お大事になさってください…」

今回は見逃してやるわ…さすがにそんな状況じゃ無理だしな…。
さっさと婚約解消してほしいのは山々だが…まず公爵夫人には元気になって頂きたい。
馬鹿親全開だが、それも愛ゆえだろう。
というか、息子が森にナイフ1本で1週間放り込まれるとか…貴族の母親なら公爵夫人でなくても倒れそうだなぁ…。

「…………お2人とも、道こっちですよ」
「「あ」」

話をしながらだと、やはり間違いそうになる研究所への道。
レオは俺と同じく4回目なんだろうに。

「前回の魔力属性? の検査から時間が経ったけど、今回もそうなのかな?」
「魔力属性? なんだそれ」
「魔力には属性があるんだって。確か、火と水と…あとなんだっけ」
「風、土、光、闇ですね。今わかっているのはその6属性だそうです」
「ふーん。………ホントに人間が魔法を使えるようになるのかねぇ?」
「さあ?」

未だ疑わしいとエディンが肩を竦める。
まぁなぁ…それは俺も同じ意見だ。
なにしろ前世も魔法なんてファンタジー漫画やゲームでしかありえないもの。
使えるんならちょっとワクワクする。

「いらっしゃいませ!」

…………研究所に入るやいなや、今回は待ち構えていたミケーレとエンカウント。
俺はそっと一枚の紙とペンを持ってミケーレの前まで来る。

「誓約書を書いてください」
「………まだ何も言っていないよ?」
「書け。書かないならこのまま帰らせて頂く」
「……………………」

エディンとレオが不思議そうな顔をしているが、知らなくていい。
事前に書かせておかないと、何をされるか…!
エディンは別にどうなろうがどうでもいいが、レオはダメだ。
お嬢様にも「守る」って言ったしな。

「書いたよ」
「唇を尖らせるな気色悪い」
「ヴィンセント、ミケーレにはエディン並に対応が厳しいよね…?」
「前回何かあったのか?」
「は は は …!」
「も、もう聞かないからその顔やめろ…」

事前に告知した実験、検査以外はしません。
それ以外の事を行おうとしたら殴られても文句ありません。
と、誓約書を書かせてそれをしっかり上着のポケットに入れる。
で、改めてミケーレに対峙すると…やはりにんまりと微笑まれた。
うわ、キモい…。

「今日はこっちです」

満面の笑顔の胡散臭さが歴代最高だよ、お前。
…だが、誓約書は書かせた。
なにやら前回とは別な場所でなんらかの実験なり検査なりを行うのだろう。
仕方ないから付いていくが…。

「…………ここは?」

俺たちが案内されたのは受付カウンターのある場所から、前回ミケーレの研究室のある区画とは反対の廊下の先。
えらく重厚感のある扉。
これは…石扉だな。
その片方を右へ押して開いていくミケーレ。
まるで玉座のように十段ほどの階段が付いた小高い場所。
ガラスケースに収まったボーリングの玉程ありそうな水晶玉。
その周りに、数人の白衣の研究者。

「なんだ? ここは」
「その前に、まずあれを見ていただきたいのです」

ニヤつくミケーレが指差したのはガラスケースの中の水晶玉。
なにやら仰々しい空気の中、ポツンと天窓から降り注ぐ太陽光に照らされて…よく火事にならねーな…。

「えらく大きな水晶に見えるが…」
「ふふふ、そうでしょう? ですがあれこそ、我々人間族が魔法を使うための要…その名も『魔宝石』!」
「 ︎」
「? まほうせき?」

え?
あれが? あれが魔宝石?
俺がゲームで見たやつと全然違うぞ ︎
俺がゲームで見た魔宝石は、5つの小さなペンダントだった。
1番大きい『核』と呼ばれるものを巫女が持ち、その核から『従者石』という残り4つに魔力が供給される。
適性が高い者ほどスムーズに不純物のない魔力を受け取れ、魔法が使える…俺はゲームでそう教わった。
チュートリアルで! レオに!

「…陛下が封を解いたとは聞いていたけど…城から持ってきたのかい?」
「はい、お貸し頂いております」
「ふーん…」
「あんな石で魔法が使えるようになるのか?」
「あの石には膨大な魔力が込められているのです! 100年ほど昔、我々のように魔法を使えないか研究していた者たちが生み出したと言われています。ですが当時の技術では魔宝石から魔力を取り出すことができず頓挫してしまったのですよ。それを陛下が戦争に用いることが出来ないかと、封をお解きになられた。レオハール様、ヴィンセントクン…お2人は魔力適性が極めて高い! そしてエディン様は代表者に立候補されたと聞きます! 魔法を使えれば戦争は確実に我らに有利に働く事でしょう! ぜひ魔宝石の研究にご協力ください!」
「…………俺は構わんが…」
「私も構いませんが、内容はちゃんと説明下さい」

…えー、まさか魔宝石が俺の知ってるのとは形が違うなんて…。
不安だが、内容次第ではまた俺が体を張らねば…。
あ、いや、今日はエディンがいるからエディンに張らせよう。

「…………エディン」
「なんだ」
「僕、それ初めて聞いた…どういう事…?」

どうして、と顔に出ているレオ。
…………エディン、代表者に立候補したってレオにまだ話していなーーー……ああ、レオ忙しかったし、王誕祭後は1週間森だったんだっけか…。
そりゃ、まだその話してないか。

「フン! 次期騎士団総帥になる俺が、戦争で戦果を上げる。それのなにがおかしい?」
「け、けど…」
「それに俺も魔力適性は『高』だった。お前程ではないが、資格は十分にある」
「エディン…!」
「俺が隣で戦うのは不満なのか」
「…………、……そ、そういう事ではないよ…そうではなくて…」
「なんにしてもその話は後でもいいだろう」

すっかりいつもの笑顔を消して、落ち込んでしまうレオ。
俺に共に戦って欲しいと言った時ですら、相当覚悟して言葉にしたはず。
命の恩人…友人を同じ死地に向かわせるのはもっと覚悟がいるだろう。
それを突然、相手から言われたらそりゃ驚くよな。
レオは俺と違ってエディンが『従者候補』なのも知らないわけだし。

「では! 今日の実験に関してのご説明を…」
「ただし1つに限る」
「…ヴィンセントクンは鬼か何かなの?」

黙れ。
こんな落ち込んでるレオに貴様の怪しげな実験や研究、3つも4つも付き合わせてなるものか。

「まあいいでしょう! ズバリ今日の実験は魔法が使えるか! です!」
「すごくアバウトな ︎」
「本当なら魔力の属性を調べてからと思ったのですが陛下から早く成果を出せと言われてしまいましたから!」
「完全にお前らの都合ではないか ︎」
「ハイ! そうです!」
「……………………」
「……………………」

初めてエディンと意見が合いそうだ。
なにしろエディンが今の俺と同じ表情をしている。

「…………。それはわかったけど、ねえ、ミケーレ、聞いてもいい?」
「ハイ! 質問大歓迎です!」
「あの女の子はどうして浮いてるの?」
「…………。女の子?」
「?」
「?」

………………レ、レオ……電波の属性まであったのか…?

魔宝石を指差しながら、小首を傾げるレオ。
あのミケーレですら表情が固まった。
レオ以外…俺たちも魔宝石を見上げる。
太陽光がガラスケースを照らしているが……はて、女の子…?

「…………ええと…」
「レオ、お前またなにかヤバイものが見えてるのか? たまにそういうこと言うよな…」
「え、ヒド…じゃなくて! みんな見えないの? 浮いてるよ、黒い長い髪の女の子! 毛先ぱっつんで背中に羽が生えてる白いワンピースの、素足の女の子!」
「…………」
「…………」
「変なものを見る目で見ないでよ〜! ホントだよ〜!」

だが俺は何回魔宝石の方を見てもなにも見えない。
レオの言う『女の子』の表現はやけに詳細だが、だからこそそんな子はいないと言い切れる。
改めて見ても女の子など、この場にはいない。

「…………」

あ?
いや、でも……黒い髪の、毛先ぱっつんで、背中に羽が生えた白いワンピースの女の子って…『フィリシティ・カラー』で見た気がするな?
もしかして、サポートキャラクター…女神『エメリエラ』じゃないか?
魔宝石に宿る女神族の末席で、巫女を選び呼び出した張本人。
魔宝石を通して巫女や従者に魔力を与えてくれる。
そして同じように魔宝石を通じて巫女と従者の絆を深めようと、色々アドバイスやサポートをしてくれるのだ。
何故なら巫女と従者の絆は、エメリエラの力を増幅させる事になるとかなんとか、そんなような事を出会った矢先に言っていたような…。
俺はお嬢様…ローナ・リース目的で野郎に一切興味がなかったのでエメリエラのお世話には全くなっていないのだが、まあ、殆どの戦巫女(プレイヤー)は恋愛イベントの基準を教えてくれたりする彼女にそりゃあもう多大なお世話になっているはず。
…おかげで今の今まで忘れてたほどだぜい…。
そうだよ、なんで忘れてた?
乙女ゲーだけでなく、ギャルゲーにもたまにサポートキャラっているじゃん。
結構な重要キャラだし…!
確か、その姿は巫女とレオハールにしか見ることはできない……とか…………それだ!
………成る程、正体が分かったはいいが、俺は見えないんだよな…。

「ホラ! ここ!」

ハッと現実に戻った。
いつの間にやらレオが階段を登ってガラスケースの斜め上を指差している。
エディンがあまりにも訝しむもんだからレオも多少ムキになったらしい。
その上、さすがのミケーレや他の研究者もポカンとしている。
俺だって存在を思い出さなければ絶対信じてなかった。
そ、そうか…ちゃんとサポートキャラ、エメリエラも登場するんだなぁ。
俺には見えないけど…。

「…………え? そうなの? …………ええ ︎」

「? レ、レオ?」

しかし、途端に魔宝石の方を向いてレオは百面相しながら1人会話をおっ始めた。
わ、わあ…事情を知っててもシュール!
そういえばなんでエメリエラは巫女とレオにしか姿見えないんだっけ?
プレイ中の記憶はあんまり覚えてないんだよ、俺!

「…名前がないの? それは呼びにくいね…僕が付けてもいいのかい?」

空中と会話を続けるレオ。
名前…? 名前が、ない?
だってゲームでは最初からエメリエラとーーー

「…エメリエラ…というのはどう?」

…………お前が名付けたんかい…。

「ホント? 気に入ってくれたならよかったよ〜」
「…………レ…レオ、おい…なに空中に名前をつけてるんだ?」

いよいよ心配したエディンがレオに近付く。
確かに事情を知らないと完全に壊れたのかと思うよな…。
特に、レオの日常を知ってる身としては…。

「あ、あのねエディン、彼女は女神族なんだって」
「は? はあ? …な、なんて?」
「人間の代理戦争の度に生まれる強い祈りや悲しみとか不安で生まれたんだって。生まれたばかりで女神としてとても弱いんだって」
「待て、ちょっと待て。め、女神? お前なに言ってんの?」
「だから、ここに居る女の子がね」
「女神族? 女神族とは伝承の? 実在すると言うのですか ︎」

フンス、フンスと鼻息荒く近付くミケーレ。
確かに…アミューリアやティアイラス等の人間に恩恵を与える女神は信仰の対象として名前が広く知られ定着している。
しかし、信仰の為に造られた像はどれも姿に統一感はない。
せいぜいアミューリアは波打つロングヘアの女性。
ティアイラスはショートカットの活発そうな女性。
共通点は背中に翼があることくらい。
本当にそんな姿なのかは、誰も見たことがないのだ。

「彼女はそう言ってるな〜」
「ほ、本当かよ…?」
「ホントだよ〜」
「レオハール様は嘘をつくような方ではないですからね、私は信じますよ」
「ヴィンセント〜!」
「っ! そ、そんなことは分かってる!」

見えないけど。
でも、ゲームではたまにサポートの仕事で姿は見たので。
確か、本当に幼い子供の女神なんだよな…12か13歳くらいの。
口調がおかしかったのはなんとなく思い出してきた。

「……しかし、何故レオハール様に女神が見えたのでしょうか?」
「魂の波長が合うみたい。それと、僕が王族なのも関係してるみたいだよ。大昔、人間に『記憶継承』の力を与えたのは彼女なんだって」
「え…」

マ、マジで?
そんな凄い重要女神だったのかよ ︎
生まれたばっかりって言う割に全然若くないな ︎

「でも、それ以降彼女と波長の合う人間は現れなくて…すっかり力が衰退してしまったそうだよ。彼女は女神族の中では人間の祈りで生まれた比較的若い女神で名前もなく、存在が安定してないらしくて…人間族に思い出して欲しくてあの水晶玉に宿る事にしたんだって」
「それが魔宝石なのですね ︎ ではまさか、魔宝石の強大な魔力は…!」
「彼女…エメリエラのだよ。名前がないと定着しづらいって言ってたから、名前付けちゃったけど……………い、今更だけど僕が付けてよかったのかな……………そ、そう? 君が喜んでくれたならそれはよかったけど…」

そうか、喜んでるのか。
まあ、女神の基準はわからないが乙女ゲームのメイン攻略キャラ不動の人気No. 1に名前をつけてもらうなんて女の子なら嬉しいだろう。
俺もお嬢様に「ヴィンセント」と名前をもらった時は感動で打ち震えたものだ。

「いやはやしかし女神ですか! これは興味深い…ふ、ふふふ、ふふふふふふ…っ!」
「…………」
「…………」

…よだれを垂らし、それを拭い、興奮冷めやらぬ変態は怪しい手付きで一歩、二歩とレオハールに近づいて行く。
顔面から「調べたい、全部調べたい」と欲望が丸出しになっている。
こ、こいつ…仮にも教師でウェンディール攻略キャラ最年長のくせに…。

「レオハールしゅとう!」
「 ︎」
「うっわ… ︎」

今にもあの怪しい手付きでレオに触れようとした変態の顎に手刀を食らわす。
勢いのまま階段から転げ落ちたが俺は特に気に留めず、レオに向き直る。
とりあえず、魔宝石に女神エメリエラが宿っているのは分かった。
レオにしか見えないのも。
だが、俺の疑問としてはそこではない。
俺の知っている魔宝石と、目の前の魔宝石が全然違うところだ。

「…………ヴィ、ヴィニー…エ、エメリエラが暴力は嫌いだって…」
「これは暴力ではなく、防衛の為の実力行使です。事前に告知と本人の誓約書もとってあります」
「せ、誓約書ってその為の誓約書だったのかよ…」
「…………それならいいって」
「女神許すのかよ ︎」
「エメリエラ様にご理解頂けて何よりでございます。…それで、エメリエラ様は久方振りに人間と対話ができるようになった、と言う事ですよね?」
「あ、うん、そうなるね」

レオが空中を見上げる。
俺たちはその視線を追って、エメリエラの居場所を把握する他ない。
今はレオの左上の空間。
成る程、浮いてるか…。

「では、もしや魔法はエメリエラ様にご協力頂ければ使えるという事ですかね ︎」
「うわ!」

変態が這い上がってきた!
エディンが慌てて足元に現れた変態を避ける。
鼻から血が出ているんだが、仮にも乙女ゲームの隠れ攻略キャラとしてこの面はいいのか ︎
ホント、乙女ゲームに打ち込む女心分かんねー!
コレのどこがいいんだ?
ついに人気の顔面さえ赤く腫れてるぞ!
顎の腫れは俺だけど!

「…………。いや」
「いや ︎」
「今のままでは使えない。エメリエラの魔力を僕たちが使うには…エメリエラの魔力を中継してくれる存在が必要、なんだって…。ええと…………エメリエラと同じ女の子…そして、僕のように魂の波長が合う人間…」
「…………」

魔宝石が光り輝き、突如ボーリング玉くらいあった光の塊が宙で5つに割れた。
まさか…!

「!」
「な、なんだ ︎」
「…………エメリエラが言ってる…エメリエラの魔力を中継してくれる娘に『核』を持たせ、他の4つの石…『従者石』をその娘の従者に渡せば魔法を使えるようになるって…」
「従者…従者石…! 魔法が、魔法が使えるように…! レオハール様! 他の人間は魔法を使えるようにはならないのですか ︎」
「えっと、どうなのかな、エメリエラ…………今の人間族には、無理…魔力に適応力が、ないから…。適応力があれば、従者石から魔力を貰えるみたい…ええと………今のこの国で魔力の適性が高いのは………やっぱり僕や若い貴族たち…だって」
「そ、そうですか…」

顎や頰に血を滲ませてがっくり項垂れるミケーレ。
こいつ、魔法が使いたかったのか…。
魔法に憧れる気持ちは分かるけど…そのザマで落ち込まれると不気味だなぁ。
やったのは俺だけど。

「……従者石は4つ、核は1つ…その核を扱える乙女を、僕たちは探し出さねばならないという事か…」
「なあ、レオ…これはなかなかの重大事件だぞ。陛下に報告するべきじゃないか?」
「そ、そうだよね…。…………。…わかった、すぐに城へ戻ろう。エメリエラ、陛下に会ってくれるかい? …………うん、ありがとう…。…エディン、ヴィニー、僕は城へ一度帰るよ。先生たちに伝えておいてくれるかい?」
「ああ、分かった」
「お気を付けて」

5つの石を手に階段を降りて行くレオ。
……俺の知っている形の魔宝石…。
まさか、こんな形で5つになっていたなんて…。
いよいよ戦巫女の召喚か…?
けど、俺の記憶ではレオハールたちは先輩…巫女には後輩も居た。
時期的に来年の冬だと思うんだが…。

「おい、鬼畜執事、俺たちは教室に戻るぞ」
「そうだな…」

って、誰が鬼畜執事じゃい。




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