【佳作受賞作品】おっさんの異世界建国記
プロローグ。
剣と魔法の世界アガルタには4つの大陸が存在する。
ローレンシア大陸、エルアル大陸、アルトラス大陸、そしてここ、エルリダ大陸である。
エルリダ大陸は、100年前の人間が踏み入った大陸であり王政の国が3つ存在している。
そのうちの一つがエルダ王国である。
俺が冒険者として10年近く活動してきた王国でもあるが、色々といい噂を聞かない国だ。
まぁ、俺からしたら、エルリダ大陸に存在する3国は奴隷制度があるから、日本人的感覚からしたら、 いい感情は抱かない。
だが、一人で出来ることなんて高が知れているし、いい大人なのだ。
無駄なことをするよりも、郷に従ったほうがいい。
「朝か……」
俺はベッドから出る。
その際に、膝に痛みを感じた。
「やっぱり痛みがあるな……」
俺は一人呟きながら、部屋の中を見渡す。
部屋は簡素な木で作られたベッドとテーブルにセットなのか椅子が2脚置かれている。
10年間、借りている1Kの部屋だが、誰も部屋には来たことがない。
そもそも、俺にはそういう知人なんて、この世界にはいない。
俺は、テーブルの上に置いてある金貨が入った皮袋を腰のベルトに縛る。
そして部屋の扉を開けると部屋から出た。
俺が冒険者として暮らしているのはカルーダという港町だ。
人口3万人ほどの港町だが、中々活気がある町でもある。
エルリダ大陸の南部を支配するエルダ王国の主要港であり、南のエルアル大陸との交易で栄えている。
元々は、ローレンシア大陸からの移民が立てた国といわれていて、今年で建国100年らしい。
話によるとローレンシア大陸に存在していた海洋国家ルグニカの王族が立てた国と言われているが、深くは気にしてないから詳細は知らない。
ただ、言えることと言えば、エルリダ大陸には、他の大陸には存在しない魔物が居るということだ。
その魔物を目当てに他の国から出稼ぎのために冒険者が多く訪れているおかげで、俺みたいな毛色の変わった冒険者も受け入れられていたりする。
俺は、中世の佇まいの家屋が並ぶ裏路地を歩く。
膝に矢を受けてしまってから、膝を庇って歩いているために目的地まで着くのに時間がかかる。
つまり移動速度が遅いということだ。
だから大通りを歩いていると馬車や荷馬車の邪魔になる。
邪魔になるだけならいいのだが、エルダ王国の貴族は、かなり傲慢で平民の命をゴミのようにしか思っていない。
彼らからしたら、馬車で平民を引いても問題ないと思っているのだ。
まぁ、要は変な輩に巻き込まれないように裏路地を歩いていると言ったほうがはやい。
しばらく歩くと、鈍い白色の建物が見えてくる。
その建物は、周辺の煉瓦で造られた建物とは対照的に重厚な石を積んで作られている。
俺は裏口の扉を開けて中に入る。
まぁ、基本は正面から入るのが筋なのだが、10年近く冒険者をしていると冒険者ギルドの職員にも顔が効いてくるのだ。
裏口から入ったにも関わらず、いや、裏口だからこそ、扉の内側につけられていた大きな鐘が音を鳴らし裏口から人が入ってきたことを冒険者ギルド中に知らせる。
一瞬、全員の視線が俺に向けられてくるが、誰が入ってきたか分かった瞬間、興味が失せたのか視線が離れていくのを感じた。
今日は、膝の調子がいいとは言え、かなりの距離を歩いてきたこともあり痛みが強くなっている。
これ以上は、正直歩きたくない。
幸い、俺から一番近くの席――冒険者ギルドの受付嬢の前の席は空いていた。
俺は、すぐに椅子に座る。
「本日は、どのようなご用件でしょうか?」
話しかけてきたのは、見たこともない16歳くらいの女性であった。
身体的故障が多く、すぐに引退する冒険者の中で10年も活動するのは、本当に一部だ。その俺のことを知らないということは新人だろう。
まぁ、膝を故障していてまともな仕事がないからな。
それに、まともに動けなくなってから、パーティメンバーの連中も疎遠だし。
仕事を見繕うだけなら新人でも問題ないだろう。
「ああ、ちょっと仕事を見積もってもらいたくてな」
「仕事ですね! 少々お待ちください!」
冒険者ギルドのカウンターを挟んだ椅子に座っている16歳くらいの女性は、立ち上がると依頼書が収められている棚に向かっていった。
依頼書棚は、基本、冒険者ギルドに所属している職員だけが見ることが出来る。
女性のほうを見ていると、棚を確認しながら、時折、俺の方へ視線を向けてくる。
どんな仕事が俺に向いているのか考えながら選んでいるのだろう。
早くしてほしい、
膝が痛いから……。
俺は彼女の様子を見たあと、しばらく時間がかかりそうだなと思い冒険者ギルド内を見渡す。
すると、ある一点に目が留まった。
それは、クエストボートと呼ばれる物。
殆どが緊急性の高いものだから稼げる仕事などが多く貼られているのだ。
本当は、クエストボードに貼られている仕事をしたいのだが――。
俺は膝に矢を受けてしまい痛みから、緊急性の高い仕事は引き受けられない。
何故なら、緊急性の高い仕事は主に魔物討伐か盗賊や山賊、海賊の討伐になるからだ。
まぁ、だから稼げるっていう面もある。
はあ、ついてない。
本当についてない。
俺は、暇なあまり自分がどうして、ここにいるのかを考えてしまう。
この俺、神田栄治は、東京でサラリーマンをしていた。
主に、IT事業関係の会社に勤めていた。
だが、会社の上層部が株式上場後、インサイダー取引を行い、連日、週刊誌や新聞・テレビで叩かれ株価は大暴落して会社は倒産し失業した。
そしてハローワークに向かっていたら、気がつけば見知らぬ町中に俺は立っていた。
どうしよもなく途方に暮れていたところを助けてくれたのは二人の美少女であった。
立ち話もだからと二人は、俺を酒場のような場所に誘った。
そこで彼女らは、名前を名乗ってきた。
名前はリアとソフィア。
そこで二人が大陸について教えてくれたことに俺は頷くこととしか出来なかった。
もしかしたら、日本のどこかの路地に迷いこんでしまっただけなのでは? と思ってはいたがやはり違ったらしい。
額に当てて、気がつけば溜息をついていた。
ソフィアという少女が「あの……大丈夫ですか?」と心配した表情で話かけてきた。
彼女は弓を扱うことに長けている種族らしい。
話を聞くと、彼女は人間とエルフのハーフと説明された。
里を追い出されて人間の町に来てリアと出会ったらしい。
物語のようにハーフエルフは嫌われるのかもな。
「私の名前はリア! 魔法師なの!」
「魔法師?」
魔術師とか、魔導師とか、黒魔導師とか白魔導師とかならゲームで聞いたことがあるが、魔法師という単語は正直、馴染みがない。
「魔法師は、攻撃魔法を操る職業なの!」
「なるほど……」
俺は腕を組みながら頷く。
「それで、その弓エルフと魔法師が俺に何の用だ?」
「貴方には素質があるわ!」
「素質があるの!」
「素質?」
ソフィアとリアは、身を乗り出すようにして俺に語り掛けてきた。
よくは知らないが、俺にはすごい素質があるらしい。
もしかしたら異世界に来たのだから勇者になるのだろうか?
いや、それなら王女などに召還されるのが定番なのではないのか?
しかし、最近では、召還されると奴隷にされる勇者がいるという小説を読んだことがある。
王族に召還されるのも危険かも知れない。
「そう! 神官としての才能があるの!」
「神官?」
彼女らは、俺に神官としてパーティに入って欲しいと誘ってきた。
回復魔法が使えるのは神官の才能がある人間だけで神官の才能がある人間を教会は集めているらしい。
そして、教会に所属すれば安定した雇用と給料が約束されるようだ。
日本でいうところの公務員と考えればいいのだろうか? 
「つまり、神官の性能を持っていてフリーの人間は少ないから入ってほしいと?」
俺の言葉に彼女らは頷いてくる。
こちらとしても、彼女らの提案は、とても魅力的だ。
異世界にきたばかりで生活基盤もない。
まぁ、異世界に気がついたら立っていて、それでも生活基盤なんて物があったら、それこそ物語の主人公くらいだろう。
彼女らの提案を断る選択肢はない。
それに、俺だって29歳の男だ、
可愛い女子大生くらいの2人の女性とパーティをするのは願ったり叶ったりだ。
それにパーティを組んでいれば職場恋愛と同じく、いつかは俺に惚れるかもしれないからな。
色々な思惑が、脳裏内で交差し俺は、彼女らのパーティメンバーの一人になった。
俺には神官として大怪我は治せないが、傷を縫い合わせたりする程度の回復魔法は使うことが出来た。
しばらくして、俺には生活魔法が使えることが分かった。
なんでも100人に一人しか使うことができないらしい。
試行錯誤した結果、生活魔法は、家事に特化していることに気がついた。
それからは料理の練習をした。
しばらくして俺達のパーティは重大な問題に直面した。
前衛が俺達のパーティにはいないのだ。
冒険者としての力量が上がれば、それだけ危険な狩場、稼げるダンジョンへと潜ることになる。
すると、どうしても魔物を押しとどめておく壁役が必要になる。
俺達のパーティ編成は【魔法使いのリア】【ハーフエルフで弓使いのソフィア】【神官で日本人、神田栄治】の3人だ。
どう考えても後衛パーティだろう。
一応、前衛は募集した。
リアなどは、酒場で「前衛がこないのー」とか言っていたが、俺としても彼女の言葉には同意はしていた。
この世界の回復魔法というのは、ゲームでいう何でも回復できるような万能な物ではない。
そのため危険な前衛を希望する人間は少なかった。
居たとしても、とっくに売約済みが即売れだ。
だが、前衛が居ないからと言って、仕事をしないという訳にはいかない。
働かなければ食べてはいけないのだ。
しかたなく、俺は前衛を買って出ることにした。
前衛が出来るという予感はあった。
何故なら、この世界の魔物の攻撃は、俺には殆どダメージを与えることが無かったから。
それに、俺には回復魔法もある。
傷を塞ぐ事と、血を止めることくらいしか出来ないが……。
それでも自前でヒールが出来る前衛なら、耐久力は高いのではないのか? という考えであった。
まぁ、前衛をして無理でも稼ごうとしたのは、リアやソフィアと違って貯蓄がなかったのが一番の要因だ。
すでに冒険者を始めて3年が経過している俺は32歳だ。
ずっと出来る仕事ではないということくらい冒険者をしていて分かる。。
日本と違ってセーフティネットがない世界だ。
稼げるときに稼いでおかないと将来生きていけない。
だから、俺は必死で前衛の役目を演じ続けた。
ローレンシア大陸、エルアル大陸、アルトラス大陸、そしてここ、エルリダ大陸である。
エルリダ大陸は、100年前の人間が踏み入った大陸であり王政の国が3つ存在している。
そのうちの一つがエルダ王国である。
俺が冒険者として10年近く活動してきた王国でもあるが、色々といい噂を聞かない国だ。
まぁ、俺からしたら、エルリダ大陸に存在する3国は奴隷制度があるから、日本人的感覚からしたら、 いい感情は抱かない。
だが、一人で出来ることなんて高が知れているし、いい大人なのだ。
無駄なことをするよりも、郷に従ったほうがいい。
「朝か……」
俺はベッドから出る。
その際に、膝に痛みを感じた。
「やっぱり痛みがあるな……」
俺は一人呟きながら、部屋の中を見渡す。
部屋は簡素な木で作られたベッドとテーブルにセットなのか椅子が2脚置かれている。
10年間、借りている1Kの部屋だが、誰も部屋には来たことがない。
そもそも、俺にはそういう知人なんて、この世界にはいない。
俺は、テーブルの上に置いてある金貨が入った皮袋を腰のベルトに縛る。
そして部屋の扉を開けると部屋から出た。
俺が冒険者として暮らしているのはカルーダという港町だ。
人口3万人ほどの港町だが、中々活気がある町でもある。
エルリダ大陸の南部を支配するエルダ王国の主要港であり、南のエルアル大陸との交易で栄えている。
元々は、ローレンシア大陸からの移民が立てた国といわれていて、今年で建国100年らしい。
話によるとローレンシア大陸に存在していた海洋国家ルグニカの王族が立てた国と言われているが、深くは気にしてないから詳細は知らない。
ただ、言えることと言えば、エルリダ大陸には、他の大陸には存在しない魔物が居るということだ。
その魔物を目当てに他の国から出稼ぎのために冒険者が多く訪れているおかげで、俺みたいな毛色の変わった冒険者も受け入れられていたりする。
俺は、中世の佇まいの家屋が並ぶ裏路地を歩く。
膝に矢を受けてしまってから、膝を庇って歩いているために目的地まで着くのに時間がかかる。
つまり移動速度が遅いということだ。
だから大通りを歩いていると馬車や荷馬車の邪魔になる。
邪魔になるだけならいいのだが、エルダ王国の貴族は、かなり傲慢で平民の命をゴミのようにしか思っていない。
彼らからしたら、馬車で平民を引いても問題ないと思っているのだ。
まぁ、要は変な輩に巻き込まれないように裏路地を歩いていると言ったほうがはやい。
しばらく歩くと、鈍い白色の建物が見えてくる。
その建物は、周辺の煉瓦で造られた建物とは対照的に重厚な石を積んで作られている。
俺は裏口の扉を開けて中に入る。
まぁ、基本は正面から入るのが筋なのだが、10年近く冒険者をしていると冒険者ギルドの職員にも顔が効いてくるのだ。
裏口から入ったにも関わらず、いや、裏口だからこそ、扉の内側につけられていた大きな鐘が音を鳴らし裏口から人が入ってきたことを冒険者ギルド中に知らせる。
一瞬、全員の視線が俺に向けられてくるが、誰が入ってきたか分かった瞬間、興味が失せたのか視線が離れていくのを感じた。
今日は、膝の調子がいいとは言え、かなりの距離を歩いてきたこともあり痛みが強くなっている。
これ以上は、正直歩きたくない。
幸い、俺から一番近くの席――冒険者ギルドの受付嬢の前の席は空いていた。
俺は、すぐに椅子に座る。
「本日は、どのようなご用件でしょうか?」
話しかけてきたのは、見たこともない16歳くらいの女性であった。
身体的故障が多く、すぐに引退する冒険者の中で10年も活動するのは、本当に一部だ。その俺のことを知らないということは新人だろう。
まぁ、膝を故障していてまともな仕事がないからな。
それに、まともに動けなくなってから、パーティメンバーの連中も疎遠だし。
仕事を見繕うだけなら新人でも問題ないだろう。
「ああ、ちょっと仕事を見積もってもらいたくてな」
「仕事ですね! 少々お待ちください!」
冒険者ギルドのカウンターを挟んだ椅子に座っている16歳くらいの女性は、立ち上がると依頼書が収められている棚に向かっていった。
依頼書棚は、基本、冒険者ギルドに所属している職員だけが見ることが出来る。
女性のほうを見ていると、棚を確認しながら、時折、俺の方へ視線を向けてくる。
どんな仕事が俺に向いているのか考えながら選んでいるのだろう。
早くしてほしい、
膝が痛いから……。
俺は彼女の様子を見たあと、しばらく時間がかかりそうだなと思い冒険者ギルド内を見渡す。
すると、ある一点に目が留まった。
それは、クエストボートと呼ばれる物。
殆どが緊急性の高いものだから稼げる仕事などが多く貼られているのだ。
本当は、クエストボードに貼られている仕事をしたいのだが――。
俺は膝に矢を受けてしまい痛みから、緊急性の高い仕事は引き受けられない。
何故なら、緊急性の高い仕事は主に魔物討伐か盗賊や山賊、海賊の討伐になるからだ。
まぁ、だから稼げるっていう面もある。
はあ、ついてない。
本当についてない。
俺は、暇なあまり自分がどうして、ここにいるのかを考えてしまう。
この俺、神田栄治は、東京でサラリーマンをしていた。
主に、IT事業関係の会社に勤めていた。
だが、会社の上層部が株式上場後、インサイダー取引を行い、連日、週刊誌や新聞・テレビで叩かれ株価は大暴落して会社は倒産し失業した。
そしてハローワークに向かっていたら、気がつけば見知らぬ町中に俺は立っていた。
どうしよもなく途方に暮れていたところを助けてくれたのは二人の美少女であった。
立ち話もだからと二人は、俺を酒場のような場所に誘った。
そこで彼女らは、名前を名乗ってきた。
名前はリアとソフィア。
そこで二人が大陸について教えてくれたことに俺は頷くこととしか出来なかった。
もしかしたら、日本のどこかの路地に迷いこんでしまっただけなのでは? と思ってはいたがやはり違ったらしい。
額に当てて、気がつけば溜息をついていた。
ソフィアという少女が「あの……大丈夫ですか?」と心配した表情で話かけてきた。
彼女は弓を扱うことに長けている種族らしい。
話を聞くと、彼女は人間とエルフのハーフと説明された。
里を追い出されて人間の町に来てリアと出会ったらしい。
物語のようにハーフエルフは嫌われるのかもな。
「私の名前はリア! 魔法師なの!」
「魔法師?」
魔術師とか、魔導師とか、黒魔導師とか白魔導師とかならゲームで聞いたことがあるが、魔法師という単語は正直、馴染みがない。
「魔法師は、攻撃魔法を操る職業なの!」
「なるほど……」
俺は腕を組みながら頷く。
「それで、その弓エルフと魔法師が俺に何の用だ?」
「貴方には素質があるわ!」
「素質があるの!」
「素質?」
ソフィアとリアは、身を乗り出すようにして俺に語り掛けてきた。
よくは知らないが、俺にはすごい素質があるらしい。
もしかしたら異世界に来たのだから勇者になるのだろうか?
いや、それなら王女などに召還されるのが定番なのではないのか?
しかし、最近では、召還されると奴隷にされる勇者がいるという小説を読んだことがある。
王族に召還されるのも危険かも知れない。
「そう! 神官としての才能があるの!」
「神官?」
彼女らは、俺に神官としてパーティに入って欲しいと誘ってきた。
回復魔法が使えるのは神官の才能がある人間だけで神官の才能がある人間を教会は集めているらしい。
そして、教会に所属すれば安定した雇用と給料が約束されるようだ。
日本でいうところの公務員と考えればいいのだろうか? 
「つまり、神官の性能を持っていてフリーの人間は少ないから入ってほしいと?」
俺の言葉に彼女らは頷いてくる。
こちらとしても、彼女らの提案は、とても魅力的だ。
異世界にきたばかりで生活基盤もない。
まぁ、異世界に気がついたら立っていて、それでも生活基盤なんて物があったら、それこそ物語の主人公くらいだろう。
彼女らの提案を断る選択肢はない。
それに、俺だって29歳の男だ、
可愛い女子大生くらいの2人の女性とパーティをするのは願ったり叶ったりだ。
それにパーティを組んでいれば職場恋愛と同じく、いつかは俺に惚れるかもしれないからな。
色々な思惑が、脳裏内で交差し俺は、彼女らのパーティメンバーの一人になった。
俺には神官として大怪我は治せないが、傷を縫い合わせたりする程度の回復魔法は使うことが出来た。
しばらくして、俺には生活魔法が使えることが分かった。
なんでも100人に一人しか使うことができないらしい。
試行錯誤した結果、生活魔法は、家事に特化していることに気がついた。
それからは料理の練習をした。
しばらくして俺達のパーティは重大な問題に直面した。
前衛が俺達のパーティにはいないのだ。
冒険者としての力量が上がれば、それだけ危険な狩場、稼げるダンジョンへと潜ることになる。
すると、どうしても魔物を押しとどめておく壁役が必要になる。
俺達のパーティ編成は【魔法使いのリア】【ハーフエルフで弓使いのソフィア】【神官で日本人、神田栄治】の3人だ。
どう考えても後衛パーティだろう。
一応、前衛は募集した。
リアなどは、酒場で「前衛がこないのー」とか言っていたが、俺としても彼女の言葉には同意はしていた。
この世界の回復魔法というのは、ゲームでいう何でも回復できるような万能な物ではない。
そのため危険な前衛を希望する人間は少なかった。
居たとしても、とっくに売約済みが即売れだ。
だが、前衛が居ないからと言って、仕事をしないという訳にはいかない。
働かなければ食べてはいけないのだ。
しかたなく、俺は前衛を買って出ることにした。
前衛が出来るという予感はあった。
何故なら、この世界の魔物の攻撃は、俺には殆どダメージを与えることが無かったから。
それに、俺には回復魔法もある。
傷を塞ぐ事と、血を止めることくらいしか出来ないが……。
それでも自前でヒールが出来る前衛なら、耐久力は高いのではないのか? という考えであった。
まぁ、前衛をして無理でも稼ごうとしたのは、リアやソフィアと違って貯蓄がなかったのが一番の要因だ。
すでに冒険者を始めて3年が経過している俺は32歳だ。
ずっと出来る仕事ではないということくらい冒険者をしていて分かる。。
日本と違ってセーフティネットがない世界だ。
稼げるときに稼いでおかないと将来生きていけない。
だから、俺は必死で前衛の役目を演じ続けた。
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