Lv.1なのにLv.MAXよりステ値が高いのはなんでですか? 〜転移特典のスキルがどれも神引き過ぎた件〜
再び敵襲ですか?
サクッとテントの設営を終えて、今晩の飯を作り始める。
まだ中腹でもかなり気温は低いようでなかなか体かま暖まらず、致し方なく2つの剣に火属性を付与して地面に突き刺し、一時的に周囲の気温を上昇させる。
熱気によって空気が一気に膨張したのが目に取れるように、テントの体積が大きく膨らんでいく。
「あちゃー、これは順番間違えたか?」
「大丈夫ですよ、このテントはティンダロスハウンドから剥ぎ取った素材で出来ていますから」
「なんだよそのSFホラー作家が作っちまった神話に出てきそうな名前の犬は……」
「仰々しい名前でしょうが、多分昔来た地球の人がつけた名前だと思いますよ。直線距離で走るよりもジグザグと交錯するように走る方が早い、犬のようなモンスターです」
「犬って何よ?」
「あー、この世界の人間は犬を知らないのか」
聞くところによると、大型の魔獣へと進化していった狼は人間が使役する事ができるような存在ではなかったため、人間は狼を狩る対象として見ていたようだ。
「素早く走り、尚且つ敵に当たらないように進むために特化したので、そのスピードに耐え切るために皮膚も分厚く伸縮性の高い素材になっているそうです」
「なるほどね……?」
イマイチ納得しかねるところはあるのだけれど、ブツブツ文句を言っていても仕方が無いので風魔法で気温を常時この温かさに保つように、俺を中心にして半径20メートルに魔法を展開した。
……つくづく便利だな、魔法って。地球人類が科学で必死に研究してやってきたことが、生まれ備わった人間の力だけで行うことが出来るんだから。
あれ、魔力はこの世界の人類が生まれながらに持つものだよな?
じゃあ、転移者である俺たちはなぜ魔力を持っている?
転移時の特典にしたって、生まれながらの能力を付与した上でチート能力も与えるなんて、いくらなんでも無理がないだろうか?
助ける助けないなんて、実際俺たちの心持ちしだいなのだ。そんな気持ちひとつで敵にも味方にもなりうる存在に、さらに強大な力を与えるなんてことがあるだろうか?
少なくとも、魔法を使うことすら、チート持ちというステータス以外はただの人間である転移者たちには難しいことのはずだ。
俺だって現に、風鎧を手に入れなければ風魔法は手に入れられなかったし、条件の開示されていなかった火属性の付与魔法を得るのに何回も時間をやり直していた。
……それだけなにかを与えるのなら、リスクがあってもおかしくない。なのにあいつのリスクはあそこから出られない、地上の人類に過度な干渉できないというその2点だけ。
何がなんでも少し無理がありすぎるだろう。
神に騙されている可能性も考えておかなきゃいけないのか。
深読みしすぎなのかもしれないけど、気に止めずにはいられない。考えることはいつでもやめられたのにそれが今回出来なかったのが、一体なぜなのか俺にはよくわからなかった。
―エイジ、ἐλπίςを目覚めさせろ―
頭の中で響くうるさい声を振り払うために、ひたすらに周囲の人間と与太話を続けた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
一晩たち、かなり目立つ行為をしているはずなのに一切音沙汰のない魔王軍の魔族たちに半ば飽き始めていた時、シルティスが張っていた敵感知が作動したようで、闇魔法を即座にその方向へとはなった。
「ちょ、急にどうしたんですか?」
「敵感知になんかが引っかかたんだろうな」
驚くミツアキに軽く返事を返しておき、シルティスが魔法を放った方向に敵がいることを、俺も感知を発動して確認する。
「まだ生きてるな……」
「そこそこに強い子が来たみたい」
一撃で仕留め損なったことを少し悔しそうにするシルティス。それを片手で頭を撫でて軽く落ち着かせつつ、大きく落ち窪んだ山の斜面を確認するため、紅羽の方だけ地面から抜いて穴へと近づく。
『あーあ、みんなの言うとうりだったぁ。ボク一人じゃあお兄さんたちには勝てないね』
そこに立っていたのは青い髪に全身武装をした不思議な格好の、背丈はざっとマキナくらいある子供だった。
なぜ俺が子供と呼称をするかと言えば、それは人目見て相手が恐ろしく童顔だったからだ。
まるで小学生の頃から顔だけが全く成長しなかったのではないかという程に若々しい。
「一体お前は何者なんだ?」
単に攻撃力と防御力だけを考えるならば、こいつはシルティスが放った上位の魔法を耐え、なおピンピンしていることから魔王級の強さを誇っていることになる。
それくらい、今の俺と主従関係を結んだシルティスの戦力は馬鹿にならないのだ。
単純な力と力のぶつかり合いだけなのだったら、常に勝利への優位性はこちらにある。
こうなること全てを見越してきているのなら多少理解出来るところはあるものの、勝てないとわかっていて突っ込んでくる理由が見当たらない。
「おい、シルティス! こっち来い!」
これほどの強さなら、シルティスがこいつのことを知っている可能性は多いにある。だとしたら、ヤン兄やミツアキから離れたところで戦闘を行わないといけないかもしれない。
「ご主人、大丈夫よ。そいつはもう私たちに危害を加えられないから」
「は?」
『うん、ボクはもうあなたに危害は加えられないよ』
そう笑顔で答える目の前の子供に、俺はただただ困惑顔で訊ねる。
「お前は一体何者なんだ?」
『ボクの名前はエルン。氷の魔王、いや、あなたたちからすると南の魔王か。それの妹だ』
突如現れた魔王の妹名乗る子供に、俺はさらなる困惑を重ねることしか出来なかった。
どういうことなのさ、これ。困惑を積み重ねるだけのコインタワーなんてそろそろ崩れて終わってくれてもいいんだけど!?
『まぁとりあえず『きかんげんてーおたすけきゃら』? って感じのやつらしいからよろしくね!』
堂々と自分の野茂を期間限定お助けキャラと言ってのける彼女に対して、異常性以外の何も感じ得ることは無かった。
まだ中腹でもかなり気温は低いようでなかなか体かま暖まらず、致し方なく2つの剣に火属性を付与して地面に突き刺し、一時的に周囲の気温を上昇させる。
熱気によって空気が一気に膨張したのが目に取れるように、テントの体積が大きく膨らんでいく。
「あちゃー、これは順番間違えたか?」
「大丈夫ですよ、このテントはティンダロスハウンドから剥ぎ取った素材で出来ていますから」
「なんだよそのSFホラー作家が作っちまった神話に出てきそうな名前の犬は……」
「仰々しい名前でしょうが、多分昔来た地球の人がつけた名前だと思いますよ。直線距離で走るよりもジグザグと交錯するように走る方が早い、犬のようなモンスターです」
「犬って何よ?」
「あー、この世界の人間は犬を知らないのか」
聞くところによると、大型の魔獣へと進化していった狼は人間が使役する事ができるような存在ではなかったため、人間は狼を狩る対象として見ていたようだ。
「素早く走り、尚且つ敵に当たらないように進むために特化したので、そのスピードに耐え切るために皮膚も分厚く伸縮性の高い素材になっているそうです」
「なるほどね……?」
イマイチ納得しかねるところはあるのだけれど、ブツブツ文句を言っていても仕方が無いので風魔法で気温を常時この温かさに保つように、俺を中心にして半径20メートルに魔法を展開した。
……つくづく便利だな、魔法って。地球人類が科学で必死に研究してやってきたことが、生まれ備わった人間の力だけで行うことが出来るんだから。
あれ、魔力はこの世界の人類が生まれながらに持つものだよな?
じゃあ、転移者である俺たちはなぜ魔力を持っている?
転移時の特典にしたって、生まれながらの能力を付与した上でチート能力も与えるなんて、いくらなんでも無理がないだろうか?
助ける助けないなんて、実際俺たちの心持ちしだいなのだ。そんな気持ちひとつで敵にも味方にもなりうる存在に、さらに強大な力を与えるなんてことがあるだろうか?
少なくとも、魔法を使うことすら、チート持ちというステータス以外はただの人間である転移者たちには難しいことのはずだ。
俺だって現に、風鎧を手に入れなければ風魔法は手に入れられなかったし、条件の開示されていなかった火属性の付与魔法を得るのに何回も時間をやり直していた。
……それだけなにかを与えるのなら、リスクがあってもおかしくない。なのにあいつのリスクはあそこから出られない、地上の人類に過度な干渉できないというその2点だけ。
何がなんでも少し無理がありすぎるだろう。
神に騙されている可能性も考えておかなきゃいけないのか。
深読みしすぎなのかもしれないけど、気に止めずにはいられない。考えることはいつでもやめられたのにそれが今回出来なかったのが、一体なぜなのか俺にはよくわからなかった。
―エイジ、ἐλπίςを目覚めさせろ―
頭の中で響くうるさい声を振り払うために、ひたすらに周囲の人間と与太話を続けた。
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一晩たち、かなり目立つ行為をしているはずなのに一切音沙汰のない魔王軍の魔族たちに半ば飽き始めていた時、シルティスが張っていた敵感知が作動したようで、闇魔法を即座にその方向へとはなった。
「ちょ、急にどうしたんですか?」
「敵感知になんかが引っかかたんだろうな」
驚くミツアキに軽く返事を返しておき、シルティスが魔法を放った方向に敵がいることを、俺も感知を発動して確認する。
「まだ生きてるな……」
「そこそこに強い子が来たみたい」
一撃で仕留め損なったことを少し悔しそうにするシルティス。それを片手で頭を撫でて軽く落ち着かせつつ、大きく落ち窪んだ山の斜面を確認するため、紅羽の方だけ地面から抜いて穴へと近づく。
『あーあ、みんなの言うとうりだったぁ。ボク一人じゃあお兄さんたちには勝てないね』
そこに立っていたのは青い髪に全身武装をした不思議な格好の、背丈はざっとマキナくらいある子供だった。
なぜ俺が子供と呼称をするかと言えば、それは人目見て相手が恐ろしく童顔だったからだ。
まるで小学生の頃から顔だけが全く成長しなかったのではないかという程に若々しい。
「一体お前は何者なんだ?」
単に攻撃力と防御力だけを考えるならば、こいつはシルティスが放った上位の魔法を耐え、なおピンピンしていることから魔王級の強さを誇っていることになる。
それくらい、今の俺と主従関係を結んだシルティスの戦力は馬鹿にならないのだ。
単純な力と力のぶつかり合いだけなのだったら、常に勝利への優位性はこちらにある。
こうなること全てを見越してきているのなら多少理解出来るところはあるものの、勝てないとわかっていて突っ込んでくる理由が見当たらない。
「おい、シルティス! こっち来い!」
これほどの強さなら、シルティスがこいつのことを知っている可能性は多いにある。だとしたら、ヤン兄やミツアキから離れたところで戦闘を行わないといけないかもしれない。
「ご主人、大丈夫よ。そいつはもう私たちに危害を加えられないから」
「は?」
『うん、ボクはもうあなたに危害は加えられないよ』
そう笑顔で答える目の前の子供に、俺はただただ困惑顔で訊ねる。
「お前は一体何者なんだ?」
『ボクの名前はエルン。氷の魔王、いや、あなたたちからすると南の魔王か。それの妹だ』
突如現れた魔王の妹名乗る子供に、俺はさらなる困惑を重ねることしか出来なかった。
どういうことなのさ、これ。困惑を積み重ねるだけのコインタワーなんてそろそろ崩れて終わってくれてもいいんだけど!?
『まぁとりあえず『きかんげんてーおたすけきゃら』? って感じのやつらしいからよろしくね!』
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