Lv.1なのにLv.MAXよりステ値が高いのはなんでですか? 〜転移特典のスキルがどれも神引き過ぎた件〜
不意に昔を思い出したんですが? 2
「ふー、やいやいやい、エイジさんやい」
やけにテンションの高い姉さんが話をかけてきた。
「なにさ、今ちょっと忙しいんだけど」
「せっかくの休日にごろごろするのが忙しいことなの?」
「もちろん。俺にとってはなくてはならないものなんだよ」
実際このようにごろごろとしていないと平日動くことが出来ないのだから、俺の言っていることは理にかなっている。俺の中では。
「久々に大好きな姉と遊びたいとは思わんのかね」
「自分が東京旅行行くと思ってたから、いつもみたいに遊ぶ約束してこなかったんでしょうが。自業自得だね」
「うっ……もういいわ、あんたが寝てるだけなんだったら、私も寝技かけてるだけだからっ!」
そう言って勢いよく姉さんが俺にのしかかってきたかと思うと、仰向けに寝ていた俺の左腕を掴み、腕挫十字固をかけようとしてきた。
なんでかけようとしてくる技の名前がわかるのか。それはこれが日常的にあることだからということ以外に何も語る必要は無いだろう。毎日やられてれば嫌でも覚える。
腕挫十字固は、相手の片腕を自分の太腿に挟み、自身の両手で相手の腕全体を反らせてきめる技だと、以前かけられた時に聞かされた。
「ふっ、1度聞けば対処方法くらいわかるんだよっ!」
実際の柔道のルールではやっていいのかどうかわからないけれど、これだけやることがわかりやすく、なおかつこちらは投げられた反動がないのならば、避けるのは簡単だ。
左腕を掴まれた段階で、足をかけられる前に姉さんの足を右手を伸ばして払う。その後体制を崩した姉さんを半分持ち上げるかたちで立ち上がり、離れようとしない手を思いっきり引き剥がした。
「流石に柔道技はもう効かないか」
「あんだけ毎日かけられてればね。というかそろそろやめて欲しい……」
「エイジが真人間になるまではやめません!」
「そう言ってるけどさ、姉さん、自分が既に真人間っていう言葉の枠から出ていることに気付こう? 日常的に弟に格闘技の技かける姉ってただのヤバいやつだよ?」
人間は普通、女性の方が精神年齢が早く成長するらしいが、うちの姉さんは例外なようだ……
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
結局深夜まで姉さんに付き合ってテレビゲームをぶっ通しでやり続けた。
いつもは対戦ばかりを選択する姉さんが珍しく協力を選択したので何事かと思ったが、新しく追加されたオンラインタッグマッチをプレイしたかっただけらしい。
そんな調子でほとんど定位置から動かなかったので、肩と首がかなり疲れた。これは明日の学校にひびきそうだ。
畳の上でだらしなく寝ている姉さんは、寝ている時の姿だったらもう少し学校の人達にもモテたんじゃなかろうかと思う。
身長こそ162と少し高めらしいが、我が姉ながら可愛らしい顔つきをしているのは確かだ。さすがは母の子。今でも童顔で年齢不詳なところがあるからな。
何度叩いても起きる気配がなく、かと言って俺が運ぼうにも姉さんの部屋は2回で流石にきついので居間まで布団を運んで、姉さんをそこに寝かせる。
そのまま俺は部屋に戻り、本来の休日の予定であった睡眠をやっととることが出来たのだった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
……居間から聞こえるサイレンの音で目が覚めてしまった。姉さんの事だから、あのあと目が覚めて深夜番組でも見ていたんだろう。
すると、こちらに大慌てで走ってくる音が聞こえたので、ゆっくりと起き上がって足音の主が来るのを待つことにした。
「エイジっ!」
「どうしたの、夜中にうるさいよ。ご近所の迷惑だ」
「それどころじゃないわ、早く居間に来て……」
姉の様子がふざけている時のそれではなく真剣なものだとわかったので、俺は言われたとおりに居間に足を運ぶ。
そこに流れたニュースは非常に現実感がなく、なにかのパロディなのではないかと思うほどにふざけた内容だった。
『東京都は我々が占拠した』
テロップには確かにそう書かれていて、どこかの広い公園の至る所に白装束を着た大量の人達が並んでおり、黒装束を着た男が演説を行っていた。
『我々は新人類。貴様らよりさらに神の寵愛を受けた選ばれし者たちだ』
黒装束の男は大きく腕を広げると、どこの言葉かわからない言葉で歌を歌い始め、その場にいた白装束の集団は頭を抑えてその場に座り込んでしまった。
『さぁ、先程のショーを見られなかった諸君。2度目のショーの開演だ!』
黒装束の言葉に合わせて人々が立ち上がるが、その目に先ほどのような生気はなく、ただ立っているだけ。まるでゾンビのようだ。
姉さんは先程から顔をおおって下を向いてしまっている。黒装束のいう、先程のショーというものを見たということだろうか。
『始めたまえ、私の呪いを受けし者達よ!』
黒装束のその一声で、人々はいっせいにどこかえと駆け出す。
一人、また一人と近くの川に飛び込み、あぶれた人達はお互いが殴りあったり、手頃な道具で殺し合いを始めた。
『これぞ神の寵愛の力! 最後の一人になればこの寵愛の力はお前達にも得られるだろう!』
男はにやけ顔でその言葉にこう付け足した。
『この、自殺願望、殺人願望の呪いを乗り越えられればな』
酷く凄惨な光景に思わず目を背けると、姉さんがゆっくりと話し出す。
「……あのね、エイジ……」
姉さんの口から語られたそれは、俺がこの世で一番考えたくがなかったことであり、この悲劇の始まりになる出来事だった。
やけにテンションの高い姉さんが話をかけてきた。
「なにさ、今ちょっと忙しいんだけど」
「せっかくの休日にごろごろするのが忙しいことなの?」
「もちろん。俺にとってはなくてはならないものなんだよ」
実際このようにごろごろとしていないと平日動くことが出来ないのだから、俺の言っていることは理にかなっている。俺の中では。
「久々に大好きな姉と遊びたいとは思わんのかね」
「自分が東京旅行行くと思ってたから、いつもみたいに遊ぶ約束してこなかったんでしょうが。自業自得だね」
「うっ……もういいわ、あんたが寝てるだけなんだったら、私も寝技かけてるだけだからっ!」
そう言って勢いよく姉さんが俺にのしかかってきたかと思うと、仰向けに寝ていた俺の左腕を掴み、腕挫十字固をかけようとしてきた。
なんでかけようとしてくる技の名前がわかるのか。それはこれが日常的にあることだからということ以外に何も語る必要は無いだろう。毎日やられてれば嫌でも覚える。
腕挫十字固は、相手の片腕を自分の太腿に挟み、自身の両手で相手の腕全体を反らせてきめる技だと、以前かけられた時に聞かされた。
「ふっ、1度聞けば対処方法くらいわかるんだよっ!」
実際の柔道のルールではやっていいのかどうかわからないけれど、これだけやることがわかりやすく、なおかつこちらは投げられた反動がないのならば、避けるのは簡単だ。
左腕を掴まれた段階で、足をかけられる前に姉さんの足を右手を伸ばして払う。その後体制を崩した姉さんを半分持ち上げるかたちで立ち上がり、離れようとしない手を思いっきり引き剥がした。
「流石に柔道技はもう効かないか」
「あんだけ毎日かけられてればね。というかそろそろやめて欲しい……」
「エイジが真人間になるまではやめません!」
「そう言ってるけどさ、姉さん、自分が既に真人間っていう言葉の枠から出ていることに気付こう? 日常的に弟に格闘技の技かける姉ってただのヤバいやつだよ?」
人間は普通、女性の方が精神年齢が早く成長するらしいが、うちの姉さんは例外なようだ……
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
結局深夜まで姉さんに付き合ってテレビゲームをぶっ通しでやり続けた。
いつもは対戦ばかりを選択する姉さんが珍しく協力を選択したので何事かと思ったが、新しく追加されたオンラインタッグマッチをプレイしたかっただけらしい。
そんな調子でほとんど定位置から動かなかったので、肩と首がかなり疲れた。これは明日の学校にひびきそうだ。
畳の上でだらしなく寝ている姉さんは、寝ている時の姿だったらもう少し学校の人達にもモテたんじゃなかろうかと思う。
身長こそ162と少し高めらしいが、我が姉ながら可愛らしい顔つきをしているのは確かだ。さすがは母の子。今でも童顔で年齢不詳なところがあるからな。
何度叩いても起きる気配がなく、かと言って俺が運ぼうにも姉さんの部屋は2回で流石にきついので居間まで布団を運んで、姉さんをそこに寝かせる。
そのまま俺は部屋に戻り、本来の休日の予定であった睡眠をやっととることが出来たのだった。
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……居間から聞こえるサイレンの音で目が覚めてしまった。姉さんの事だから、あのあと目が覚めて深夜番組でも見ていたんだろう。
すると、こちらに大慌てで走ってくる音が聞こえたので、ゆっくりと起き上がって足音の主が来るのを待つことにした。
「エイジっ!」
「どうしたの、夜中にうるさいよ。ご近所の迷惑だ」
「それどころじゃないわ、早く居間に来て……」
姉の様子がふざけている時のそれではなく真剣なものだとわかったので、俺は言われたとおりに居間に足を運ぶ。
そこに流れたニュースは非常に現実感がなく、なにかのパロディなのではないかと思うほどにふざけた内容だった。
『東京都は我々が占拠した』
テロップには確かにそう書かれていて、どこかの広い公園の至る所に白装束を着た大量の人達が並んでおり、黒装束を着た男が演説を行っていた。
『我々は新人類。貴様らよりさらに神の寵愛を受けた選ばれし者たちだ』
黒装束の男は大きく腕を広げると、どこの言葉かわからない言葉で歌を歌い始め、その場にいた白装束の集団は頭を抑えてその場に座り込んでしまった。
『さぁ、先程のショーを見られなかった諸君。2度目のショーの開演だ!』
黒装束の言葉に合わせて人々が立ち上がるが、その目に先ほどのような生気はなく、ただ立っているだけ。まるでゾンビのようだ。
姉さんは先程から顔をおおって下を向いてしまっている。黒装束のいう、先程のショーというものを見たということだろうか。
『始めたまえ、私の呪いを受けし者達よ!』
黒装束のその一声で、人々はいっせいにどこかえと駆け出す。
一人、また一人と近くの川に飛び込み、あぶれた人達はお互いが殴りあったり、手頃な道具で殺し合いを始めた。
『これぞ神の寵愛の力! 最後の一人になればこの寵愛の力はお前達にも得られるだろう!』
男はにやけ顔でその言葉にこう付け足した。
『この、自殺願望、殺人願望の呪いを乗り越えられればな』
酷く凄惨な光景に思わず目を背けると、姉さんがゆっくりと話し出す。
「……あのね、エイジ……」
姉さんの口から語られたそれは、俺がこの世で一番考えたくがなかったことであり、この悲劇の始まりになる出来事だった。
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