Lv.1なのにLv.MAXよりステ値が高いのはなんでですか? 〜転移特典のスキルがどれも神引き過ぎた件〜

ニムル

魔王幹部も雑魚なんですか?

 健太郎たちと別れて西の魔王の元へ向かい始めて3日たったわけなんですが、なんなんですかこの人。

「我が名はアーブドゥルー・シンジケート。バルトラ様幹部三賢者の1人だ!」

「わぁ! 三賢者って大仰な名前ついてるけどこいつめちゃくちゃ弱いよ、ご主人!」

 唐突に名乗った自称三賢者のアーブドゥルーは、名乗りを終えると同時にシルティスに罵倒されていた。

「あっははは、この子、三賢者名乗れちゃうほど強くないわ! ご主人、この子私がぶっ飛ばしていい?」

「ああ、問題ないぞ?」

「ということだから、美味しく食べられてね♡ 坊や


「な!? き、貴様、魔族ではないのか!?」

「ん? 魔族なんて小さい括りで生きていくのはやめたわね」

「こんのうらぎりものぉぉぉ!」

「あーらら、ダメよ、女の子にてだししちゃ。『一閃』」

「なにっ……」

 はい、会話のあいだに瞬殺された可愛そうなアーブドゥルーさん。……現れて会話を許されただけいいと思ってください。

 シルティスに名乗りもすることも許されずに消された魔族はさっきから沢山いるからな。

 自分に返り血がかからないようにマキナに防壁の魔法をかけさせて恍惚としているシルティス。

「そこそこ斬りがいがあってよかったわ!」

 うーん、発想とセリフが辻斬りのそれなんだが?

「今更だぞ、気にするなよエイジ。俺ですら魔族と一緒にいる生活に順応してんだ。お前もこれくらいなんてことないだろ」

「ヤン兄は簡単だろうけど、俺には受け入れ難い3次元現実なんだよ」

 俺よりもはるかにはやく非日常に順応したコウジとヤン兄の2人は、もはや何事も無かったかのようにそのまま馬車を走らせ続ける。

「ご主人、いい加減なれてよぉ。自分がぶち殺した時は全然平気なのに、なんで私が殺るのはなれないのかなぁ?」

「そりゃ、幼女がバケモン狩ってる絵面なんて2次元のだけものだと思ってたからビビってんだよ」

「私、幼女じゃないよ!?」

 シルティスは自分が幼女ではないことを必死に主張するが、俺から見たらもう幼女だもん。関係ないね。人は見た目10割だからね。

 ぎゃあぎゃあと騒ぎ立てるシルティスをなだめ、マキナが馬車の屋根に座っているのを確認してから、俺は自分のスキルの情報について考えることにした。




◇◇◇




「ふぅ、馬鹿みたいに多いな、やっぱり……」

 長時間ガチャを引き続けたかいもあって、改めて自分のすての異常さを認識する。

「何に使えばいいかわからないような奴らもいるからなぁ……」

 特にこの『投石』とか、ものを狙ったところに投げられるっていう効果なんだがまったくもって使用法が思いつかない。

 ある意味チートだけど、バカッコイイ動画でも取らない限り使わない能力だろ、これ。

「狙ったところに必ず当たるって言ったってねぇ……まぁ、もっと意味がわからない奴らもいるし、まだマシなほうか」

 精神系のスキルはこの間使って痛い
目を見たし、有効活用できる攻撃系スキルでなんとか魔王たちを牽制くらいはできるようになりたいものだ。

 俺が元魔王のシルティスよりステータスが高いのは確かだけれど、どれだけ勝率が高くてもギャルゲでは選択肢をひとつミスするだけで嫁たちを落とせないこともある。

 ステータスは勝率の一部であって、その勝率を100パーセントにしないと殺されるって言うのが、この世界(ゲーム)の酷いところだ。

「スキルを有効活用っていったて、1000個のスキルをどう組み合わせるかなんて、何通りになんだよこれ。考えるのめんどいからやらんけど」

 組み合わせを単純に考えても馬鹿にならない数だろう。そんな数のスキルをすべて把握してかつ使いこなすのは不可能だと思う。

「ご主人、しかめっ面してどうしたの?」

 剣の手入れをしながらシルティスが話しかけてくる。

「スキルの構成がめんどくさいなぁって思ってな」

「そんなもん感覚でどうにかなるわ。スキルはこの世界に来た時点でご主人の体の一部なんだから」

「そんな事言われても、俺にとってはスキルはあとからくっつけられた能力であって自分のものじゃないってのがあるからな」

「はぁ、相変わらず転移者の人達はみんなめんどくさい思考を持っているのね」

 はぁ、と下を向いてやれやれというふうにため息をつくシルティス。

 俺以外にもそういう奴がいたのだろうか。基本この世界に来た人間はみんな『うぇーい、俺TUEEEE! ふぉぉぉお!』ってなりそうなもんだけどな。

「まぁ、私のところに飛び込んできた女の子の勇者ちゃんはちょっと違ったけどね」

「へぇ、お前のところまで勇者が来たことあったのか」

「ええ。なんでも男どもが振り向いてくれないから魅了術を教えてくれって。私から見たらその子は当時から十分可愛い子だったんだけどね」

「ん、当時から?」

「ぼ、暴帝様っ! そのお話はおやめ下さい、何年前の話ですかそれ!」

「ちょ、おま、屋根をぶち破るんじゃねぇ!?」

 シルティスの話に反応して赤面で屋根を破壊しておりてきたマキナと、屋根を破壊されたことにキレたヤン兄が叫び出す。

「暴帝様、そのような昔話などおやめ下さい!」

「えー、たかだか二十年くらい前の話でしょ? あ もう、せっかくサキュバスになったのに自分の都合のいい時だけ元人間の時間感覚を使うわよね」

「うるさいですよ、いいじゃないですか! いくら体はサキュバスでもねぇ、心はまだ人間なんですよぉぉ!」

 黒い髪を大きく振り乱しながらさけぶマキナ。

 それをわざと怒らせて楽しんでいるシルティスを見ながら、俺とヤン兄は『なんなんこいつら』と唖然とすることしか出来なかった。

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