虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

表五天談 その04



『『闘天』です。効果は物理攻撃が全部防御無視になること、威力が上がること。普段はパーティーを組んで冒険しています。よろしくお願いします』

 挨拶が終わると、『巧天』と『援天』が力強く拍手していた。
 それを見ていた『魔天』はため息を、『冒天』は少し拍手のペースを上げる。

『や、止めてよ二人とも……』

『たとえこの手が壊れようと』『私たちは拍手を止めない!』

 ドヤッと言わんばかりの表情に呆れ、そのまま席に着く『闘天』。
 それを見た二人は、あっさりと同時に激しい拍手を止めて次の者を見る。

『……なんだ、その目は』

『いや、素晴らしい挨拶が聞けると思って』

『なんでそんなことしないといけない』

『信じてますよ』

 熱い眼差し、とはこのことだ。
 少し悩んだ末に、『魔天』は立ち上がる。

『『魔天』だ。見ての通り効果は魔法関連の補助、『闘天』の魔法版だ…………以上』

『『『えー!』』』

『何が不満なんだ。それに、『闘天』もか』

『い、言ってくれると思ったんだよ』

 少し大人びようとしていようとも、結局のところ『闘天』は子供なのだ。
 そんな様子を『巧天』と『援天』は癒されたという表情で見るし、『冒天』は良かったと安堵していた。

『……ほら、『援天』。お前の番だ』

『あら? そういえば、私が最後ね』

『〆は頼んだぞー!』

 声に応えるように手を振り、『魔天』と代わるように立ち上がった。

『『援天』です。効果はバフ・デバフ、回復の範囲内の対象指定が自由になるものと、効果が持続する能力の継続時間が大幅に延長されるものです。教会で教祖をやっています、よろしくお願いします』

 ペコリとお辞儀をして座る『援天』。
 拍手をする『闘天』と『冒天』だが、残りの二人はアイコンタクトをしていた。

[おい、お前の妻異常すぎるだろ! 何が教会で教祖だ……分かるけど!]

[分かってもらえて何よりだ! 加えて言っておけば、当然のようにいいことばっかりだからな!]

[……リアルラックが高いから、か。ガチャは最上位レアばかりだったし、レイドボス戦も激熱の展開にはなるが、誰一人としてデスペナを喰らわなかったしな]

[ずいぶん懐かしい話だ。だが、たぶんこっちでも再現されるぞ!]

 かつてのオンゲー徘徊期、古今東西あらゆるゲームで有名人になった無課金者は伊達ではないのだ。
 公式配布の無料ガチャさえあれば、のちにもっとも評価されるアイテムを得る……それが『神運』と呼ばれた彼女の運力である。

『何か、お二人で隠し事ですか?』

『『いいや、なんでも!』』

 本人に自覚が無いので、周りは堪ったものではなかったが……。


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