虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

表五天談 その03



 こってりと絞られた『巧天』。
 だが、彼の視線は『魔天』に向けられる。

 互いに手が届きそうで届かない状況だが、それでも声だけはしっかりと届く。

『久しぶり。まさか、というよりやっぱりお前が『魔天』だったか』

『そういうお前は意外だよ。あれだけ戦闘系もできたのに、それを子供に譲って生産を磨いていたとは』

『そういうことじゃないさ。ただ、運命の悪戯がこんな因果を生みだしただけだ』

『どれだけ取り繕っても、ランダムでしたって結果は変わらんぞ』

 そう言い合うと、それぞれが笑う。
 そんな様子をほんわかとした表情で見つめる『援天』と、状況が少し読めなくて混乱する『闘天』&『冒天』。

『しかし、あのお前が『巧天』かよ! お前のどこに器用さがあるんだ!?』

『そっちだって、ずっと恰好が変わってないじゃないか! まさか色染めてんのか?』

『当然だろ! 古今東西どのゲームであれ、俺はこの色のローブを選んでやる!』

 実際、『魔天』はなかなか市場では見ない緑色のローブを纏っていた。
 特にその色が素材の影響が強く、性能はいいがアレというわけではなく、自らその色に染めたという経歴がある。

 古のゲームにおいて、彼の中で強く印象に残る魔法使いの色であった。



『──とまあ、全員が知り合いだったし口調は楽にしよう。まずは、招待に応えてくれてどうもありがとう』

 全員、用意された席に着いていた。
 呼び出し主である『巧天』が、この場の司会進行役となって話を勧めていく。

『特に運営が絡んでいるわけでもないが、同じ『天』の称号持ち同士を見てみたいという企画だな。別に手を組もうとか、そういうわけじゃなく……会いたいからだ』

『ふふっ、やっと会えたわね』
『父さん、一番最後だよ』

『さて、実際はこれでもう終わりでもいいんだが……どうせなら、互いに言葉でも交わそうと思った。と、いうわけで自己紹介でもしておこうか。なんとなくだが、名前じゃなくて称号の方でな』

 言いだしっぺ、ということで最初はそのまま『巧天』ということになる。

『『巧天』だ。生産特化で、魔力と器用さ以外はからっきしの貧弱だ。依頼されて気が向けば、大抵の物は造れるぞ。お求めなら、ぜひご連絡を』

 立っていた『巧天』が席に着くと、時計回りで隣に座っていた『冒天』が立ち上がる。
 チラリと『巧天』を一瞥し、それに頷かれるのを見て話す内容を決めた。

『『冒天』です。イベント発生率が高くなる称号みたいです。基本、特定の場所を拠点にして活動していますが、見つけた際は声をかけてほしいです……その、お願いします』

 ジッと見られて最後は照れると、そのまま椅子に座る。
 そして、次は『闘天』の番であった。


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