虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

当千の試練 その05



「あいよ、気にしないでくれ」

 ドローンを飛ばしていると、いろいろな場所から感謝の声が上がってくる。
 称号として『援匠』をセットしているからか、効果もよりよく発揮されているようだ。

「匠でこれなら、いったい天はどんだけ性能がいいんだか」

 うふふと笑いながら支援を行うルリを姿を思い浮かべ、そりゃ信仰されるなと深くため息を吐く。
 聖職者っぽいアクションもできるだろうから、この世界じゃ彼女は本物の聖女すら超えているかもしれない。

「まあ、無いものは仕方ないか。足りない分は、お手製ポーションで補いますよっと」

 自動制御のため、いつの間にかポーションの貯水量が減っていた機体を確認し、この場から転送陣を用いて継ぎ足していく。
 メーターを確認するとしっかりと補充されていき、満たされていくのがよく分かる。

「エネルギー充填百二十パーセント! ポーション砲──撃てっファイア!」

《音声コードを確認……許諾。ポーション砲の発射を行います》

 一機のドローンは空高く舞い上がると、そのまま大砲のようにポーションを撃ちだす。
 スライムを研究して生みだされたこの特殊な砲弾は、絶妙な水分の保存を行うことで永続的に回復が行える。

「まあ、言うなれば擬似的な持続回復だな」

《通常の持続回復では間に合いませんので》

「そうそう、敵さんもそろそろ本気になってきたみたいだしな……」

 各地で凶悪な性能を誇る魔物たちが、相次いで出現しはじめている。
 即座にその危険性を『SEBAS』が看破したため、それを代わりに倒しているが……なかなか手強い奴ばかりなんだ。

「発生率はどうなってる?」

《魔力濃度より推測、各エリア残り六十パーセントは固いです》

「これからあんなに面倒な魔物を用意するのに、まだ六十かよ。どんだけコスパがいいんだよまったく」

《これまでに隠しておいた魔物を喰わせ、食物連鎖を引き起こしたのかもしれません》

 食って食われてを続けていくと、かなりの経験値ボーナスがあるというアレか。
 実際、魔物たちはだんだんと強くなっているわけだし……厄介だな。

「『SEABS』、白い方の人形だけでどこまでやれると思う?」

《スペックがあまり高くないので、残り二十パーセント台で現れる魔物は厳しいかと》

「予め、余裕を持ったまま『灰色』の生産も並列して実行しろ。覗き見をしている輩にも見せてやれ、機械の凄さってヤツを」

《畏まりました》

 今も各地で、白い人形が身を破壊されても魔物たちを屠っている。
 だが、いずれは破壊されるだけの未来が訪れる……その前に、手を打っておかないと。


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