虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

原因発覚



「あー、なるほどな」

 現在、箱庭の中枢にて情報を調べる俺。
 俺と言ってもやるのは『SEBAS』なため、目の前には今回の件についてある程度纏められた情報が掲示されていた。

「各地で魔物の異常発生、共喰い有り、飽和時強制リセット……おまけに解除不可。おいおい、『SEBAS』。これは不味いな」

 定められた数を無視した速度で魔物が増える上、仲間同士を喰いあうことで爆発的にレベルを上げてきている。
 しかもソイツらの合計数が規定値を超えた場合、再び火山が噴火して汚物を一気に浄化させるんだとか。

《変更は不可能なようです。また、この期間中はいっさいの編集が許されません》

「こっちが有利になるように、手を加えることも許されていないのか……『SEBAS』でも不可能となると、本当に神様関連のことかもしれないな」

《そのようで》

 この世界の神が、すべて全知全能とか万能といった存在でないことは分かっている。
 しかし、やれることは人以上であろうと人が生みだした以上、『SEBAS』にも限界があるわけで……敵わない相手がいるのだ。

「──と、なればだ。ここに居ても何も始まらないな。念のため、観測装置でこれらのモニターに変化が無いかを確認させておこう。何かあったら即座に連絡を」

《畏まりました》

「モニターを見るに、この騒動が終息するまでの期限は……現実換算で三日ぐらいか。それまで死守すればクリア、できなかったら敗北になるか」

 ゲームオーバー、という言葉は使いたくなかった。
 俺にとってはゲームだとしても、この世界で生きる古代人にとっては生死に関わる命懸けの闘いだ。

 俺は『生者』、生を渇望する者。
 誰でもない友のため、義勇を振るわせてもらおうじゃないか。

  ◆   □   ◆   □   ◆

「そうか……魔物の大群が」

「数を捌いていかなければ、『死の灰』が再び降り注ぐようで……」

「対策はしてあるが、それでも未完成だ。非戦闘員を生かすことで精一杯だろう」

 中枢から戻ると、すぐに代表と話し合いを始めておいた。
 彼らにとって、火山の噴火とは『死の灰』と呼ばれる現象である。

 前から要塞を築いていたのも、ヘノプスを倒して外の世界に出ようとしたのも──すべて、『死の灰』が地上に降り注ぐ期限が近づいていたからだ。
 まあ、それは俺が中止させたからあんまり意味は無かったんだけどな。

「魔物を屠っていけばいいのか?」

「はい。ですが、これまで以上に強くなっておりますので──こちらから、支援物資を送らせていただきます」

「タビビトの武具、か。依存してしまいそうで、そちらの方が恐ろしいな」

「ハハッ、どうにか耐えてくださいよ」

 そうでないと、みんな纏めて死ぬんだ。
 戦闘員たちには、覚悟を決めてもらおう。


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