虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

バトルロイヤル その11



 科学と魔法の二つの技術を用いた結果、生みだされた最強兵器──『天の雷』。
 轟雷のような音を立てて地上に降り立った光の柱が、その後どうなったのかをドローンで視てみれば……。

「よし、何もない……じゃなくて、何も問題ないな」

《結界も上手く作動したようです》

「これで被害者は休人のみ。自然やこっちの世界の人には影響も及ぼしてない」

 雷そのものに、選別の機能などいっさい持たせていない。
 あれはむしろその逆、すべてのモノを滅ぼすことができる力だ。

「だからこそ、安心安全の結界様の出番なわけだ。お蔭で死者や被害が出ることもなく、無事攻撃を通すことに成功した」

《さすが旦那様です》

「へへっ、よせやい。『SEBASおまえさん』がいなきゃ、できなかっただろうさ」

《そう言っていただけるとは……光栄の限りでございます》

 結界とは、街に張ってあるダメージ変換系の結界ではない……あれでは変換されたとしても耐えられず、俺同様に死に戻ってしまうのが雷の馬鹿火力だ。

 俺の結界技術は『龍王』さんの摸倣でしかないが、あの人が(止むを得なく)見せてくれたものとその応用でしかない。
 それでもかなり便利に使えているのだ、基となった『龍王』さんの結界はもっと凄まじいというわけだな。

 そんな結界の一つ、夢幻結界。
 中で起きたことを夢や幻として書き換えることができる……『おやくそく』な結界だ。
 これがあればある程度の無茶をしても、外に出たときにはいっさいの損失を起こさずにいられる。

「ドローンを数体配置し、夢幻結界を展開させて周囲を取り囲む。その範囲だけに限定して『天の雷』を落とし、休人たち自身にその凄まじさを観測させる……するとどうだろうか? 勝手に想像するはずだよなー」

 確認してもらえば、掲示板はかなり混乱しているようだ。
 完全に某天空の城を彷彿とさせる展開、未だに町の外を闊歩するロボット兵が何よりの証拠となっている。

 これはゲリライベントなのか、それともどこかのギルドによる企みなのか……また、そもそも首謀者は誰なのか、などだ。

 幸いにして俺に関する情報はいっさい出ていない、少し前の記事には俺の売り捌いた商品に関するレビュー的な物もあったみたいだが……今は関係ないか。

「あっ、でも──」

《ご安心ください、評価ごとに纏めております。旦那様がかつて言っていたように、二と四の評価を重点的に》

「おお、さすが『SEBAS』だ」

 一と五は適当にやる奴が多いので、悩んだ末の二と四がベストだと俺は思う。
 人生も八割上手くいけばいいと考える人がいるし、そうなのかもしれない。

「──これでイベント終了。さて、残りは結果を待つだけだな」

 天空の城の構造はすべて解析が済んでいるし、持って帰れないならあっちでも暇なときに造ってみようか。


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