虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

バトルロイヤル その08



 天空の城を動かし、場所を移す。
 秘境らしく不可視化機能……は無かったので組み込んだ今の浮島は、まさに天然の爆撃機としても使用できる。

「『SEBAS』、準備はいいか?」

《はい、可能です》

「そうか……頑張ったなー」

 自分でもそう思えるほどに、張り切って支度をした気がする。
 最近は使っていなかったハイテンションになるポーションを含み、前に使った釘を含む概念工具なる代物まで使って造り上げたんだからな。

「──では、これより祭りを始める」

《一番機より十番機、順次起動します》

 俺の居る場所、それは工場。
 大量生産に成功したロボット兵たちの内、十機の瞳に光が灯る。

「一番機より十番機、各自に命ずる。自身にプログラムされた我が命に従い、我らの力を魅せつけよ──すべて浄化だ!」

 意味もなくはしゃいでいるが、そこはゲームだということで勘弁してほしい。
 彼の大佐ですら、例のプラズマ装置を使うだけでロボは使えなかったのだ……そう、今この瞬間、俺は大佐を超えたとも言える!

 少しばかり楽しんだっていいじゃないか。
 格好も彼に寄せて色付き眼鏡(度無し)まで着用しているんだ、この気分は俺だけのものなんだぞ!

「いざ──進軍だ!」

 そして、ロボット兵たちは開かれたハッチから次々と発射していく。
 カタパルトでも良かったのだが、今回は原作通り下へ落ちていくものを採用。

 天より舞い降りし機械兵……さて、休人はどうやって抗うのかな?

  ◆   □   ◆   □   ◆

 世界は混乱に苛まれた。
 何気ない日常は唐突に終わりを告げ、果てしない闘争の幕が開かれたのだ。

「──おい、急に曇ったぞ」

 そうして始まりとも呼べる災禍の種を見つけた者が、どれだけ居たのだろうか。
 陰りよりそれに気づいた者は、皆同様に天に手を翳して空を拝む。

「ん? 雲……じゃない、魔物か?」

 飛行する魔物など多種多様に存在する。
 ファンタジー世界に慣れた彼らにとって、それこそが正しい解答なのだろう。

「…………いや、違う。これ、プロペラの回転音がするぞ!」

 聴き慣れない、しかし聴き慣れた音がどこからともなく聴こえてくる。
 この世界ではまだほとんどの者が知り得ない、機械の作動音。

 それはどこからでもない、空からの使者が放つ音だった。

「う、嘘だろ……なんで、奴がここに」

 敬愛なるジフ°リマニアである一人の青年は、その正体に一瞬で気づく。
 そして絶望する……見るからにルハ°ン三世に出てきた方の機械兵には、不備など感じられなかったからだ。

「あっ──!」

 そのうち一体が自身の元に舞い降り、ピカピカと信号を放った。
 もう終わりだ、彼がそう思った直後──辺りに閃光が奔る。


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