虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

野生児 その07



 大地の底から、何かが湧きでるようにも見えた……だが、それは錯覚であった。
 膨大な数の魔物たちが大地を模し、そこから巨大な魔物が一匹現れたのだ。

「……銀色のライオンか?」

 黄金じゃなくて白銀、というのが物凄く疑問ではあるが……運営的に、金色に何か問題があったのかもしれない。
 とにかく、一匹だけ巨大な銀色のライオンが吼えると、周りの魔物たちも同じように威圧感を籠めて咆哮を上げる。

「おーおー、ずいぶんと勇ましく吠えてくれる猫のくせに」

 お手製の『マタタビバズーカ』で対応してもいいが、ここは無難に戦闘を行おう。

 全身に結界を張り巡らせてスーツのように施してから、『SEBAS』が解析しておいた強者の動きを結界を動かすことで無理に俺の体で再現する。

「『拳王』」

 まだ少し離れた場所に居た魔物へ向けて、軽いジャブのような動きを行う。
 それは文字通りの空砲として放たれ──魔物は悲鳴を上げて宙を舞う。

 これが開戦の合図となった。
 再び銀色のライオンが吼えることで、いっせいに魔物がこちらへ向けて走りだす。

「次は……『闘仙』」

 この場合は同時に仙丹を練り上げて、使いたい体のパーツを包む結界へ、程良く流し込まなければ発動しない。
 実験とばかりに脚の部分へ仙丹を練り上げて踏み込み、全身を捩じって衝撃を取り込んで──再度踏み付ける。

「地裂脚」

 二度の踏みつけによって崩壊した地面が大きく割れ、魔物たちは開かれた大地の口の中へ放り込まれていく。

「戦闘系の強者のデータ、まだあんまり取れてないんだよな……『剣矢』」

 俺でも扱える軽さ重視の剣と弓を取りだして、構える。
 矢の代わりに剣を番えると、魔物たちが大量に居る辺りに向けて放つ。

 剣は爆発する仕様なため、一匹の魔物に刺さると連鎖するように爆発する。
 ちなみにこれ、本人もやるときにはやるらしいぞ。

「仕上げはこれ──『騎士王』」

 とりあえず、使うのは剣と槍。
 死んでもトライできるので、槍を背負った状態で魔物の元へ向かい、剣を使って魔物をバッサバッサと斬り続ける。

 やがて血糊でベトベトになって使いづらくなったら槍へ持ち替え、文字通り『騎士王』仕込みの槍捌きを発揮する。

『GAWOOOOOOOOOOON!』

 ライオンが吼えるが、すでに応える魔物は一匹として存在しない。
 タコと違って、最初に用意した分しか雑魚は増えないようだ。

「なら、これで仕上げっと──『貫通死』」

 取りだした別の槍をライオンに向けて、突貫する。
 俺を切り刻もうと爪を振るってはきたが、『生者』の効果ですぐに死に戻りをこの場で行って復活……そして、槍を刺し込んだ。


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