虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

革命 その11



「ここまでくれば、ずいぶんと楽なもんだ」

 人形の活動はすべて停止した。
 どうせ暗殺ギルドの者たちは自由に通れるだろうし、英雄たちが襲われないようにプログラムを追加するだけで済んだ。

「マスター権限も、いちおう取れた」

 最上権限が空いていたので、タブレットを介してパパッと俺を登録する。
 その一個下に、見慣れない名前があったのだが……それが【暗殺王】の名前なのかな?

「工場の稼働状況を確認、同時に構造を全把握……おっと、意外とできるんだな」

 てっきりメインサーバーのように、また別の場所に置かれているとも疑っていたが、ホログラムとして全体像が表示された。

「接続を頼む」

《畏まりました──解析を実行します》

「同じ仕様で良かった。ちゃんと挿せる」

 すぐに『SEBAS』が情報を調べて、完璧な状態でその全貌を暴いてくれるだろう。
 その間の俺は……トークタイムで時間を稼ぐのが仕事かな?

「お二方、もういらっしゃったのですか」

 三つの生命反応が入り口からやってくる。
 だが、足音は二つ……暗殺者だしな。

『やるね、『生者』。最後の番人も、こんな風に倒せるなんて……剣士なの?』

「いえ、そういった魔道具があるのですよ。空間を斬り裂くような物がね」

「『生者』には、権能とは異なる何かがあるのだな」

「ええ、まあ。弱いことは、自分自身がよく分かっていますので。それを補うための魔道具を、たくさん揃えているのですよ」

 あながち間違ってはいないんだよな。
 結界の魔道具で身を包んでいる際は、ほぼ死ななくなったし……川や海を渡る時も、船が無双をしている。
 一つだけ誤解されるようなことを挙げるなら──全部お手製、という点だけだな。

「お集まりいただき、誠にありがとうございました。どうにか私一人で制圧を完了させましたが……【暗殺王】さん」

『どうしたの?』

 わざと殺気を放ち、情報を漏らすなと脅してきている……が、そういったところはどうでもいいのでスルーだスルー。

「貴方であれば、事前に止めることもできたでしょうに。権能を視た感想は?」

『たしかに暗殺は無理そうだね』

「そうご理解いただけるよう、立ち振る舞ったのですが……ご満足していただけたでしょうか? まさに命を賭して、私は戦ったわけですので」

 そりゃあ監視が無かったら、初めの段階でアイテムフルバーストを選んでいたさ。
 観られることには慣れてるし、『騎士王』や『冥王』であればとっくに把握している俺に関する基礎情報だ。

 ──バラすことが有利になることぐらい、サクッと教えてやるさ。


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