虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

革命 その05



「ところで【暗殺王】さん、会談はどちらで行う予定で?」

『私の部屋でいいと思うよ。ギルド長の部屋なだけあって、防音があるからね』

「なるほど……英雄様もそちらで構いませんよね?」

「……ああ」

 暗殺ギルドの内部は、とてもシンプルな構造をしていた。
 だが一部に暗い陰ができていて、特殊な移動法であればそこを自在に動けるようにしているのが面白いところだ。

 さて、移動時間はしばらくある。
 機密情報でなけらば早めにしておきたいようで、【暗殺王】が英雄に問いかける。

『えっと、英雄……だったね? 君たちの目的はだいたい分かってるし、『生者』からも聞いている。けど選んだ方法は、とても愚かだった……』

「では問おう、君たちは貸してくれと言って貸してくれたのか? これまでもそうした働きかけをしたことはあるが、どの領域の者も応えてはくれなかった」

『自分からここで生き残る術を、見せしめる者はやっていけないよ。少しでも運用を止めれば、周りに絶対的な隙を見せる……だから本当は、この会談も設けないで終わらせる予定だったんだけどね』

 その言葉に、複雑な感情を抱く英雄。
 まあ実際、取引がなければあの人形を使って殲滅を行っていただろう。
 ……あの人形、将棋で言うなら歩兵でしかなかったからな。

「まあまあ、英雄様も落ち着いてください。それは事実ですが、誤解もあります」

「誤解……だと?」

「彼らにも彼らなりの生活があり、アレを使い続けるわけがあるんですよ。それを解決する策があるからこそ、会談は行われるのですからお気になさる必要もございません」

 神代魔道具も、通常の方法ではその機能以上のことを行うことはできない。
 すでに今の人々では理解できない、ロストテクノロジーと称されるような技術が使われているのだから改良も不可能だ。

『──さて、ここだよ。あんまり丁寧なもてなしはできないけど、気にしないでね』

「……構わない」

「私も構いませんよ。いやはや、こんな素晴らしいやり取りをお目にできるとは、本当に光栄ですね」

 なんだか双方から、お前の回答は要らねぇよみたいな視線を感じるのは気のせいかな?
 ……ついでに言えば、英雄といっしょに来た女性も似た視線で見ているようだ。

 部屋に入ってみれば、本人の主張通りシンプルな構造の部屋があった。
 そこに置かれた向かい合わせのソファに、お二方がたは座る。

『……どうしてそこなのかな?』

「いえいえ、お気になさらず」

 かつて『騎士王』の円卓に座れと言われたときのように、このゲームで最初に作った椅子を出して、双方のソファが視界に収まる場所で座る。

 ──さぁ、会談かくめいの時間だ。


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