虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

情報ギルド その01



「ここが、【情報王】の領域か……」

 不思議な方々と別れ、俺は【情報王】のシマとなっているエリアにやってきた。
 道すがら辺りを見渡してみたが、事前情報通りの街並みである。

 どこもかしこも何かを知る対価に何かを支払い、どこの特殊部隊だよ……とツッコみたくなる会話が補聴器に入ってきたよ。

「さてさて、まずは──そこの君、何か用事があるのかな?」

 死亡レーダーが見つけた、街の新参者の元へ駆け寄る少年。
 少し前に孤児院の少年とぶつかったことを少し懐かしみながら、彼に話しかける。

「なあアンタ、ここは初めてだろ?」

「ええ、そうですよ」

「ならオイラが案内してやるよ! だから、これだけくれねぇか?」

 そういって少年は、指を三本立てる。

「えっと、金貨三枚ですか……さすがにそれは、難しいですね」

「違うよ!? ど、銅貨、銅貨三枚だ!」

 通貨は銭→鉄→銅といった具合にランクが上がるのだが、銅貨三枚は日本円にして……約三百円程か。
 子供のアルバイトと考えれば、まあちょうどいいぐらいか。

 ちなみに俺は、ショウやマイが同じことをしてくれたなら樋口さんを召喚する。

「それなら……ええ、お願いしましょう」

「! あ、ありがとう──おじさん!」

 グフッ、まだ二十代なのに……。
 日本人は海外から見て、若く見られるはずだろ? なのに、どうして……。



 ──なんてことは考えずに、案内を始めてもらうことに。
 うん、気にしてなんかない……キニシテナイカラナ。

「ねえ、少年。情報ギルドの本部はどこにあるのかな?」

「あ、あそこに行くのか!? おじさん、無謀にも程があるぜ!」

「……そんな場所なのですか?」

「う、噂だけど──【情報王】が知りたい情報を持っている奴は、死ぬか情報を吐くまで出られないんだって」

 うーん、それなら問題ない。
 休人は死んだら死に戻りするので、その方法では拘束することはできないからな。

 だがまあ、そんな常識が通用しないのがこの街だ……おそらく、これまでの常識を塗り潰すモノなど、いくらでも存在する。
 ──休人の特権を奪うアイテム、とかな。

「他にこの場所には、何がありますか?」

「そうだな……浮かばねぇなー」

「……銅貨二枚です」

「あ、思いだした! 他にはな──」

 現金なことに、チップを渡すことでさらに情報を教えてくれる少年。
 やっぱり、いつの世もお金は偉大なのだと子供でも証明してくれるよ。

 それから話されるのは、街と密着した少年だからこそ知れた情報。
 タクマが幅広く膨大な情報であれば、少年のものは狭くも濃密な情報……お蔭で知りたくなかった情報を知ってしまった。


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