虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

カジノ その18



 そして、『賭博』の個室に招かれる。
 通常エリアで見たホテルの一つ、もっとも巨大な場所の最上階……まさにVIPだな。

 ──だが、その続きがあった。
 最上階に招かれて驚いていると、部屋の置物をいくつか弄り……エレベーターをこの部屋に呼んだ。

 いっさい鈍い重力を感じさせず、スムーズに降りていくエレベーター。
 地球産の物より優れているのは、神代の魔道具だからか魔法が使われているからか……とにかく快適だった。

「──ようこそ、ゲームの舞台に」

 チンッと軽快な音が鳴るのは、世界共通の決まりなのだろうか。
 辿り着いた先には、テーブルが一つと椅子が二脚あるだけの部屋があった。

「座ってちょうだい」

 促されるがままに、手前の椅子に座る。
 そして『賭博』もまた、その向かい側の席に着く。

「ゲーム内容はこちらで決める……なんてことはしないわ。『生者』、アナタがやりたいカードゲームを指定してくれればいいわ」

「カードゲーム……ですか」

「二人でできるものなら、なんでも構わないわよ。アナタが一番得意なゲームで、私と勝負してほしいの」

 つまり、上げて落とすわけか。
 相手が優位な状況を用意しようと、それを打ち砕くだけの絶対的な自信を持つ……それこそが、『賭博』が『賭博』たる所以。

「……『SEBAS』、イケるか?」

《はい。勝利を旦那様の元へ》

 澱むことなく、俺の勝利を確信する『SEBAS』の言葉に迷いはなくなる。

「では、『ババ抜き』でお願いします」

「…………ハァ?」



 この世界にも『ババ抜き』は存在する。
 だがいちおう、すり合わせはしておいた。

 13組52枚のカードに、JOKERを一枚混ぜて行う心理戦。
 互いに一枚引き合い、2枚同じ数字が揃ったら場に出し……最後にJOKERを持っていた者が敗北するゲーム。

「──ですけど、合っていますか?」

「ええ、特に問題ないわ」

「そうですか……カードはどうしますか? 私が一度確認した後、『賭博』さんがシャッフルという順番が良いと思うのですが」

「そうしましょう──はい、どうぞ」

 渡されたカードをジックリと調べる……もちろん、カード自体に細工を施さずともイカサマはできるのだけれど。
 念入りに調査するが、やはりカードには問題は見つからなかった。

「お返しします」

「問題はなかったかしら?」

「ええ、このカードなら公平な勝負ができそうです」

 どちらもそう思ってはいない。
 どうやって欺き、勝利を自身の元へ手繰り寄せるか……それだけを考えていた。


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