虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
カジノ その14
今はまだ、鎖が奥のどこかと繋がっているので安全だ。
この間に鑑定を使って、危険度を調べようとしたのだが……
「うわー、色が濃すぎる」
《さすが裏VIPで使われる魔物。かなり高位の存在の血を取り込んでいるのでしょう》
「キマイラってことは、その種族限定の能力も一部は使ってくるってことだよな……面倒臭いな」
キマイラは他種族の因子を取り込み、その能力を劣化した状態で扱うことができる。
それが吸血鬼の性質と上手く合い、血を吸えばどんな種族からでも因子が取り込めるようになったわけだな。
「吸血鬼と言えばやっぱり聖水、十字架とかが気になるけど……」
《効きません》
「だよな。聖剣ならイケるかな?」
魔物と言えば聖なるものに弱い。
そして聖剣といえば──聖属性が籠められた勇者ご愛用の一品。
まさにベストマッチ……だが──
《聖属性の魔物を取り込んだのでしょう。あのキマイラからはそうした魔力の反応が存在します。おそらく耐性を有しているかと》
「マジか!」
せっかく聖なる弾丸でも撃ってやろうと考えてたのに。
カッコ良く倒させてくれよ!
≪──それでは、レディーファイト!≫
そんなこんなで時間は過ぎ去り、気づけばキマイラから鎖による戒めが失われた。
『GUOOOOOOOOOO!』
ジャラジャラと鎖を引き摺りながら、キマイラが勢いよく俺の元へ向かってくる。
観客たちが盛り上がる中、俺はそれをどうにかジャンプして回避する。
ズザーと地面で削れて死ぬ。
だが死に戻りをしても反応は無い……死んでも問題無いようだ。
「なら、今度はこっちの番だ!」
非常時のために“インベントリ”へ入れておいた鉄剣を取りだし、果敢にキマイラへ攻撃を仕掛ける。
『GUUU?』
無論、攻撃など通るはずもない。
分厚い獣毛は金属による攻撃を弾き返し、やがてはポッキリと鉄剣が折れてしまう。
「う、嘘だ……グハァッ!」
『GUOOOOO!』
呆然とした(ふりをした)俺の元へ、キマイラが嬲るように攻撃を始める。
一連の動きで俺が弱者と見抜いたようだ。
撫でるように触れると、壁に弾き飛ばしたり地面を転がらせたりしている。
……だがな、キマイラよ。
本来であればその力加減では死んでいる。
まったく、もっと繊細な扱いはできないのか……これだから獣は。
『GUOOOOOOO!』
「げぶっ!」
どうやら思念も掴めるようだ。
怒り狂ったキマイラが、これまでとはまったく異なるパワーで俺を叩く。
大地と激しいキスを強要された俺は、そのまま前足に踏み潰された。
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