虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

カジノ その01



 賭博場はすぐに見つかった。
 眩いネオンがそこで彩りを放ち、欲望を湧き立て餌を取り込もうとしている。

「……ここが、カジノか」

 ラスベガスのカジノ……ほどではない。
 だがそれは、ここがこの街で一番大きな賭博場ではないからだ。

 最大規模のカジノには、前提条件として別の場所で一定額の勝利を収めていなければ入ることが許されない。
 なので俺は今回、一定額を稼ぐためにここへやってきたのだ。

「なお、貰ったカードにはいくつか小細工が施されていたので使わないのだ。……正規の方法でも、どうせ行けるんだしな」

 もちろん、俺がそのカードを使ったという情報が『賭博』に伝達されるし、他にも厄介な効果が付与されている。

 ただ、便利な点に関しては嘘が無い。
 言っていた機能はおそらくすべて使えるだろうし、カジノにもちゃんと入れる。

「『SEBAS』、頼んだぞ」

《お任せください。最適な形で入場できるように補助します》

 そして俺は、カジノの中へ入るのだった。



 入口で持ち込んだアイテムを、すべて点検されることになった。
 だが、俺の創ったアイテムの偽装能力は凄まじく、何も揉めることなく入場できた。

「中も凄いな……」

《西洋系のものが多いですね。コンセプトがここにある、そう推測できます》

 スロットやルーレット、ポーカーなどたくさんのゲームが用意されている。
 そこでは少し派手な格好をした者たちが、カジノの結果に一喜一憂していた。

「どれに挑むべきかな? 目押しじゃないから、スロットは論外だが」

《ルーレットで行きましょう》

「分かった、それにしようか」

 チップはすでに換金済みで、最高ルートのチップが山のように準備できている。
 空いているルーレットの席に座り、ゲームが始まるのを待つ。

「お客さん、ルールの方は?」

「いちおう、お願いします」

 男のディーラーから説明を聞いてみれば、地球のルールとほぼ同じだった。

 違う点としては、魔法やスキルの使用を危惧した制限であろうか。
 バレたら賭け金はすべて没収、そうでなくとも強制退場の場合がある。

「では、始めます」

 ディーラーは回転する円盤の中に小さな金属の球を入れ、グルグルと回転させる。
 そこに法則性を見つけることはできず、すべては運任せ……俺だけならば。

《解析完了。黒の4です》

 了解、と言外に告げるためにチップのうち三分の一をそこに乗せる。
 コロコロと回るルーレット台の中で、黒色の下地の上に4と書かれた穴──そこにボールはすっぽりと収まった。

 運ゲーじゃなくて、確率ゲーだな。
 これなら『SEBAS』が手伝ってくれることで、大儲けができそうだ。


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