虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
暗躍街 その01
更新する話を間違えていました──革命はもう少し先のお話です
===============================
人気の少ない路地裏。
ここは中でも、気配すらないという少し違和感を感じる場所。
「これは──結界か?」
《そのようで……解除しますか?》
「いや、あとで怒られるのも嫌だし止めておこうか。それより今は……これか」
そんな場所の壁を調べると、一つだけ異なる色の煉瓦が組み込まれていた。
それを手に取って引き抜くと、奥に魔道具のスイッチを見つける。
「よいしょっと。あとはレンガを逆さにして入れれば──動いた動いた」
《解析完了──既知の技術のみで再現可能でございます》
「へー、そうなのか。まあ、後で詳細を纏めておいてくれ」
《畏まりました》
レンガが前に突き出たり後ろへ引っ込んだり……クネクネとウェーブをするなどと奇妙な動きを見せる。
最終的に目の前に、アーチができた。
そこには扉が嵌めこまれ、奥に何かがあると示している。
「それじゃあ、行きますか」
扉自体に仕掛けは無い。
そのことを確認してから、俺はゆっくりと扉を開くのだった。
◆ □ ◆ □ ◆
とても賑やかな世界が広がっていた。
活気溢れる声が、至る所で聞こえる。
「ここが……暗躍街か……」
歓楽街とは似て非なる物。
合法非合法問わず、求めればなんでもあるとされる謎の街。
実はある一定以上の規模の街であれば、先ほどの方法を用いることでどこからでもここにアクセスできるとか……。
「“マップ”……マジか」
《座標解析──ジャミングが行われているようです。ノイズを除去し、再度解析を行いますか?》
「バレないように、ゆっくりと頼む」
実際どこにあるか、それは不明。
転移技術が栄えたからこそ、誰もそれを不思議に思わない。
古代の技術がふんだんに使われた闇の街、それがこの場所なのだ。
「──っと、悪いな兄ちゃん!」
「おう、気をつけろよ」
俺(の表面に纏った結界)にぶつかった少年は、走った勢いのまま去っていく。
……孤児院の少年と違い、見事な手際だったな。
相手が俺じゃなかったら、俺程度のステータスの持ち主は荷物を盗まれていただろう。
「ちくしょう!」
遠くで子供が悔しがる声が聞こえる。
当然だ、俺に触れていないのだからアイテムを盗めるはずが無かろう。
残念賞として盗めるようにしておいた、石ころでも投げているのかな?
「さてさて、タクマはどこに居るんだったっけか……」
場所は聞いているし、探せば見つかるだろうが──俺のLUCは0だからな。
すぐに見つけられて、接触できるという可能性は低い。
つまり、結局はいつも通りというわけだ。
コメント