虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

悪鬼 その04



 まあ、長い間戦っていたわけだが……さすがに死神様のクエストほどではない。
 今回はアレがあったため、エンドレストライを行うことでどうにかなったからだ。

「状況的には、ほぼ似ているがな」

「…………」

「相手のオーラは俺を殺し、再生は止められ嬲り殺し。なあ、今どんな気分?」

「…………殺せ」

 覇気を失ったような声色で、悪鬼は死を求めてきた。
 長い時間の間に取り繕っていた口調について苦言を申し立てられたので、今は素の状態で話している。

「やだよ。せっかくじわじわとやってここまで辿り着いたんだ。最後の最期で失敗なんて止めてくれ」

「貴様は! あの狂人とはたしかに違う──それ以上に狂っている」

「……この世界が、俺にそういった選択をさせただけだ」

 このままでは話は平行線だ。
 アイプスルに逃げ場はないし、口調を正してから少し昔話をしてやることにした。

「──むかーしむかし、ある所に一人の男性がいました。男は星渡りの民、今では休人と呼ばれる存在でした」

「……ああ、奴らか」

 知っているようだ。

「男は彼の地に降り立つ際、女神様にこう祈りました──『力を、どんな物でも作れるようになる力を』。男が願ったのはささいなもの、木工や塗装、大工などができればと願っての嘆願でした」

「そこにどういった問題がある」

 おお、割と聞いてくれているようだ。

「しかし、女神様と男の間には若干見解に違いがありました。男が願ったのはささいな事柄。しかし、女神様にとって彼の願いは万物創造と同じように聞き取れたのです」

「……むう、表現の差異というヤツなのか」

 まあ、あくまで推測の域にしかないがな。
 分かっていての:DIY:かもしれないし、あまり気にしてない。

「そういった事情もあり、女神にとって男の願いは分不相応な願いとなりました。それでも強く願った結果……条件を付けることで、男はその力を与えられたのです」

 あながち間違いではないよな?

「魔力と器用さ以外の力がいっさい成長することを許されず、固定された数値は赤子よりも低い。触られただけで死ぬような、虚弱体質になることが条件でした」

「……なるほど、星渡りの者だからこそ可能なことなのか」

 最近会う奴って、みんな『星渡り』に関して知ってるよな。
 初期エリアから離れていればいるほど、このゲームに隠された真実的なことを知っている設定か?

「それからなんやかんやがあり──」

「なんやかんや!? おい、貴様! しっかりと説明しないか!」

「……契約していただけるならば、考えなくもありませんが」

「くっ……契約はしない」

 往生際が悪いな。
 意外と知りたがりなんだろうか?

「なんやかんやがあり、彼は『超越者』に選ばれました。死神様から祝福を──」

「だから待て!」

 結局脱線が何度か続き、悪鬼はその度に俺へツッコミを入れてくれる。

 ……なんだろうな、こういった感覚。
 なんだか少し懐かしいや。


コメント

コメントを書く

「SF」の人気作品

書籍化作品