虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
小金持ち
「やぁ、お疲れ様だね」
里に戻ると、里長が入り口で待っていた。
そして、その隣には──
「よぉ、久しぶりだな」
「……ど、どうも」
「そうかそうか! お前もいっしょに鍛錬がしたいのか。ならばよし、今からさっそく始めようか」
「いえ、言ってませんよ。というより、これからやることがありますので」
「なんだよ畜生。そこは、思いっ切り黙って流される展開だろうが」
里長(弟)にイジメられそうになるが、俺はハッキリとNOが言える系の日本人だ。
嫌なことは嫌、そう言っておく。
……こっちなら、それでどうこうしようとしても逃げられるからな。
「それよりも里長、約束のフレイムディアを持ってきました。途中でスリュに聞きましたが、良い素材らしいですね」
「分かっているさ、他の者たちに配る分以外は君に優先的に売ることを約束しよう」
「ありがとうございます」
金取るのかよ……とはツッコまない。
今ではかなりの小金持ちなので、金銭に関する問題はほぼ無いのだ。
「さて、フレイムディアの討伐、改めておめでとう。さすが銃と言うべきだろうか」
「スリュの銃に対する適性が高いんですよ。販売する予定はありませんが、たしかに凄いですよね」
「君がそれを売りだせば、巨万の富を得ることも可能だろうけど……」
「戦争に関わる死の商人だけには、絶対になりたくありません。理想を抱いて死ぬ方が、私としては本望です」
何より……死んでも蘇るしな。
「そうかい。なら、エルフと敵対する種族には情報が洩れないようにしてほしいね。こうやって部分部分で使用している、この時点で情報漏洩は間違いないだろう」
「……そうですね、そうなったら仕方有りません。争う人たちが両方とも私の知り合いの場合はともかく、知人が狙われた場合は全力で助力に出ることも検討しておきます」
九龍帝国に対する、いわゆる応対法みたいなやり方でいいだろうか?
最後に俺の益があるような終わらせ方をすれば、一時的にだが干渉ができる。
相手がそれに逆上し、俺を殺そうとしても封殺することはできない。
──そして、その異能がプレイヤーの権能だとでも勝手に伝わるだろう。
「君の助力か。どこまで過激な争うことになるのか……」
「ちょ、私は死の商人はやらないと言ったではないですか。あくまで落としどころを見つける、そのお手伝いをするだけですよ」
情報をこの後少し交わし、俺は再び別の場所に移動した。
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