虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

大陸考察



 新大陸の魔物は、一区画目の魔物と同じくらいの強さだと思えた。

 場所が変われば強さも変わる。
 遠くに行けば行くほど強くなる、なんてのはおかしいだろう。

 そんなことをしていれば、初期地点のある大陸以外全部異常な強さの魔物が徘徊する地になってしまうし。

「この大陸にも初期地点になる街があり、俺たちとは違う時期・場所でゲームを始めて奴がいる……そんな可能性もあるかもな」

 地形が異なるので、前に居た大陸のコピーというわけじゃなさそうだが、魔物のレベルが低いのでそんなことを思う。

「『SEBAS』はどう思う?」

《人数が飽和した際の、新規プレイヤーの拠点という可能性はございます。海の近くにいる魔物が弱いのも、早めに海外に旅立てるようにしているのかと》

 そして、そんな運営の予定よりも早く俺は来てしまったと。

 方位によって魔物の強さは大きく異なると思うが、日本のプレイヤーたちが多く活動する大陸に繋がるし……。

「南って、解放される予定あったのか?」

《掲示板では、まだ南に関する情報は少ないです。海に出る船はありますが、魔物を倒せる人材と攻撃を防げるだけの装甲ができておりませんので。近海ならば向かえますが、旦那様の今いらっしゃるこの場所は、ほぼ不可能です》

「……飛剣魚に襲われるだけで、船がバラバラにされるイメージが浮かびそうだ」

 ガトリングスタンガンという数に訴える手段があったから良かったが、こっちの世界でも結界などの硬い装甲を用意しないと、盾でも貫く強度だったからな。

 ……地球の戦艦ぐらいなら、余裕で貫通させていそうだ。

《プレイヤーたちが鉱石を集め、巨大な移動船の作成を試みているようですが……完成はまだ先になるかと》

「新大陸の冒険は、あくまでゲームの中でも後半だしな。そう簡単には、やらせてくれないのか」

 銀河や天を走る鉄道があるならともかく、何もないのに大陸を巡らせてはくれない。

 鉱石を集めて職人に依頼しようと、プレイヤーが求める品質になるのはだいぶ後になるだろう。

「魔物が蔓延る海の中を渡る、完全に戦艦でないと無理だよな。俺と同じルートは……ほぼ無理だから、ボス戦はあるだろう」

 漂流して辿り着いた島、先ほども挙げた飛剣魚、そして未だに残るタコの巣。

 エリアは解放されているのでプレイヤー自身は討伐可能だが、船の耐久度が持たず……みたいな展開になるの光景がなんとなくだが目に浮かぶ。

「まあ、海越えを目指しているプレイヤーの数が少ないみたいだし、そういう心配は先の話だな」

 そう言って話を切り止めた俺の視界には、小さな漁村が見えていた。


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