虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

登録完了



 商人ギルドでの登録も、無事完了した。

 推薦書に驚いた受付が、息を呑むなんてことはあったが、それでもギルド長に呼ばれるなんてイベントは起きずにカードを貰えた。

 本来なら試験やら何やら面倒そうなことがあるのだが、そこは生産ギルドの長が出した推薦書──すべてカットで行けました。

「これが商人用のカードか」

 生産ギルドでも渡されたカード、大きさは同じ名刺上のサイズ。

 色のルールも同じ、紫から赤まで虹の七色にプラスして、銅、銀、金などの通貨色がその上に位置する。

 ギルドの識別には文様──商人なら馬車で生産なら工具、冒険者なら剣と盾──が使われているのですぐに分かる……色付きのホログラムで出るからな。

「そして社会人の必須アイテム──名刺入れの中に入れて……合体!」

 ギルドカードが紛失したら、罰金を科せられるので無くしてはいけない。

 生産ギルドのカードを手に入れた際に作っておいた名刺入れ、ギルドカードをすべて束ねておける便利品だ。

 カードをすぐに出現させられるので、それぞれのギルドで提示を求められても問題なく出すことができる。

「まあ、商人になったからって、すぐに行商人として活動するわけじゃないけど」

 新規で店を始めたとして、それが絵物語のような順風満帆にやっていけるだろうか?

 ──無論、無理。

 登録だって、後ろ盾があってこそだった。
 しかしギルド長の後光も、経営関係までは及ばない。

 だからこそ行商人として、特定の場所にこだわらず活動するんだが……結局何を売ればいいんだろうか。

「死者を蘇生するポーション、神の呪いすら解呪できるエリクサー。この二つだけで、俺は大富豪になれるけど……命が危険だな」

『錬金王』と邂逅し、『超越者』同士の繋がりを訊くことができた。
 元から『騎士王』がちょくちょく絡んでくるものの、あれは後先考えないでいろいろとプレゼントした結果なので例外だ。

 ……いや、だってアーサーだぞ。

 あの剣の本気モードを見せてくれるって言われたら、つい物を献上してでも男として見てみたいだろ。

『闘仙』に連れられて向かった仙郷での出来事、それが一番それに近いだろうか。
 欲しい物は大量に手に入ったし、貴重な情報なども手に入れられた。

「他には……ダンジョン産のアイテムか」

 魔石がもっとも採れるが、宝箱を生成して中身を売ることもまあ可能である。

 初代【仙王】のダンジョンを解析し、ある程度レアなアイテムを生成できるようになった結果だ。

 ま、金には困ってないけどな。
 そもそもやる必要はなかった。


コメント

コメントを書く

「SF」の人気作品

書籍化作品