虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―
北の草原
N1
大草原がその場には広がっている。
だが、E1やW1と異なり草の長さが茂みと言っていい程に長い。
潜伏するにはちょうど良いが、逆に奇襲をされそうで怖い場所でもあった。
まだ一度も行ったことのない北へ行ってみよう、そう思ったので即座に行動してみた。
「……あ、また噛まれた」
初めの内は結界を外して移動していた。
いずれ危険度が増してから使おうと思っていたのだが……足元になんだか、よく蛇が噛みついてくる。
幸い、靴という偉大な装備をしているので痛覚に問題はないが、貫通せずともダメージは受けるので結局死んでいた。
「なあ、おかしくないか。どうして靴でガードできてるのにダメージを受けてるんだ?」
《旦那様。それを言った場合、どれだけドラゴンを傷つけようと一生終わりません》
「……ああ、そういうことか」
ゲームらしく、防御力という形でダメージ計算がされるんだったな。
ジャイアントキリングが可能となっているこの世界、象を蟻が倒すように人がドラゴンの討伐をできるように設定されている。
再生力を問題にしなければ、いつか必ず強者を討つ機会が訪れる。
まさに、『盛者必衰の理を表す』だな。
さて、俺の場合。
そんなシステムに則って殺されています。
どれだけ履いている靴が固い素材でできていようと、攻撃をされたからには必ずダメージ判定を行われる。
防御力が1の俺に、最初から選択肢なんて存在していなかったんだ。
蛇はスタンガンで痺れさせ、回収した。
あとで蒲焼きにしてやるんだから。
「あーあ、『超越者レーダー』でもあれば簡単だったのになー」
《力を制御しておりますので、その痕跡を探すのは難しく》
「分かっているさ。一度見つければ波長を調べられるからいいけど、そうじゃないのは無理なんだよな。知らないものをどうにかするのが、一番難しいことだろ」
無より有を生みだす。
優れた力の持ち主ならばまだしも、生まれたばかりの赤ん坊にそれができるだろうか。
無知な者に知識が必要なことをやらせる、それはいくらなんでも大変だ。
『超越者』全てを見つけるレーダーを生み出すということは──まだ産声を上げたばかりの赤ん坊に、ミレニアム懸賞問題の残った六つを解かせるようなものだろう。
それほどまでに、彼らを見つけるのは困難だということだ。
「またか……いよいしょっと」
死亡レーダーで蛇の攻撃を予期し、進行方向から離れてからスタンガンを使う。
ビクンビクンと震えて倒れる蛇を回収し、空を仰ぐ。
「ルリみたいに、俺も運がよかったら……」
きっと、もう会えているんだろうな。
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