虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

闘仙 その06



「……え? またこの展開」

『よく来たな、儂が初代【仙王】だ』

 よくある仙人のイメージの塊。
 真っ白い髭を長く伸ばして両手杖を持ったご老人――そんな人が部屋で待っていた。

『お主は……強くはないが『超越者』か。それならば、ここまで来た理由も納得がいく』

「貴方は、一体ここで何を?」

『簡単な話さ……次代の者を鍛えるため。儂はそのために意識をコアに写し、永久の刻をこの場所で過ごしているのだ』

「そうですか、なら私は関係ありませんのでこれにて失礼を――」

 そう言って部屋から立ち去ろうとしたのだが……空気の壁らしきものに阻まれて逃げることができない。

『待て待て、せっかく来たのだ。何もしないで帰るというのも失礼になる……さぁ、力を見せてみよ』

「ぼ、暴力反対」

『問答無用だ』

 杖を振るうと今の【仙王】と同じように天変地異を引き起こす。
 ただ、威力が段違いであった。
 空は泣き大地は呻く、森羅万象を操る力を前になす術もなくズタボロにされていく。
 ……どちらにせよ、死んでいるからあんまり変わりないけどな。

『どうした、抗わないのか?』

「……そう、ですね。ちょうど良い実験の機会ですし試すだけやってみましょうか」

 ポケットの中からいくつかのアイテムを取り出していく。
 それぞれ別々の形をしたアイテムだがすべてに同じようなエネルギーが使われている。

『……仙丹を外部から取り入れる、そんな道具をどうやって』

「作った」

『…………これだから『超越者』は』

 酷いな、その一言で纏めないでほしい。
 それに『生者』とこれに関係はないんだからな。

「私にしか使えないようにしてありますよ。これが出回れば、仙人の方々にご迷惑がかかりそうですしね」

『仙人にしか使えない仙丹を、そう容易く使われてしまえば問題だ』

「そもそも私の使った技術は、誰にも真似できないような方法で作られています。秘密を暴こうとすればすべてを破壊して証拠を消し去りますのでご安心を」

『……それはそれで、安心できないな』

 ダンジョンの近くに秘密を探る国があるみたいだしな。
 ちゃんと機密機構化ブラックボックスにしているぞ。

「まあ、こんな単純なことしかできませんけどね――“雲縄”」

 ロープ型の装置が作動すると街でよく見た雲が生み出され【仙王】に向かう。
 が、煙を払うように腕を振るうと縄状に編まれつつあった雲は一瞬で吹き飛ぶ。

『練り込みが足らん。道具にした弊害か』

「そんなところです」

 やはり“雲縄”は駄目、か……。
 なら次のヤツを試すことにしよう。


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