虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

山田 武

箱庭奪取 中篇



 そして、なぜか核のある場所に着く。
 入って来た場所のはずなのに、ヘノプスが潜ると異次元空間的なものが生まれ、そこを通った先が核の在り処だった。

 セコイよ、セコすぎるよ運営。
 殺したら核が手に入らないって、オンゲーでやっちゃいけないことだろう!
 リセット効かないんだから、レアアイテムかイベントかを訊かれるようなものだ。

「まあ、でも少し似てるな。ヘノプス、こういう場所って、お前らみたいな守護獣じゃないと通れないのか?」

『そうだな。儂か儂の上司、それ以外の者は同期であろうと通ることはできん』

「ああ、道理で見つからないわけだ」

 セキュリティが万全なことで。
 俺があれを見つけたのは、守護獣という存在があの頃の『アイプスル』に存在していなかったからだろう。
 今は『SEBAS』が管理しているから、恐らく閉じている。
 異世界からの侵略者が来ても、星の核を奪われることはないだろう。


 箱庭だからか場所は狭く、入った瞬間に核が置かれているという状況だ。
 ヘノプスの大きさを考慮したのか? それなら、入り口に置いたことも納得である。

『……使い方は、分かっているのだろうな』

「ああ、任せとけ」

 ヘノプスの甲羅から降りて、目の前で脈打つ核に近付く。
 幻想的な色で輝くそれに触れると、何やら体の中を調査される感覚を掴む。

  ◆   □   ◆   □   ◆

 職業【■■者】を確認
 旧名『■■世界』へのアクセス権を介し、当箱庭へのアクセスを試みます

 制御……成功しました

  ◆   □   ◆   □   ◆

「よし、できた……って、急にどうしたんだよ? ヘノプス」

 とりあえず制御権を貰えたことを、ログで確認した。
 やっぱり、『アイプスル』の星の核とは互換のある核だったようだ。
 ヘノプスにそれを言おうと思ったのだが、何故か元々平らな頭を、限界まで地面に擦り付けていた。

『貴方様が新たなこの箱庭のマスターです。儂はこの瞬間を、待ち望んでおりました』

「もう死んでるけどな、とりあえず好きなように設定を書き換えて良いか? このままだと、アイツら全員死んじゃうし」

『可能なのですか? 先代となるお方もだいぶ苦労なさっていましたが』

「うーん、まあ……なんとかな」

 箱庭の情報にアクセスして、箱庭内の環境設定を調べていく。
 箱庭は星から一定量のSPを徴収し、稼働しているようだ。
 なのにこの箱庭、そのSPを使った余りを少しずつ溜め込み、火山に特殊な灰を噴出するような改造を施していた。
 無駄遣いにも程があるわ!

「――というわけだ。『SEBAS』、やっちゃってくれ」

《承知しました、旦那様。では、装置の方を取り付けてください》

「あいよっと」

 そう言われて取り出したのは、ルーターのような物。
 箱庭の核にそれをペタッと貼り付け、あとは少し待つだけだ。


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